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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻3号

2005年03月発行

文献概要

今月の臨床 安全な腹腔鏡下手術をめざして 腹腔鏡下手術合併症の予防と対策

血管損傷

著者: 杉並洋1

所属機関: 1国立病院機構京都医療センター副院長

ページ範囲:P.325 - P.331

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はじめに


 現在わが国においても腹腔鏡下手術は広範囲の婦人科良性疾患に対して行われるようになってきており,また手術件数そのものも年々増加してきている.腹腔鏡下手術のこのような普及には手術を受ける患者側からの要望が大きく関与している.腹腔鏡下手術の低侵襲性はわれわれ手術を行う側はすでに認知している事実なのであるが,これが社会的にも認知され,手術を受ける患者側が低侵襲性治療を望んでいるのである.合併症を起こすことなく腹腔鏡下手術が完遂できればこれは患者にとってメリットの大きな治療となるのであるが,もし合併症が起こってしまえば低侵襲性という長所は無に帰すこととなる.


 一般に合併症の発生は術者の熟練度とともに低下していくと考えられているのであるが,それを完全にゼロにすることは不可能である.手術の難度が上がればそれに伴って合併症発生リスクも上昇する1).図1は“Laparoscopy”および“Laparoscopy/Complication”という項目でPubMed検索をかけた際にヒットした文献数の推移を示している.腹腔鏡下胆嚢摘出術の開発以降,難度の高い手術が広く行われるようになったのは周知の事実であるが,それとともに合併症が増加している.文献的には腹腔鏡下手術時の合併症発生率は1%未満とのことであるが1),われわれの施設における合併症発生率(0.75% : 19/2,522例)もその範囲に入っている.ただ,これらの数値はいずれも数多くの腹腔鏡下手術を実施している先進的医療機関から報告されたものであり,腹腔鏡下手術実施症例数の少ない一般医療施設における合併症発生リスクはこれよりも高いであろうと推察される.


 合併症を予防し,また不幸にして合併症が起こった場合に的確にこれを処理するには,起こりうる合併症およびその対処法を知ることが重要である.本稿では腹腔鏡下手術時の血管損傷に焦点をあてて議論する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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