icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻11号

2005年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 婦人科の新しい画像診断法─PETを中心として

MRI―最近の話題

著者: 市場文功

ページ範囲:P.1500 - P.1503

はじめに

 近年の画像診断機器の進歩は目覚ましく,MRI装置の進歩は革命的とさえいえる.昨年6月に当院に導入されたシーメンス社製MAGNETOM Avanto 1.5Tは現在の技術の粋を集めた最高級機であり,本装置の限界がMRIの現時点での限界といっても過言ではない.本稿では本装置の特徴を中心にMRIの最近の話題について述べ,近い将来導入が本格化すると思われる3T装置についても触れる.

ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)

原理,読影の基礎

著者: 巽光朗 ,   村上卓道 ,   中村仁信 ,   畑澤順

ページ範囲:P.1444 - P.1447

PETの原理,基本

 PETは正式名称をpositron emission tomography(陽電子放射断層撮影)といい,核医学検査に分類される.主として経静脈性に,機能・代謝情報を観察するための物質に陽電子放出核種で標識した放射性薬剤を投与するが,この陽電子放出核種から生じる高エネルギー(従来の核医学検査と比較して)の消滅放射線を用いて画像を得る点がPETの大きな特徴である.PETで用いられる陽電子放出核種はほとんどが半減期が短く,したがって,上記の特徴を持った放射性薬剤合成のためには自家のサイクロトロンが必要とされる.また,専用のPETカメラも必要とされる.

 近年,がんに対する「PET検査」が注目されているが,ここでのPET検査はブドウ糖類似の放射性薬剤2─[18F]fluoro─2─deoxy─D─glucose(FDG)を用いたFDG PET検査を意味する.ブドウ糖代謝が悪性腫瘍細胞で亢進していることを利用して画像化するものである.この悪性腫瘍における亢進したブドウ糖代謝については古くから知られており,10年ほど前までは,同じく活発なブドウ糖代謝が行われている脳に対して主として用いられるのと同様に,腫瘍FDG PET検査(以下,PET検査)は研究用に行われていた.その後,全身像の撮像が可能となったこと,また,それによって実現した転移の評価がCTなどのほかの画像診断を超える高成績であったこと,さらに,制限はあるものの2002年より保険診療が可能となったことなどを契機に急速にPET検査は普及することとなった.癌検診にもPET検査が用いられていることは,多くの諸氏がご存知かと思われる.

婦人科疾患における読影の実際と問題点

著者: 中本裕士 ,   富樫かおり

ページ範囲:P.1448 - P.1454

はじめに

 F─18標識フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたポジトロン断層撮像法,すなわちポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)検査のここ数年間の普及は著しい.臨床におけるFDG─PET検査は,現在その9割以上が腫瘍診断のための検査である.婦人科領域においてもFDG─PETの有用性の報告は相次いでおり,治療方針の決定に有用な情報を提供しうる画像診断法の1つとして注目されつつある.一方で「微小な病巣がわかる万能の検査」のように誤って報道されることもあり,正しい知識が浸透するには今しばらくの時間を要すると思われる.ここでは婦人科疾患における読影の実際と問題点について,実際の画像を交えながら解説する.

臨床での位置づけ

ドック検診

著者: 井出満

ページ範囲:P.1456 - P.1459

PETによる婦人科検診の成果

 山中湖クリニックにおいて,1994年10月から2004年9月までの10年間に,PETを中心としたがん検診を受診した女性3,569名(平均年齢52歳)に対して行われた,延べ8,722回の検診で発見された婦人科の悪性腫瘍は子宮頸がん9例,子宮体がん3例,卵巣がん2例である1~16)

 婦人科部門における検査項目は,下腹部MR検査,FDG─PET検査,自己採取式子宮細胞診などである.婦人科医の診察,下腹部超音波検査,CA125などは行っていない.

婦人科領域での有用化

再発,転移巣の診断

著者: 吉崎陽 ,   小見英夫 ,   杉山徹

ページ範囲:P.1460 - P.1463

はじめに

 婦人科腫瘍の再発・転移の診断には主に理学的な検査(内診,触診など),画像診断(単純X線検査,超音波断層検査,CT,MRI,シンチグラムなど),腫瘍マーカー検査が用いられる.理学的な検査は小骨盤腔内の病変や腹腔内の比較的大きな病巣の検出に有用で,画像診断は全身のある一定以上の大きさの異常所見(非生理的所見)の客観的な描出に役立ち,腫瘍マーカーは対象腫瘍に特異的なものがある場合には再発・再燃の鋭敏な検出方法である.実際にはこのような方法を有効に組み合わせて腫瘍の再発あるいは再燃の診断が行われている.

 FDG─PETは,glucoseの2位の水酸基を18Fで置換した化合物である18F─fluoro─deoxy─glucose(FDG)をtracerとして使用したPET(positron emission tomography)検査である.静脈内に投与されたFDGは特に,活動性でブドウ糖の消費が多い細胞に能動的に取り込まれ,細胞内でリン酸化を受けリン酸化FDGとなる.リン酸化FDGはこれ以降の代謝を受けずに細胞内に滞留(metabolic trapping)し,18Fを構成するポジトロン(陽子)が近接する電子と結合する際に光子を放出する.この放出された光子を体外で検出し,3次元表示する検査である.Glucoseが用いられるため糖代謝が活発な細胞(脳細胞,多くの腫瘍細胞,あるいは運動中・直後の筋肉細胞)に強く集積する特徴がある.特にがん診療においては,腫瘍の存在診断,悪性腫瘍の病期分類の決定,治療法の決定,放射線治療範囲の決定,治療効果の判定,再発診断,予後の推定などに適用でき,臨床的有用性の高い腫瘍診断法の1つとして位置づけられている.FDGの取り込みと集積は定量的な指標としてSUV(standardized uptake value)を用いて評価する.

 FDG─PETは,現在までの再発・再燃の診断方法に用いられていた方法の弱点を補完する検査法であると期待されている.つまり再発・再燃の診断には,理学的検査や画像診断で非生理的な腫瘤が検出された場合にこれが腫瘍組織であるかどうかの「検査」,あるいは腫瘍マーカーが上昇したにもかかわらず該当する腫瘍組織を理学的検査や画像診断で明確に検出できない場合,さらに転移巣や再発巣が複数存在する可能性がある場合の「検索」,腫瘤の有無とその性格を知ることための「検定」ができる検査方法が必要となる.FDG─PETはこのいずれの必要条件も満たす検査方法であり,すでに消化管腫瘍や脳腫瘍の診断においてその有用性が認められている.

 腫瘍の再発・転移の頻度と部位は腫瘍の種類によって異なるが,その部位は,(1)婦人科腫瘍の場合には腫瘍が存在した局所を含めた骨盤腔内,(2)腹腔内,および(3)遠隔転移に大きく分類される.骨盤内の再発・転移の検索は内診所見に画像所見を加えることで比較的容易であるが,腹腔内および遠隔転移の検索は,しばしば困難である.また婦人科腫瘍では,腫瘍の種類によって特異的な腫瘍マーカーが存在し,これが基準を超えて上昇した場合に理学的診察やCT/MRIあるいは超音波断層法などの画像診断による検索で明らかな腫瘤を検索できない場合,あるいは検索できてもほかの部位の腫瘤の存在が否定できない場合には,臨床上検索に苦慮するだけではなく,治療方針の立案も困難を極める.ほかの腫瘍と同様,婦人科腫瘍についてもFDG─PETは再発・再燃の診断には有用な検査であると考えられる.

 そこで,われわれは1999年から2003年までに同意を得た婦人科悪性腫瘍患者を対象として,FDG─PETの婦人科腫瘍検査における有用性を明らかにする目的で,(1)FDG─PETの再発・再燃の診断の有用性を画像診断と比較検討,(2)CA125とFDG─PETの有用性について比較検討した.FDG─PET検査は東北大学サイクロトロンRIセンター,あるいは群馬大学核医学教室で施行した.

治療効果判定

著者: 武隈宗孝 ,   前田真

ページ範囲:P.1464 - P.1469

はじめに

 ここ数十年来,CT/MRIのような非侵襲的で優れた解像力を持つ断層撮影装置の開発は著しく進歩し,現在では臨床的に大変有用とされている.しかし,それらの欠点として病巣の形態学的な異常の検出にとどまり,機能的変化を捉えることは不可能であるということが挙げられる.一方で,PET(positron emission tomography)は病巣の形態ではなく生理学的,生化学的変化を評価することができるため,CT/MRIとは根本的に異なった画像診断法と考えられ,さまざまな分野でその有用性が報告されてきた.

 近年,悪性腫瘍領域でもPETは広く臨床応用されている.なかでもFDG(fluoro─deoxy─2─glucouse)─PETは有用であるとする報告は多い1~3).FDG─PETは組織の糖代謝を画像化する検査で,その解像力はCT/MRIと比較して劣るが,悪性腫瘍組織の部位同定や腫瘍の活動性の半定量化(standardized uptake value : SUV)も可能であり,従来の画像診断ではなしえなかった質的診断も可能としている.

 FDG─PET検査は2002年4月から保険適用となり,各領域で臨床応用されている.今回,婦人科悪性腫瘍領域におけるPET検査の位置付けについて,治療効果判定を中心に自検例を含めて概説したい.

悪性腫瘍診断における展望

子宮癌におけるFDG─PET検査の有用性および限界

著者: 大野正文 ,   金西賢治 ,   秦利之

ページ範囲:P.1471 - P.1475

はじめに

 悪性腫瘍における18F─FDG(2─deoxy─2─fluoro─D─glucose)を用いたpositron emission tomography(PET)検査は,従来の形態画像検査だけでは得られない癌組織の代謝情報も評価でき,悪性腫瘍患者の診療において大きな役割を果たすことが期待されている.これまでにも肺癌,乳癌,大腸癌などでは,その有用性が数多く報告されているが,婦人科腫瘍疾患では保険適用の点などで広く臨床に応用されていないのが現状である.香川大学医学部附属病院では,2002年6月より本検査が導入されるとともに臨床応用が始まり,当科においても子宮頸癌,子宮体癌,および卵巣癌症例に対してインフォームド・コンセントを得てPET検査を施行してきた1)

 本稿では,これまでの当科での子宮癌症例について,治療開始前の原発腫瘍,骨盤リンパ節および傍大動脈リンパ節の評価,全身への病巣の拡がりの評価について述べる.最後に肉腫との鑑別という点で,子宮筋腫における本検査の意義について述べる.

筋腫と肉腫の鑑別

著者: 村上優 ,   塚田ひとみ ,   井出満

ページ範囲:P.1477 - P.1481

はじめに

 子宮筋腫は比較的よくみられる婦人科疾患であり,婦人科外来患者の約5%,婦人科骨盤内良性腫瘍の約80%を占めるといわれている.性周期を有する女性の20~30%に子宮筋腫が存在するともいわれ,エストロゲンとプロゲステロン受容体を有し,卵巣ホルモンに反応する良性腫瘍である.その大半は無症状であり,治療を要しないことが多い.しかし過多月経や筋腫増大による膀胱直腸圧迫症状などにより治療が必要となってくる.患者の年齢や挙児希望の有無により治療方針が異なる.開腹による子宮全摘出術,腹腔鏡下子宮全摘出術および筋腫核出術,子宮鏡下子宮筋腫切除術,子宮動脈塞栓法(uterine artery embolization : UAE),収束超音波治療法(focused ultrasound surgery : FUS)と最近では侵襲の小さい治療法も多くなり,GnRHアゴニストによる保存療法も最近特に増加してきている.よって治療方針を決定するには症状,子宮筋腫の部位と大きさのほかに,子宮肉腫との鑑別診断が以前にも増して重要となってきている.

 子宮肉腫の発生頻度は女性10万人あたり年1~2人,子宮間葉系腫瘍の0.5~2.0%と比較的稀であるが1),初期癌(I期)であってもその半数は2年以内に再発し,遠隔転移も多くみられ,予後はきわめて不良である.II期以上では2年以内に90%が再発するといわれている2).よって正確な筋腫と肉腫の鑑別診断は治療方針に大きく影響してくるが,従来の画像診断(超音波断層法,CT,MRI)では十分な精度が得られていない.そのなかでは骨盤MRIが比較的高い診断率を示している.急激な腫瘍増大,T1強調画像での出血凝固壊死,T2強調画像でびまん性分葉状高信号腫瘤,腫瘍周囲への浸潤傾向,血管増生所見のときには肉腫を強く疑う必要がある.しかし,MRIだけでは術前診断として満足のいくものではない.また,卵巣がん症例のように鋭敏な特異腫瘍マーカーが子宮肉腫症例にはないことも診断を困難にしている.子宮肉腫は特殊例を除けば,大きくは子宮平滑筋肉腫,子宮癌肉腫,子宮内膜間質肉腫の3つに病理分類される.子宮癌肉腫症例のCA125 3),子宮平滑筋肉腫症例のLDH4)が参考になることがある.子宮筋層針生検法も適応を選べば病理診断が得られるよい方法であるが,リスクもあり必ずしも普及していない.

 18F─fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG─PET)が腫瘍領域で応用され,肺がんなどでの高い検出率が報告されている5).最近では,がん検診としても応用されつつある6).従来の形態的画像診断と異なり,悪性細胞などの糖代謝亢進をFDG─PETは検出するため,機能的画像診断として,特に微小癌病巣の診断および転移部位同定に期待が持たれている.そこで本稿では,子宮筋腫や子宮肉腫におけるFDG─PETの有用性について,われわれの研究結果と文献より検討してみた.

婦人科がんの術前評価

著者: 蝦名康彦 ,   櫻木範明

ページ範囲:P.1482 - P.1487

はじめに

 FDG─PET(以下,PET)を用いた婦人科悪性腫瘍の診断においては,子宮体癌に関する報告はほとんどないため,本稿では子宮頸癌と卵巣癌の診断について,自験例と報告例をまとめながら,最新の知見について概説したい.

CT─最近の話題

Multidetector─row CT(MDCT)―MDCTの基礎と婦人科領域での有用性

著者: 鈴木保子 ,   山下康行

ページ範囲:P.1488 - P.1493

はじめに

 婦人科領域において,被曝を伴うCTの役割は限られている.Multidetector─row CT(MDCT)によって,任意断面が得られるようになったとはいえ,MRIに比較して組織コントラストに劣り,病変の質的診断,広がり診断に用いることもできない.MDCTの婦人科疾患における有用性として挙げられるのは,撮像時間の早さと短時間に広範囲の画像が得られる利点を活かした,広範囲な転移巣の検索,あるいは急性腹症における腹部骨盤の広範囲かつ迅速な検索である.

 1989年にヘリカルCTの臨床応用が発表され,それ以来ヘリカルCTは臨床の場に急速に普及した.さらに1999年,複数の検出器を有するCTスキャナー(multidetector─row CTあるいはマルチスライスCT)の登場によって,CT診断はさらなる発展を遂げた.

 MDCTの基礎と,婦人科疾患への応用と限界について述べ,症例を挙げ解説する.

婦人科領域への応用―MDCTによって得られる仮想子宮内視鏡

著者: 赤枝朋嘉 ,   井坂恵一

ページ範囲:P.1495 - P.1499

はじめに

 近年,コンピュータ処理能力の進歩に伴い,画像処理技術はめざましく向上し,CT,MRIなどデータを用いた各管腔臓器の3次元画像が得られるようになってきた.Virtual endoscopy(VE : 仮想内視鏡)はリアルタイムイメージングにより生体構造の三次元再構築を表示することのできる一種のビュアーシステムであり,三次元構造物の内部に視点を置き,実際の内視鏡に近い視野角で表示することにより,内視鏡検査で得た臨床経験を生かした診断が可能となる.

 その臨床応用に関しても各領域での有用性が数多く報告されており1, 2),なかでもz軸方向に多列の検出器を配する画期的なCT,multidetector─row CT(MDCT)の出現によりその描出能は劇的に改善され,VEのスクリーニングとしての位置づけも期待されている.

 婦人科領域においては子宮が管腔構造を呈しているものの,これまで仮想子宮鏡(virtual hysteroscopy : VH)の報告はみられず,子宮内腔精査は主に光学内視鏡下で行われているのが現状であった.しかし,子宮内腔を拡張させることによりVH imagingを得ることは当然可能であり,今後,婦人科領域においてもその臨床応用は十分期待できる.そこで,Akaedaら3)の開発したCO2ガスにより子宮内腔を拡張させ撮像する方法を用い,粘膜下筋腫症例に対しMDCTを施行することで子宮内腔仮想内視鏡画像を得ることに成功した4).本稿では,婦人科領域におけるVHの有用性および臨床応用,さらには今後の展望に関して論じたい.

連載 カラーグラフ・知っていると役立つ婦人科病理・75

What is your diagnosis ?

著者: 清水道生 ,   加藤智美 ,   清水禎彦

ページ範囲:P.1441 - P.1443

症例 : 子宮内膜細胞診

 40歳代,女性の子宮内膜細胞診(パパニコロウ染色)を以下に示す.

 Fig 1, 2はそれぞれどのような病変を想定するか.また,良悪性の可能性についても述べよ.

婦人科超音波診断アップグレード・19

卵巣悪性腫瘍の超音波所見

著者: 佐藤賢一郎 ,   水内英充

ページ範囲:P.1505 - P.1517

1 はじめに

 卵巣腫瘍は,産婦人科日常診療のなかで最も遭遇する機会の多い疾患の1つであるが,通常は子宮癌のように直接的な組織採取が困難なため疫学的事項,臨床所見,画像診断,腫瘍マーカーなどを参考に術前診断することになる.超音波は,日常診療においてまず最初に行われる画像診断であり,手術も考慮に入れ,さらなる精査を行うかどうかの最初の岐路となる重要な検査法である.超音波による卵巣腫瘍の悪性診断については,国内外で多くの記述がなされているが,今回は本邦ではあまり紹介されることがない欧米でのパターン分類やスコアリングシステムも含めて述べてみたい.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・6

腹式単純子宮全摘術後の合併症・尿管腟瘻とその予防対策

著者: 越山雅文

ページ範囲:P.1518 - P.1521

症 例

 患 者 : 50歳代前半の主婦

 既往歴 : 特になし.

 経 過 : 患者は,約2週間にわたる持続的不正性器出血を訴えて当科外来を受診した.この際,新生児頭大の子宮腫大が認められ,MRIで子宮筋腫と腺筋症の診断を得た.患者との話し合いにて摘出手術をすることとなった.

 入院ののち,腹式単純子宮全摘術・両側付属器摘出術が施行された.手術は腰椎麻酔下に行われ,手術時間30分,出血量40 gときわめて良好なものであった.開腹時,子宮全体が新生児頭大に腫大していること,子宮底部右側寄りに鵞卵大の筋腫と後壁のびまん性肥厚(腺筋症),および頸部の左右への肥厚が確認されたが,周囲との癒着などはなかった.術後,血尿などもなく,翌日には膀胱留置バルーンカテーテルも抜去され歩行開始となった.

OBSTETRIC NEWS

子癇前症2004年 : Gilstrapの講演

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1524 - P.1527

2004年米国産婦人科学会(ACOG)臨床大会のScientific SessionでGilstrap(テキサス大学ヒューストン,Williams Obstetricsの著者)は子癇前症の講演を行った.本稿ではその内容の一部を紹介する.

 妊娠中の高血圧疾患の発生頻度は米国では6~8%で,母体死亡の大きな原因となっている.

病院めぐり

国立国際医療センター

著者: 箕浦茂樹

ページ範囲:P.1528 - P.1528

国立国際医療センターは,戦前は陸軍病院,戦後は国立東京第1病院(通称東一)として日本の医学会をリードしてきた.人間ドックという言葉は東一が発祥の地だそうである.また文豪森鷗外が陸軍医学校の校長を務めていたこともあり,森鷗外の執務机が院内ロビーに展示してある.その後,国立病院医療センターと改称し,平成5年には国立中野病院を吸収合併してナショナルセンターとしての国立国際医療センターとなった.

 国立国際医療センターは運営局,病院,国際医療協力局,研究所,看護大学校よりなり,高度先駆的な医療を行う総合医療機関である.総病床数は920床で,小児外科以外全科が揃っている.特に,国際的な対応を必要とする疾患について診断・治療を行うとともに,これらの疾患や医療の分野における国際協力についての調査研究,研修を総合的に行う高度専門医療センターである.

山形県立日本海病院

著者: 森崎伸之

ページ範囲:P.1529 - P.1529

山形県立日本海病院は,山形県の日本海側の庄内地方の秋田県と境を接する酒田市にあり,庄内空港(1日に東京便は4便,大阪便は1便,札幌便は1便)から車で約20分と交通に関しては利便な位置にあります.当院は庄内地区の中核医療を担う病院として開設されたのが1993年6月で,比較的新しい病院です.酒田市の人口は約10万人で,対象の医療圏の人口は周辺町村を含めて20万人です.

 現在の日本海病院は526床10病棟で,標榜診療科は25科,救急告示病院,災害拠点病院,臨床研修指定病院,日本医療機能評価機構認定病院などに指定され,山形県庄内地区の基幹病院となっています.

イラストレイテッド産婦人科小手術・5

―【穿刺】―腹腔穿刺

著者: 中田好則

ページ範囲:P.1531 - P.1533

1 はじめに

 目的により診断的穿刺と治療的穿刺に区別されるが,卵巣癌などの腹水貯留例では細胞診による診断的穿刺が有用であることが多い.一方,外科領域では従来より急性腹症,鈍的腹部外傷,慢性炎症疾患の補助診断法として標準的手技であったが,最近では超音波診断やCTなどの診断法の普及のため診断的有用性は少なくなった.また,少量の腹水や膿性分泌物,血液貯留例ではダグラス窩穿刺法が簡便である.一方,治療的穿刺は腹腔ドレナージとして腹水や膿の排液に有用であり,同時に腹腔内洗浄や抗がん剤投与(IP)が併用されることも多い.この手技は一般外科医,救急医,産婦人科医にとって日常的な検査・診断法であることに変わりはない.

臨床経験

妊娠中期中絶手術における合併症対策

著者: 出口奎示

ページ範囲:P.1534 - P.1539

はじめに

 妊娠中期中絶で最も問題になるのは,不慮の大量出血を招くことである.その原因として想定される既存の合併症や術中に発現する続発性合併症には多々あるが,それらの手術経過に及ぼす影響についての知見はきわめて乏しく,該当する満期産時にみられる病変を参考にしながら,個々の原因に関する知見とその対策につき概説してみたい.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

icon up
あなたは医療従事者ですか?