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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻2号

2005年02月発行

文献概要

連載 婦人科超音波診断アップグレード・11

卵巣チョコレート嚢胞の超音波所見

著者: 佐藤賢一郎1 水内英充2

所属機関: 1新日鐵室蘭総合病院産婦人科 2旭川みずうち産科婦人科

ページ範囲:P.205 - P.216

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1 はじめに

 国内外において子宮内膜症の正確な頻度は不明であるが,本邦では生殖年齢婦人の5~10%程度に認められると推測されており,さらに不妊症患者では15~25%,原因不明不妊症患者ではおよそ50%で内膜症を合併するとの報告1)がある.そして本邦では,鶴長ら2)によれば子宮内膜症例中の25.1%(454/1,812例)に卵巣チョコレート嚢胞が認められると報告されている.卵巣腫瘍取扱い規約3)には,卵巣チョコレート嚢胞は類腫瘍病変として分類されている.類腫瘍病変とは,嚢胞形成や間質過形成などいわゆる腫瘍形態を示す疾患のなかから,新生物による疾患を除外した病変の総称である.

 卵巣チョコレート嚢胞は悪性化を起こすことが知られており,その頻度は約1%程度で,組織型としては明細胞腺癌や類内膜腺癌が多く,Heapsら4)は自験例10例と報告例195例を検討し子宮内膜症より発生したと考えられる悪性腫瘍のうち69.1%(143/207例 ; 2例は2種類の組織型が混在)が類内膜腺癌,13.5%(28/207例)が明細胞腺癌,11.6%(24/207例)が肉腫であったと報告している.Brintonら5)のスウェーデンにおけるデータでは,1969~1983年の間に治療を行った子宮内症患者20,686例の平均11.4年にわたる長期フォローアップで,卵巣に病巣が存在する場合には卵巣癌発生の相対危険度は3.08(95%confidence interval 1.8~4.9)と報告されている.最近,本邦で小林ら6)が最長17年間にわたり臨床的卵巣子宮内膜症患者と卵巣子宮内膜症を有しない婦人(コントロール)を前方視的に調査した結果を報告しており,臨床的卵巣子宮内膜症患者6,398例から46例(0.72%)の卵巣癌が発生したのに対し,コントロール57,165例からは7例(0.012%)の卵巣癌が発生し,臨床的卵巣子宮内膜症患者の相対危険率は12.4(95%confidence interval 7.9~17.3)で,臨床的卵巣子宮内膜症患者より発生した卵巣癌46例中の組織型は明細胞腺癌が18例(39%),類内膜癌が16例(35%)であったと述べている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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