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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻4号

2005年04月発行

今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識

Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療 2.妊娠合併症の治療と注意点

[血液・自己免疫疾患] 特発性血小板減少性紫斑病

著者: 伊原由幸1

所属機関: 1神戸市立中央市民病院産婦人科

ページ範囲:P.570 - P.571

文献概要

1 診療の概要

 特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura : ITP)は,明らかな原因や基礎疾患がなく,血小板の破壊が亢進して,血小板減少と出血傾向を示す疾患である.急性ITPと慢性ITPに分けられる.急性ITPは小児に多く,男女比は1 : 1で,大部分はウイルス性の上気道炎,胃腸炎が先行する.ほとんどが6か月以内に自然に寛解し予後良好である.一方慢性ITPは成人に起こり,男女比は1 : 4で女性に多く,自然寛解はない.妊娠中に問題になるのは慢性ITPである.ITPは妊娠に合併する血液疾患としては最も多い.血小板に対する自己抗体(PA IgGなど)が産生がされ,抗血小板抗体が結合した血小板が脾臓などの網内系で破壊される.血小板が減少し母体に出血傾向をもたらす.また抗血小板抗体は,ときに胎盤を経由して胎児に移行し,胎児の血小板減少を招き,経腟分娩をすると児に頭蓋内出血などの重大な出血が起こることもある.

 2 治療方針

 ITPが妊娠前にすでに発症している場合,妊娠許可の基準としては,ITPが寛解していることが望ましい.すなわち,治療を中止しても血小板数が5万/mm3以上に維持できることが理想的である.若い女性で妊娠を希望するが,(1)副腎皮質ホルモンが無効である,(2)副腎皮質ホルモンが有効であるが維持量が多い,(3)副腎皮質ホルモンが有効であるが骨粗鬆症や糖尿病などの副作用でその継続が困難である,などの場合は,早めに積極的に摘脾を考慮するべきである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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