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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻1号

2005年01月発行

文献概要

今月の臨床 症例から学ぶ多嚢胞卵巣

多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発法

著者: 苛原稔1 松崎利也1 桑原章1

所属機関: 1徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部女性医学分野

ページ範囲:P.79 - P.83

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多嚢胞性卵巣症候群に対する排卵誘発法の選択

 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は内因性LHが高く,排卵誘発療法に対して過剰反応しやすいので,多発排卵を起こす結果,副作用として卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠が発生しやすい.特に,ゴナドトロピン療法時には細心の注意が必要である.また,他の排卵障害に比較して妊娠率が低く,流産も多い傾向にあるので,難治性の不妊症になりやすいことにも,PCOSの排卵誘発を難しくしている.

 図1にわれわれが用いているPCOSの各種排卵誘発法の選択法を示す1).一般にPCOSでは無排卵周期症や第1度無月経などの比較的軽度の排卵障害が多いので,まずクロミフェン療法の適応になることが多い.しかし,クロミフェン無効例が多く,結果的にゴナドトロピン療法を選択することが多い.ゴナドトロピン療法を行う場合は,治療成績は高いが副作用の発生頻度も高いので,投与法の工夫が重要である.副作用が頻発する場合には,外科的治療も有用である.また,最近はPCOSと糖代謝異常,あるいはインスリン抵抗性の関連が明らかにされてきたので,インスリン抵抗性改善薬が排卵障害の治療目的に使用されはじめている.

参考文献

1) 桑原 章,苛原 稔,青野敏博 : PCOSの排卵誘発法としてはなにが適当か? 臨婦産50 : 1384─1386, 1996
2) 東敬次郎,苛原 稔,青野敏博 : クロミフェン療法での妊娠率が低い理由は.臨婦産51 : 584─587, 1997
3) 苛原 稔 : 注射剤による排卵誘発.PCO症候群の診断と治療(青野敏博編).pp163─171,永井書店,大阪,1996
4) Kuwahara A, Matuzaki M, Azuma K, et al : Induction of single ovulation by sequential follicle stimulating hormome and pulsatile gonadotropin─releasing hormone treatment. Fertil Steril 64 : 267─272, 1995
5) 青野敏博,苛原 稔,東敬次郎,他 : ゴナドトロピン療法の投与方法の工夫.厚生科学研究・わが国における生殖補助医療の実態とそのあり方に関する研究・平成11年度研究報告書(矢内原巧編).pp794─798,厚生省,東京,2000
6) 苛原 稔,青野敏博 : 排卵誘発法の進歩と問題点.産と婦68 : 153─160, 2001
7) 苛原 稔,松崎利也,田中尚子,他 : PCOSに対する抗糖尿病薬の応用.産と婦71 : 759─764, 2004
8) Moghetti P : Metformin effects on clinical fuature, endocrine and metabolic profiles, and insulin sensitivity in polycystic ovary syndrome : A randomized, double─blined placebo─controled 6─month trial, follows by open, long─term clinical evaluation. J Clin Endocrinol Metab 85 : 139─146, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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