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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻2号

2005年02月発行

文献概要

今月の臨床 症例から学ぶ常位胎盤早期剥離 症例から学ぶ

交通事故後の常位胎盤早期剥離

著者: 倉本雅規1 戸澤秀夫1 千葉真紀子2

所属機関: 1八戸市立市民病院産婦人科 2東北大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.162 - P.165

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はじめに

 車のない時代に比べ,現代社会は複雑で危険に満ちている.そのなかを妊婦は,車や電車,飛行機などで移動することが日常茶飯事となっている.都会では地下鉄など大量運搬交通網が発達しているが,地方での交通手段の主席は自家用車となっている.当然,妊婦が車に乗る機会も増えるわけである.

 自動車衝突による外傷は,(1)産科的外傷は多発性外傷の一部にすぎない.(2)頭部外傷が最も多く,内部臓器の外傷は大血管の損傷による失血死や肝臓・脾臓・腸・子宮の破裂による腹腔内大量出血で生命を脅かす.(3)妊婦は神経性ショックに陥りやすい.(4)骨盤腔を形成する骨や周辺軟部臓器および羊水により胎児は防御されている.(5)子宮,胎児がほかの骨盤臓器より損傷を受けにくいとしても胎盤の剥離と子宮破裂は起こりうる.(6)子宮破裂の好発部位は子宮底部である.このようなことを念頭に置いて診察したほうがよい1)

 頭部外傷では受傷後かなりの時間を経てから重篤な状態に陥ることがあるが,妊婦でも数日後に胎盤早期剥離徴候をきたした症例も報告されている2).子宮破裂も胎盤早期剥離も受傷直後にドラマチックに明確な症状を呈するものでもないようである.

 産婦人科医は多発性外傷の際には,産婦人科疾患の可能性について意見を求められることはよくあることであり,過去にあった症例に学ぶところは大きいと考える.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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