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今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識 Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療 1.日常的な突発疾患の治療と注意点
[そのほか] 不眠症
著者: 廣瀬一浩1 細野真沙子1 杉藤祐美1 駒田陽子2 白川修一郎2
所属機関: 1国立精神・神経センター国府台病院産婦人科 2国立精神・神経センター精神保健研究所
ページ範囲:P.502 - P.504
文献購入ページに移動妊娠・分娩は女性にとってこの上ない大きなイベントであるが,大きなストレスにもなる.妊娠は女性の身体やホルモン環境,心理構造に重大な影響を及ぼし,そのため睡眠も大きく変化する.生命現象の基本に生体リズムがあり,約24時間の周期で繰り返し生じる現象をサーカディアンリズムという.メラトニン,コルチゾールなどのホルモン分泌や深部体温,心拍数などのリズムが挙げられ,睡眠・覚醒リズムもその1つで,仕事などの社会規制や精神的な影響を受ける.妊娠中はホルモンや心身の変化により睡眠・覚醒リズムも乱れやすく,睡眠障害を引き起こす.
睡眠障害国際分類によると,妊娠中に生じる不眠あるいは過眠を妊娠随伴睡眠障害と定義されている.一般に二相性の経過をたどり,過眠で始まり,重度の不眠へ進展する.稀に悪夢,夜驚症,産後精神病を呈することがある.妊娠初期(first trimester)は眠気および倦怠感を訴え,総睡眠時間は延長するが,プロゲストーゲンの作用が考えられている.しかしながらこの時期には,妊娠悪阻症状により睡眠障害をきたすこともある.中期(second trimester)に入ると睡眠は正常化するが,後半には中途覚醒が増大する.末期(third trimester)には睡眠潜時(就床から睡眠開始までの時間)が延長し,中途覚醒頻度が明らかに増大する.これらの睡眠障害の原因は,妊娠子宮の増大に伴い心地よい睡眠体位がとれないことや,背部痛,膀胱圧迫による頻尿の出現,胎動および子宮収縮,サーカディアンリズム異常などが考えられる.終夜睡眠ポリグラフの所見は特に妊娠末期において総睡眠時間の減少,頻回の覚醒と睡眠効率(総睡眠時間/総就床時間)の減少が報告されている1).
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