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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻5号

2005年05月発行

雑誌目次

今月の臨床 安全な婦人科手術をめざして

外陰の手術

著者: 牛嶋公生

ページ範囲:P.740 - P.743

はじめに

 外陰癌は比較的稀な疾患であるが,高齢者に多く,欧米では65歳以上で直線的に増加している.本邦では欧米に比べるとその頻度は低いが,長寿化傾向により,高齢者での発見が増加しており,現在の発病年齢のピークは70歳台である1).治療法においては,手術療法がほかの治療法より治療成績が優れているといわれているが,本邦では頻度が低いこともあり,過去には年齢や合併症を考慮した姑息的手術や放射線治療が主に行われてきた.これが欧米に比較し治療成績が劣っている一要因と考えられる.一方,若年者を中心にVIN(外陰上皮内腫瘍)の増加がみられており,HPVとの関連が示唆されている.

 最近の外陰癌の手術療法の趨勢は,合併症や周術期管理の進歩に伴い,高齢者に対しても,浸潤癌には鼠径リンパ節郭清を含めた根治的手術を行い,早期癌に対しては縮小手術を選択する方向にある.

子宮の手術

腹式単純子宮全摘術における術中・術後合併症とその対策

著者: 樋口壽宏 ,   藤井信吾

ページ範囲:P.699 - P.701

はじめに

 腹式子宮全摘術は,浸潤子宮頸癌を除く各種産婦人科疾患に対して広く適用される基本術式である.近年,腹腔鏡補助下腟式子宮全摘術の普及に伴い腹式子宮全摘術の施行頻度は減少しつつあるが,内視鏡手術においても骨盤内臓器の操作は開腹手術と何ら変わりなく,症例によっては内視鏡操作では制御できない合併症が発生することがある.この場合,腹式単純子宮全摘術を含めた対応が迅速に求められることも多く,患者に対して責任を負うべきすべての婦人科手術医は腹式子宮全摘術を確実にマスターしておく必要がある.

腟式単純子宮全摘術

著者: 工藤隆一 ,   東口篤司 ,   高階俊光

ページ範囲:P.703 - P.705

はじめに

 手術はすべて安全性を念頭に置いて実施されなければならない.腟式手術は腹式と比較して視野が狭く,手術操作が制限されることから安全性が腹式より劣ると誤解される傾向にある.しかし手術操作の要点に注意すれば安全で低侵襲性の手術術式である.本稿では手術操作の各進行過程で安全性のうえから重要と考えている事項について筆者らの考えを述べたい.

腹式広汎子宮全摘術―主に術中合併症について

著者: 角田肇 ,   吉川裕之

ページ範囲:P.706 - P.709

はじめに

 腹式広汎子宮全摘術は,わが国においては岡林術式を原点として,安全性・確実性に関する改良の努力が積み重ねられてきた.これは根治性の改善を目指したものではなく,いかに術中(と一部術後)合併症を減らすかという努力にほかならない.この古くて新しい問題は,昨年の日本産科婦人科学会学術集会シンポジウム「安全性および確実性の向上を目指した婦人科手術の工夫」として取り上げられ,その内容と歴史的なレビューを座長として筆者がまとめているので,それを参照していただきたい1)

 しかし,病変の存在する子宮頸部からできるだけ遠位で切断して子宮を摘出する本手術は,婦人科手術のなかでは最も術中合併症に気をつけなければならない手術である.ところが,本邦では上記のような術中合併症の予防策とその対策に関する論文・著書は数多くみられるが,実際の術中合併症の発生頻度に言及している論文は意外と少ない.それは,施設(教育病院か専門病院かあるいは一般病院か),術者(経験,技量),患者(病変の進行度)の3つの要素が複雑に関与しており一概にその頻度を論じられないことと,合併症というネガティブなデータは公表しにくいというパブリケーションバイアスが考えられる.また,子宮がん検診の普及により早期癌の比率が高まり,広汎子宮全摘術の対象症例が少なくなっていることも無視できない.

 筆者が現在の施設に赴任して4年になろうとするが,現時点ですでに100例以上(101例)の広汎子宮全摘術が当科で施行され,この手術に関しては原則として筆者ら2名のどちらかが参加するようにしてきた.そこで本稿では,術中合併症の頻度に焦点を絞り,欧米の文献的な術中合併症の頻度2)とともに当科での頻度も合わせて報告し(表1),その予防法と対策のポイントを整理してみたい.

 なお,広汎子宮全摘術の術中合併症はリンパ節郭清と子宮全摘に伴うものの2つに分けて論じられるべきであるが,リンパ節郭清は別項に譲る.

広汎性子宮全摘術―主に術後合併症について

著者: 平松祐司 ,   水谷靖司 ,   本郷淳司

ページ範囲:P.710 - P.713

はじめに

 広汎性子宮全摘出術(以下,広汎全摘)後の合併症の多くは,術中の手術操作に関連して発生する.根治性を上げるためにやむを得ない合併症もあるが,注意することにより回避できるものも多い.また,血栓症などは術前から存在している場合も多く,リスクの高い症例では特に術前に十分検査しておくことが重要である.起こりうる合併症については術前に十分なインフォームド・コンセントをとっておき,手術は細心の注意を払いながら行い,術後も血栓症などの予防を行うことが重要である.本稿では,広汎全摘の代表的な術後合併症について記載する.

子宮筋腫核出術

著者: 赤枝朋嘉 ,   井坂恵一

ページ範囲:P.714 - P.717

はじめに

 近年,女性の社会進出は目覚ましく,晩婚化が進むにつれて生殖機能を温存するための治療が求められる状況が増えてきた.特に子宮筋腫は,女性における骨盤内新生物のなかで最も診療中に遭遇することの多い疾患であり,20~25%の婦人に発生するとされる.症状は筋腫の大きさや発生部位によりさまざまで,患者の背景などを考慮し治療が選択されるが,月経困難症や不妊などを伴う場合,機能を温存するための手術が選択される.特に昨今,不妊領域においては子宮筋腫治療に対する意識が高まり,子宮筋腫核出術が妊娠率を改善するかどうかの論議が交わされている状況にある.今後ますます,子宮筋腫核出術を選択するケースが増えてくるであろう.

 子宮筋腫核出術は従来腹式で行われてきたが,内視鏡下手術の進歩,普及により粘膜下筋腫に対しては子宮鏡下手術が,漿膜下および筋層内筋腫に対しては腹腔鏡下手術が行われるようになってきた.患者側からすれば非侵襲的でありメリットの多い術式であるが,その反面,開腹手術とは異なり盲目的な操作が多いことや,複雑かつ特殊な手術器具を操作することにより特有な合併症を引き起こすことも多いのが現状である.

 本稿では,子宮筋腫核出術を安全に行うために,それぞれの術式における特有な合併症とその対策に関して述べる.

子宮奇形に対する手術

著者: 牧野恒久

ページ範囲:P.719 - P.721

はじめに

 子宮奇形に関する手術のほとんどは,妊孕性の改善がその目的である.したがって,術中・術後にいかなる合併症が皆無であっても,最終の目的の妊娠がもたらされなければ子宮形成術の意味はない.世を上げて低侵襲医療の時代であるが,後述する腹式子宮形成術と子宮鏡による子宮中隔切除はその臨床目的と妊娠予後が根本的に異なる.安全な婦人科手術とは,子宮形成術に関しては,低侵襲のみを優先とする手術では決してない.

頸部円錐切除術―子宮頸部円錐切除術の合併症とその対策

著者: 山口裕之 ,   植田政嗣 ,   金村昌徳 ,   西山浩司 ,   植木健 ,   植木實

ページ範囲:P.723 - P.727

はじめに

 近年,集団検診の普及に伴い,子宮頸部上皮内病変(軽度異形成~上皮内癌)や子宮頸部初期浸潤癌の症例が増加しつつある.また,これら異常を伴う婦人の若年化や晩婚化の傾向から,これらに対する治療法の確立が求められている.そこで本稿では,治療を主目的とした円錐切除術の有用性,治療の病変設定についての検討を行い,その合併症としての出血や術後の頸管狭窄に対する対応を中心に述べ,妊娠時の取り扱いについても言及したい.

付属器の手術

付属器摘出・卵巣嚢腫摘出術

著者: 生水真紀夫

ページ範囲:P.729 - P.735

はじめに

 良性腫瘍に対する付属器摘出術・卵巣嚢腫摘出術は,婦人科手術のなかでも最も頻度の高い手術の1つである.腫大した卵巣は,可動性が増しており手術の難易度も高くないことから,比較的安全に行うことができる.しかし,悪性腫瘍症例,癒着のある症例,広間膜ないし後腹膜下に発育した巨大卵巣腫瘍症例などでは,尿管の偏位や視野の狭窄などのために臓器損傷をきたす危険性が高まる.また,癒着した卵巣(腫瘍)を剥離,摘出した場合には,全摘したはずの卵巣組織の一部が残存して術後に発育を始め強い疼痛の原因となることがある.さらに,最近では良性卵巣腫瘍を腹腔鏡手術により摘出することが多くなったが,腹腔鏡下手術では開腹手術とは異なる特有の合併症を生じる可能性があることにも注意する必要がある.

 本稿では,付属器摘出・卵巣嚢腫摘出術の施行に当たり特に問題となる点や合併症を取り上げて,安全確保のための予防策や対策について述べる.

子宮外妊娠の手術

著者: 長塚正晃

ページ範囲:P.736 - P.739

はじめに

 近年の経腟超音波断層法の発達・普及と高感度尿中hCG検査薬の開発により,予定月経がわずかに遅れたため来院する妊婦が増えている.そのため妊娠初期から慎重に経過を追うことができる機会が増えており,子宮外妊娠の破裂前に発見・診断される症例が増えてきた.以前は子宮外妊娠非破裂例,破裂例とも緊急開腹卵管摘出術が施行されてきた.

 子宮外妊娠は約10%に反復するといわれており,卵管を保存的に治療することの重要性が認識され,腹腔鏡下手術が普及してきた現在,手術術式は大きく変化してきている.一方で生殖補助医療(ART)が発達したため子宮外妊娠の部位別頻度も変化している(図11)).ART妊娠では子宮内外同時妊娠が11.7%と自然妊娠に比較し高率に発生することから,その診断は重要である.また表11)に子宮外妊娠のリスクファクターを示す.子宮外妊娠では問診は診断上きわめて重要である.

 本稿では子宮外妊娠,特に卵管妊娠における手術術式と合併症,予防策について文献的考察を加え報告する.

リンパ節郭清など

骨盤リンパ節郭清

著者: 岩坂剛

ページ範囲:P.745 - P.747

はじめに

 骨盤リンパ節郭清は,婦人科悪性腫瘍手術において頻用される術式であるため,術中・術後に起こりうる合併症を理解し,その発生の予防法あるいは起こったときの対策を熟知しておくことは重要である.また,合併症のなかには,著しく患者のQOLを損なうものもあるため,術前の説明が非常に重要である.

大動脈周囲リンパ節郭清

著者: 中原健次 ,   小島原敬信 ,   倉智博久

ページ範囲:P.749 - P.751

はじめに

 大動脈周囲リンパ節郭清は,婦人科では卵巣癌と子宮体癌の一部に適用されている.その範囲は,上縁を腹大動脈の腎動脈分岐部の高さまでとされており,通常,左腎静脈を確認して操作を行っているのが現状である.本術式は婦人科領域でも一般化しつつあるが,そのポイントは,「血管をていねいに露出していく操作であり,骨盤および後腹膜解剖の徹底した理解と運用である」といえよう.合併症の最大のものは,術中・術後の出血である.本稿では,術式の概要とポイントを説明し,合併症対策を述べる.

腹腔内播種病巣の摘出―大網切除を含めとくに卵巣癌で要求されるもの

著者: 寺内文敏 ,   杉山徹

ページ範囲:P.753 - P.755

はじめに

 卵巣癌の臨床的特徴として,腹腔内播種が挙げられる.卵巣癌手術療法には,初回開腹手術にて残存腫瘍径1 cm以下とすることが手術目標であるが(optimal surgery),進行例では腹腔内播種が著明に認められ,surgical stagingを含めた基本術式(子宮全摘術,両側付属器切除術,大網切除術,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術±虫垂切除術)が施行されるが,その達成はしばしば困難である1).そのため,基本術式以外に追加合併切除を要することになる(cytoreductive surgery).本稿では,腹腔内播種病巣摘出に際し,より安全に手術が施行できるための対応と対策を述べる.なお,消化管系(小腸,結腸,脾臓など)および尿路系(膀胱,尿管)の切除・再建は,外科・泌尿器科依頼が現状では一般的であるため割愛させていただくこととした.

機能保存手術

子宮脱の手術

著者: 古山将康 ,   村田雄二

ページ範囲:P.756 - P.759

はじめに

 婦人科癌などの悪性腫瘍摘出手術においては,安全性と確実性は独立した因子として考えられる.骨盤内臓器の摘出範囲を広範囲に行って確実性を高くすれば,隣接臓器の損傷の危険性は高くなり,安全性が阻害されることとなる.一方,性器脱や尿失禁などの骨盤底機能障害に対する骨盤底再建手術は機能回復を目的にしており,確実性(機能回復維持)を確保し,かつ安全な手術でなければ治療の意味が失われ,不確実な手術は再発によるポリサージェリーとなり,結果として安全性が損なわれ,重篤な合併症を起こす危険がある.安全性の追求には,常に確実性の追求が必要となる.

膀胱・直腸瘤手術のトラブルシューティング

著者: 中田真木

ページ範囲:P.760 - P.763

術中・術後の合併症

 膀胱瘤や直腸瘤の整復手術は,産婦人科ではどちらかというと前方・中心型の性器脱や全般的な腟外翻の修復において腟頂部の牽引と組み合わせて用いられることが多いが,純粋な膀胱瘤の治療に単独で用いても十分に有用であり,実際に泌尿器科では多くの前腟膀胱底形成術が単独で行われている.また,後方の腟会陰形成術や直腸瘤の修復手技は直腸肛門外科においても行われている.

 ある程度腟式手術に経験のある術者にとって,これら腟周りの修復手技はさほど困難や危険を感じさせるものではないが,骨盤底支持や膀胱尿道機能に直結し,機能的によい結果を残すためにはより安定した手術進行を求められる.

連載 カラーグラフ・知っていると役立つ婦人科病理・69

What is your diagnosis ?

著者: 清水道生 ,   小川史洋 ,   清水禎彦

ページ範囲:P.695 - P.697

症例 : 15歳,女性

 腹部膨満感および便秘にて来院.腹部CTにて下腹部に腫瘤が認められ,右卵巣腫瘍の診断のもとに手術が施行された.術中,右卵巣腫瘍を覆う形で大網が骨盤腔にまで下がっており,同時に小結節が触知された.Fig 1は大網の小結節として提出された検体の代表的な組織像(HE染色)である.

 1.病理診断は何か.

 2.本例の右卵巣腫瘍としてはどのような病理組織像が想定できるか.

婦人科超音波診断アップグレード・13

イレウスの超音波所見

著者: 佐藤賢一郎 ,   水内英充

ページ範囲:P.765 - P.777

1 はじめに

 産婦人科領域でイレウスが問題になるケースとしては,術後の合併症,急性腹症における他疾患との鑑別,妊娠時合併症などの場合が想定される.井上ら1)は,1973~1991年における急性腹症5,527例中で最も頻度の高かったのは急性虫垂炎で3,384例(70.3%)を占め,次いでイレウス669例(12.1%)であり,妊娠合併の急性腹症は57例(1.0%)で,やはり急性虫垂炎が最も多く40例(70.1%)を占め,次いでイレウスが12例(21.0%)であったと報告している.

 最終的には,消化器内科や外科などにコンサルトし,連携しながら診療に当たることになるであろうが,その診断,特に緊急を要する複雑性イレウスの鑑別については産婦人科医としても知っておく必要があると思われる.

Dos&Don'ts婦人科当直の救急診療ガイド・11

―性器出血を伴わないもの―卵巣過剰刺激症候群

著者: 葛西真由美 ,   鈴木博

ページ範囲:P.779 - P.783

1 はじめに

 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は排卵誘発剤の投与により,卵巣腫大,腹水あるいは胸水の貯留,血液濃縮および循環血液量減少を3大症状とする症候群であり,ほかに体重増加,食欲不振,血清電解質異常,および乏尿などを伴う(図1)1).重症例では血栓症,腎不全,呼吸不全などを合併して,脳神経障害の後遺症を残したり,多臓器不全により死に至ることもある(図2)1).治療に当たっては病態を理解し,病状を悪化させないように進めていくことが大切である.

OBSTETRIC NEWS

ルチーン経腟超音波による短縮頸管診断は有用か?

著者: 武久徹

ページ範囲:P.785 - P.791

切迫早産の管理には多数の難しい問題がある.早産の原因はきわめて複雑で,発症には多数の経路があるので,もし明らかな原因の1つが解明され,有効な治療が採用されたと仮定しても,早産率の大幅な減少には至らない.

 頸管開大2 cm以上または頸管展退80%以上,またはその両方があれば早産との関連があることがいくつの研究で報告されている(OG 68 : 434, 1986/OG 67 : 238, 1986/AJOG 162 : 748, 1990/AJOG 174 : 1885, 1996)が,連続的内診に関するBuekensらの無作為化研究では,ルチーンに連続的内診(2,803例)を行ってもルーチンには内診しない場合(2,799例)に比較し早産率に有意差はみられなかった(Lancet 344 : 841, 1994).

もうひとつの国境なき医師団・10

コンジローマから覗いたレイプによる妊娠と養子縁組

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.794 - P.795

スマトラ沖地震と人身売買

 2004年12月26日,スマトラ沖地震とそれに続く津波は,30万人以上の犠牲者を出した.1月4日,犠牲者が9万人を超したインドネシアでは,約3万5千人が孤児になったと発表されている.

 被災直後から親類,福祉団体を装った人身売買組織によって,避難所から連れ去られる子供たちが目撃されている.孤児の養子縁組を斡旋する携帯メールも流れた.インドネシア政府は,被災から1週間後に孤児の養子縁組を禁止するとともに,unicaef(国連児童基金)などと協力した孤児売買防止に乗り出した.

病院めぐり

大津赤十字病院

著者: 小笹宏

ページ範囲:P.797 - P.797

滋賀県の県都である大津市は人口30万人の地方中核都市ですが,古くより浜大津港を中心に物資の集散地として栄えていました.大津市は琵琶湖南部を取り囲むようにスプロールしており,市域内にJR駅が9駅あります.当院は浜大津やJR大津駅から徒歩10分の旧市街にありますが,滋賀県庁を含む当地域は隣接する京都市の中心部から車で30分程度の位置にあり,県(府)庁の所在地同士としては全国的にも最も接近しています.

 当院は1904年,全国で3番目の日本赤十字支部病院として開設され,昨年創立100周年を迎えました.開設時は内科,外科,眼科の3診療科,60床からスタートし,現在は887床,医師136名,看護師・準看護師・助産師692名,そのほか職員合計1,149名を数えます.また,平成14年7月,国立病院再編成に伴う後医療施設として,大津赤十字志賀病院(一般100床,療養50床)を開設しています.職員は,医師11名,看護師69名,そのほか合計116名です.当院は地域医療支援病院,地域がん診療拠点病院に指定されており,本年4月から総合周産期母子医療センターの指定を受けました.

症例

複雑型異形子宮内膜増殖症に対する子宮鏡治療ののち生児を得た不妊症例

著者: 竹村昌彦 ,   辻江智子 ,   富家真理 ,   木村正 ,   中嶌竜一 ,   古山将康 ,   山嵜正人 ,   村田雄二

ページ範囲:P.799 - P.802

はじめに

 子宮内膜ポリープは子宮内膜の局所的な過発育として定義される病変である.子宮内膜ポリープと子宮内膜癌との関係は十分に明らかにされていないが,子宮内膜癌の発生母地となる可能性がある.子宮内膜ポリープは,決して稀な病変ではない.画像診断手技の向上に伴って,無症状の内膜ポリープが発見される頻度は増加しているものと考えられる.

 子宮内膜ポリープの治療法としては,胎盤鉗子による摘除や内膜全面掻把が行われてきたが,手術用子宮鏡,特にレゼクトスコープの発達と普及により,直視下で正常子宮内膜への損傷を最小限に抑えて,ポリープのみを残存なく切除することが容易になった.しかし,子宮内膜ポリープを診断したときに全例で直ちに治療を行うべきかどうかについては明確な指針はない.

 われわれは,不妊治療の過程で内膜ポリープを診断し,直視下に切除を行ったところ,複雑型異形子宮内膜増殖症(endometrial hyperplasia complex with atypia)であった症例を経験した.この症例を呈示して,子宮内膜ポリープの診断と治療について考察する.

臨床経験

ハーモニック・スカルペルを用いた子宮頸部円錐切除術の検討

著者: 大山則昭 ,   吉岡知巳 ,   利部徳子 ,   小原幹隆 ,   真田広行 ,   太田博孝

ページ範囲:P.805 - P.808

はじめに

 近年,子宮頸癌は検診などの普及により早期で発見され治療されることが多くなった.さらに,子宮頸部病変発症の若年化あるいは妊娠分娩の高齢化により,妊孕性温存療法である子宮頸部円錐切除術が選択されることが多くなった.以前より子宮頸部円錐切除術には,cold knife,LEEP(loop electrosurgical excision procedure),レーザーなどが用いられてきた.

 ハーモニック・スカルペル(harmonic scalpel : 超音波凝固切開装置)は近年腹腔鏡手術などに広く用いられており,超音波振動により組織の切開,止血を行う.今回われわれは,ハーモニック・スカルペルを用いた子宮頸部円錐切除術を施行し有用であったので報告する.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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