文献詳細
今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療 1.日常的な突発疾患の治療と注意点
文献概要
1 診療の概要
浮腫は妊婦に多くみられる症状の1つであり,浮腫の客観的診断は皮膚の圧痕および数日以内の急速な体重増加の確認によって行われる.妊婦における浮腫の原因としては,妊娠による病的意義のない生理的浮腫,妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)に随伴する浮腫,そのほかの病的浮腫(腎疾患,心疾患,肝疾患,深部静脈血栓症など)に分類される.浮腫の治療方針はその原因によって異なるため,まずは原因を診断することが先決である.
2 治療方針
浮腫は以前,妊娠中毒症の診断基準に含まれていたが,2004年,日本産科婦人科学会は妊娠中毒症の名称を妊娠高血圧症候群に改め,新しい定義・分類においては浮腫の除外を提案した.これによって定義・分類の改定がされれば,浮腫単独では妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とは診断されなくなる.日本産科婦人科学会会誌の解説1)によれば,浮腫のみを発症した妊婦の母児の予後は正常妊婦と同等であり,低出生体重児の頻度周産期死亡率も正常妊婦よりわずかであるが低いとしている.したがって,妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)およびそのほかの浮腫をきたす疾患の合併が認められない場合は,妊娠による病的意義のない生理的浮腫と診断し,治療の必要性はないと考える.生理的浮腫の成因は,妊娠による循環血漿量の増加,増大した子宮による下大静脈の圧迫による静脈還流の低下,静脈の拡大,膠質浸透圧の低下などである2).
浮腫は妊婦に多くみられる症状の1つであり,浮腫の客観的診断は皮膚の圧痕および数日以内の急速な体重増加の確認によって行われる.妊婦における浮腫の原因としては,妊娠による病的意義のない生理的浮腫,妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)に随伴する浮腫,そのほかの病的浮腫(腎疾患,心疾患,肝疾患,深部静脈血栓症など)に分類される.浮腫の治療方針はその原因によって異なるため,まずは原因を診断することが先決である.
2 治療方針
浮腫は以前,妊娠中毒症の診断基準に含まれていたが,2004年,日本産科婦人科学会は妊娠中毒症の名称を妊娠高血圧症候群に改め,新しい定義・分類においては浮腫の除外を提案した.これによって定義・分類の改定がされれば,浮腫単独では妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とは診断されなくなる.日本産科婦人科学会会誌の解説1)によれば,浮腫のみを発症した妊婦の母児の予後は正常妊婦と同等であり,低出生体重児の頻度周産期死亡率も正常妊婦よりわずかであるが低いとしている.したがって,妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)およびそのほかの浮腫をきたす疾患の合併が認められない場合は,妊娠による病的意義のない生理的浮腫と診断し,治療の必要性はないと考える.生理的浮腫の成因は,妊娠による循環血漿量の増加,増大した子宮による下大静脈の圧迫による静脈還流の低下,静脈の拡大,膠質浸透圧の低下などである2).
参考文献
1) 佐藤和雄 : 新しい“妊娠中毒症”(妊娠高血圧症候群)の定義・分類試案(2004).日本産婦会誌56 : 12─32, 2004
2) 高橋恵子 : 浮腫.産婦治療82 : 101─107, 2001
3) 関 博之 : 浮腫,異常体重増加.産と婦70 : 1677─1681, 2003
4) 黒川達郎 : 妊娠浮腫が母児の予後に与える影響.日産婦会誌40 : 9─13, 1988
5) 神崎 徹 : 高血圧.合併症妊娠(村田雄二編).p403,メディカ出版,2003
6) 河上祥一 : 妊娠中毒症の漢方療法.産婦人科治療81 : 432─434, 2000
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