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今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識 Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療 1.日常的な突発疾患の治療と注意点
[腎・泌尿器系疾患] 膀胱炎
著者: 伊庭敬子1 松尾重樹1 松本雅彦2
所属機関: 1大阪市立総合医療センター産婦人科 2都島保健センター
ページ範囲:P.446 - P.447
文献購入ページに移動急性膀胱炎は,排尿時痛,頻尿,尿混濁が3大症状であり,そのほか残尿感,下腹部痛,肉眼的血尿など多彩な症状を呈する.妊娠時には尿路感染症の発症頻度が高くなり,妊婦の約1~2%に合併するとされる.通常,発熱などの全身症状はみられず,採血検査でCRP,WBCの上昇もみられないが,腎盂腎炎に発展し菌血症を合併すれば,母児に悪影響を及ぼすため早期治療が必要である.
妊娠時に尿路感染症が発症しやすい原因としては次のように考えられている.子宮が骨盤腔を越える14週以降になると,尿管が圧迫され,尿管,腎盂,腎杯の拡張が出現しやすくなる.また,プロゲステロンが膀胱の平滑筋に作用し,膀胱が弛緩する.加えて子宮による圧迫が加わり,機械的にも膀胱は低緊張状態を呈する.これらによって,膀胱容量は約2倍に増加し,残尿がみられるようになり,尿路感染症の頻度が上昇する1).また,妊娠中の尿のpH上昇や糖の増加なども増殖に適した環境を細菌に与えている.
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