文献詳細
今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療 2.妊娠合併症の治療と注意点
文献概要
1 診療の概要
妊娠に合併する甲状腺機能低下症の原因としては,慢性甲状腺炎(橋本病)が最も多く,次いで甲状腺機能亢進症に対する甲状腺亜全摘後の機能低下症が多い1).TSHの増加,FT4,FT3の低下がみられ,橋本病では多くの場合,抗サイログロブリン抗体や抗マイクロゾーム抗体などの甲状腺自己抗体が陽性を示す.
甲状腺機能低下症合併妊娠の頻度は0.1~0.15%で(臨床症状がなくTSH高値のみで,FT4,FT3が正常範囲の潜在性甲状腺機能低下を含めるともっと多いといわれている),機能亢進症合併妊娠よりは少ない1, 2).特に重症例では排卵障害から不妊症となりやすく,妊娠が成立しても流産に至ることが多いことが知られているが,一方で,妊娠前から甲状腺機能を的確にコントロールすれば,流産の頻度は高くならないとも報告されているため3),バセドウ病と同様に,妊娠前に十分なコントロールを行ったうえで計画的に妊娠することが望ましい.
妊娠に合併する甲状腺機能低下症の原因としては,慢性甲状腺炎(橋本病)が最も多く,次いで甲状腺機能亢進症に対する甲状腺亜全摘後の機能低下症が多い1).TSHの増加,FT4,FT3の低下がみられ,橋本病では多くの場合,抗サイログロブリン抗体や抗マイクロゾーム抗体などの甲状腺自己抗体が陽性を示す.
甲状腺機能低下症合併妊娠の頻度は0.1~0.15%で(臨床症状がなくTSH高値のみで,FT4,FT3が正常範囲の潜在性甲状腺機能低下を含めるともっと多いといわれている),機能亢進症合併妊娠よりは少ない1, 2).特に重症例では排卵障害から不妊症となりやすく,妊娠が成立しても流産に至ることが多いことが知られているが,一方で,妊娠前から甲状腺機能を的確にコントロールすれば,流産の頻度は高くならないとも報告されているため3),バセドウ病と同様に,妊娠前に十分なコントロールを行ったうえで計画的に妊娠することが望ましい.
参考文献
1) 栗岡裕子,宮崎康二 : 妊婦における甲状腺機能評価の問題点.産婦人科の世界54 : 1049─1053, 2002
2) 浜田 昇,岡本泰之 : 女性内科疾患外来のプライマリ・ケア.産科と婦人科71 : 1592─1599, 2004
3) 百渓尚子 : 妊娠を合併した甲状腺疾患の治療─エビデンスはどこまでそろったか.Medical Practice 19 : 311─315, 2002
4) 船越 徹,丸尾 猛 : 甲状腺疾患合併妊産婦の管理.産婦人科治療86 : 526─529, 2003
5) 百渓尚子 : 内分泌疾患を持つ妊婦の管理 2)甲状腺疾患合併妊婦の管理.ホルモンと臨床49 : 250─252, 2001
6) 杉本充弘 : 内科疾患合併妊娠の管理 5.甲状腺疾患.産科と婦人科70 : 310─316, 2003
7) 貝原 学 : 妊産婦,授乳婦人での薬物の選択と投与法─甲状腺疾患薬,その他の内分泌疾患治療薬.臨婦産57 : 712─715, 2003
8) 百渓尚子 : 母体疾患と母乳保育 3.甲状腺疾患.産科と婦人科66 : 1278─1286, 1999
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