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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻2号

2005年02月発行

今月の臨床 症例から学ぶ常位胎盤早期剥離

早剥管理の新しい視点

非定型的症例の診断

著者: 前田光士1 平野孝幸1 松江陽一1

所属機関: 1都立荏原病院産婦人科

ページ範囲:P.176 - P.183

文献概要

はじめに

 胎盤早期剥離(早剥)の新しい視点での診断方法である血液凝固異常,絨毛羊膜炎(chorioamnionitis : CAM)や腫瘍マーカーなどを踏まえても,非定型的な早剥の早期確定診断は困難である.なぜならCAMを除いて血液凝固異常や腫瘍マーカーのデータでの単独による確定診断ができないだけでなく,早剥が発生した後になってから初めてこれらの値が上昇するためである.したがって,劇的な急性のいわゆる早剥として一般的に理解しているような症例ではなく,症状が少なくて徐々に慢性的に進行する早剥症例の管理目的に使用するのが現在の状況であろう.

 しかし,CAMが早剥の原因となる症例も報告され,顆粒球エラスターゼがフィブロネクチンレセプターを分解し脱落膜細胞と絨毛膜細胞の接着性を低下させた結果,早剥を引き起こすとの説に基づくのであれば,早期診断や予測に用いられる可能性がある.特に切迫早産徴候がある前期破水は危険度が高いとの報告があり1, 2),早剥の予測になるような診断方法・基準の確立と,短時間で検査結果が判定できるような状態に発展すれば注目に値することになる.さらに,もう1つの検査法として血漿ホモシステイン測定による早剥の予測可能性についての報告3, 4)があるので,両方法とも今後の研究に期待したい.ところが,早剥は一般に知られている,性器出血と下腹部痛が突発性に出現し,急劇に母児の状態を悪化させる症例だけでなく,早剥の診断後に,母・胎児管理をしながら経腟分娩の試行が可能であり,軽症例では十分に安全であったという報告もある5~7)

 そこで,筆者の課題である早剥の非定型的症例の診断方法を見つけるために都立荏原病院における早剥の診断が確定されている13例につき再調査して,急性には進行しなかった早剥症例で経腟分娩し生児を得た3例や,当院での確定診断方法,そのほかにつき検討し,非定型的早剥の診断に供する現在における妥当な方法は何であるのか文献的考察を加味し考えてみた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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