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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻6号

2005年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 安全な産科手術・処置をめざして 妊娠中の手術・処置における安全対策

子宮内容除去術・清掃術

著者: 高橋恒男 ,   春木篤

ページ範囲:P.824 - P.827

はじめに

 子宮内容除去術・清掃術(dilatation & curettage : 以下,D&Cと略)は,人工妊娠中絶や自然流産に対する手術として産婦人科医が最初にマスターしなければならない手術手技で,かつ日常数多く行わねばならない基本手術でもある.手術手技としてはすでに完成されており,ある意味では慣れると比較的簡単なものが多いため,安易な気持ちに陥りやすいところにこの手術の持つ落とし穴がある.

 産婦人科医事紛争のなかでも,D&Cにかかわる事故は常に上位に出てくる発生頻度の高いもので,そのなかでは子宮穿孔,内容遺残(妊娠継続),子宮外妊娠の誤診が上位を占めている.内容遺残や子宮外妊娠誤診は,注意深い観察や超音波の検査を行えば防ぎえる過失性の強いものが多い.子宮穿孔は,この手術の持つ盲目的操作の特異性から,必ずしも過誤といえないものも多いが,子宮の屈曲が強いものや,患者が肥満で手術操作がやりにくかったものなど,後で考えれば手術リスクが高いと考えられ,もう少し注意深く慎重に行えば防ぎえたと後悔させられるものも多く認められる.本稿では,これらのトラブルを防止する安全対策について述べてみたい.

子宮頸管縫縮術

著者: 大槻克文 ,   澤田真紀 ,   八鍬恭子 ,   安藤智 ,   小出馨子 ,   岡井崇

ページ範囲:P.829 - P.833

はじめに

 従来,頸管縫縮術は,妊娠中期の流産または早産の既往を有し頸管無力症と診断される症例,円錐切除後の妊娠および妊娠中に円錐切除を行った症例などに対して予防的に行われることが多かった.一方,近年では経腟超音波の普及により,内診で頸管の開大が明らかになる前に頸管長が短縮している段階や胎胞が視認される状態での頸管縫縮術,すなわち治療的頸管縫縮術が行われるようになってきた.それに伴い,頸管縫縮術を施行するにあたり,その手術とそれに伴う処置に対する安全対策の必要性が高まっている.

 ここでは,妊娠初期に行う「予防的頸管縫縮術」および中期以降の「治療的頸管縫縮術」に対する適応についてのわれわれの考え方と,それぞれの合併症および安全対策について記述する.

骨盤位外回転術

著者: 竹田善治 ,   安達知子 ,   中林正雄

ページ範囲:P.834 - P.837

はじめに

 2000年のHannahら1)が行った欧米多施設共同のランダム化比較試験の結論である「正期産骨盤位は経腟分娩より予定帝王切開がよい」とする報告や,それに続いてAmerican College of Obstetricians and Gynecologists Committee(ACOG)から「正期の単胎骨盤位であれば可能な限り外回転術(external cephalic version : 以下,ECV)によりそれを減らす努力をすることが薦められ,骨盤位の経腟分娩はもはや適切ではない」との勧告2)が出されて以来,本邦でも骨盤位の経腟分娩は激減し,骨盤位であれば帝王切開による分娩が一般的になってきている

 このような状況のもと,胎位矯正術の1つである外回転術が見直されてきている.ACOGでは骨盤位の場合,ECVを可能な限り行うことが推奨されているが,本邦ではECVに伴う合併症の懸念のため普及しているとはいい難く,骨盤位であれば胎位矯正術を行わずそのまま帝王切開分娩になる場合が多い.当院では現在まで約200例のECVを行ってきたが,5例(2.5%)でECV直後に緊急帝王切開術を行っている.幸い児の死亡や障害例はないが,ECVにリスクが伴うのは確かであり,無条件に行うのは好ましくない.

 本稿では,文献的な検討や当院で経験した緊急症例の検討から,当院で行っているECVの安全対策について述べる(ECVの具体的な手技については成書を参照されたい).

機械的分娩誘発法

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.838 - P.841

はじめに

 分娩誘発とは自然陣痛発来前に分娩陣痛を人為的に起こし分娩を開始し終了させることであり,その手法は産科医療にとって必要である.

 分娩時に起こるトラブルは,最新の知識を駆使して注意しても産科医療の性質上完全に避けることはできない.

 母児救命のために分娩誘発を行うことは産科の日常医療でよくあることだが,近年の自然分娩志向のために,ともすると当然と思える分娩に対する医学的介入でさえも場合によっては医療事故の原因とみなされることがある.したがって分娩誘発を行うには正しい適応のもと,十分なインフォームド・コンセントを行い,合併症にも直ちに対応できるように準備をして慎重に行わなければならない.

児遂娩術と帝王切開術における安全対策

鉗子遂娩術

著者: 上妻志郎

ページ範囲:P.843 - P.849

はじめに

 鉗子遂娩術は一部の産婦人科医とその他の多くの人々から吸引遂娩術に比べ危険な手技であるように思われているようである.鉗子は吸引と比較すると,児頭を保護し産道を広げるという特徴がある.それを理解するために,本稿では,まず鉗子が胎児や産道にどのような力を与えているかについて考えてみよう.それを念頭に置いたうえで,基本手技について略述する.

吸引遂娩術(吸引分娩)

著者: 石本人士 ,   吉村泰典

ページ範囲:P.850 - P.853

はじめに

 鉗子分娩や吸引分娩は,歴史的には分娩の遷延や停止に伴う全身状態の悪化から母体(産婦)を救う手段として登場してきた.しかし医学・医療の進歩により分娩時の母体死亡や重篤な合併症が激減した結果,現代の産科臨床では鉗子分娩や吸引分娩の施行に当たっては,いかに児の危険を回避するかに関心が移ってきた.両者には一長一短があるが,吸引分娩は鉗子分娩に比べ操作が比較的容易であることから,本邦のみならず欧米でも急速遂娩術として吸引分娩が主に用いられる傾向にある1~3)

骨盤位牽出術

著者: 杉本充弘

ページ範囲:P.856 - P.861

はじめに

 骨盤位分娩は,頭位分娩に比較し児の分娩損傷と周産期死亡が高率であり,帝王切開分娩が選択されることが多い.骨盤位分娩において母児の安全性を高めるには,的確な症例の選択と骨盤位介助術・牽出術の習熟が重要である.骨盤位介助術・牽出術は帝王切開分娩での児娩出にも必要であり,産科医としての専門性が発揮される手技である.

帝王切開術

著者: 久保隆彦 ,   菅原かな ,   川上香織 ,   渡場孝弥 ,   渡邉典芳 ,   田中基

ページ範囲:P.862 - P.865

帝王切開の安全対策に関する最近の話題

 最近,帝王切開の安全対策を巡る種々の問題が起きているので,以下に略述する.

 1. 帝王切開の適応と要約の揺れ

 無作為化比較試験(RCT)により,正期産骨盤位では経腟分娩で出生した児より帝王切開で娩出した児の予後が良好であることが明らかとなったため,骨盤位適応の帝王切開が増加している.また,VBACの高い子宮破裂率(約1% : 日本の新生児死亡率の10倍)と,米国ではVBAC失敗による訴訟の激増,わが国では30分以内に複数の産科医師,麻酔科医師,新生児科医師が揃う緊急帝王切開がきわめて困難な現状があり,EBMから再びVBACではなく反復帝切を選択する患者ならびに医師が増加している1).一方,妊婦の掲示板サイトでは,十分な知識もなく,医療従事者からの正しい説明を受けていない既往帝王切開妊婦がVBACは安全であると根拠なく思い込んで,実施してくれる分娩施設を必死で捜している.このような受け入れ施設では,ほとんどの場合,緊急対応が不可能である.

分娩後の手術・処置における安全対策

会陰・腟壁・頸管裂傷の縫合術

著者: 下屋浩一郎 ,   村田雄二

ページ範囲:P.867 - P.869

はじめに

 かつて分娩は,女性にとって生涯を通じて最も生命の危険に曝されるイベントであった.輸血,抗生物質の使用,麻酔法の確立などを通じて母体死亡は著しく減少したが,分娩の進行状況によって,いかなる場合にも産道損傷は起こりうる.産道損傷には会陰裂傷,腟壁裂傷,頸管裂傷がある.会陰裂傷には腟壁裂傷が合併することが多い.本稿では産道裂傷の縫合術における安全対策について論じる.

 初産婦,経産婦にかかわらず,分娩の進行状況によって産道損傷は発生しうる.産道損傷には子宮頸管裂傷,腟壁裂傷,会陰裂傷があり,急遂分娩を行った場合などに発生しやすい.大きな裂傷が予測される場合には会陰切開を行うことも重要であるが,同時に産道損傷の修復に関して習熟しておくことも重要である.

癒着胎盤の処置と対応

著者: 藤森敬也 ,   伊藤明子 ,   佐藤章

ページ範囲:P.872 - P.875

はじめに

 癒着胎盤の発生頻度は年々増加しており,その最大の要因は帝王切開症例の増加によるものと考えられている.この50年でその頻度は10倍になったとされ,およそ2,500分娩に1例と報告されている1)が,実際にはさらに増加していると考えられ,毎日の臨床の場で遭遇する可能性が高くなってきている.その対応は慎重に行わないと思わぬ大量出血をもたらし,母体の生命まで脅かす危険性がある.

子宮内反の処置と対応

著者: 平野秀人 ,   細谷直子 ,   清水大 ,   熊沢由起代 ,   田中俊誠

ページ範囲:P.876 - P.879

子宮内反症とは

 胎盤娩出時に,子宮が反転し子宮内膜面が腟内や腟外に露出する状態をいう.内反の程度によって子宮嵌凹,不完全子宮内反症,完全内反症に分類される.顕著な症状を呈さないこともあるが,腹膜刺激による強烈な疼痛や迷走神経反射に起因する血圧の下降,さらに胎盤剥離面からの大出血による出血性ショックなど,生命の危険性に及ぶことがあり,早急に適切な対応を要する代表的な産科救急疾患の1つである.

子宮内反症の診断

 適切な対応のためには,まず子宮内反症を迅速に診断することから始まる.そのためには子宮内反症という疾患を認識している必要がある.本疾患の発生頻度は必ずしも高くないので経験する機会が少なく,初めて遭遇した場合,必ずしも診断が容易でないことがある.完全内反症の場合は,胎盤娩出と同時に,見慣れない大きな赤黒い肉塊が一緒に現れる.助産師が「何かおかしいものが出ています」と指したら,それは子宮内面で,まさに完全子宮内反症が発症した瞬間である.不完全子宮内反症の場合は,腟鏡による産道検査の際に一見,筋腫分娩かと見間違う可能性がある.筋腫分娩とは異なり,腫瘤の全周に頸管を認めないことから本疾患と診断する.子宮嵌凹の場合は胎盤娩出直後,触診で子宮底が漏斗状に凹んでいる,あるいは触知しにくい場合に本疾患を疑う.経腹的超音波検査で子宮底部の嵌凹を認めることにより診断が確定する.

弛緩出血の処置と対応

著者: 児玉由紀 ,   鮫島浩

ページ範囲:P.881 - P.885

はじめに

 これまで一般的には分娩後500 ml以上の出血がある場合を産褥出血とすると定義されてきた.しかし,正常の母体出血量は,経腟分娩では500~600 ml,帝王切開分娩では800~1,000 mlと考えられている.弛緩出血は,産科出血の原因の1つである.

 1974年から1978年に至る2,067例の母体死亡調査1)(米国)によると,331例が産褥出血であったと報告された.この331例のなかで114例(34%)が弛緩出血によるものであった.わが国でも,1991~1992年に妊産婦死亡の横断的研究が行われ2),出血による死亡例が219例中86例(39%)であり最も多かった.医療施設で出血性ショックにより死亡した74例のなかでは,弛緩出血が11例(15%)を占めた.

 弛緩出血は産科出血の原因の1つである.多くの場合,弛緩出血は分娩の前に予測し得る(表1).巨大児,多胎児,羊水過多など過伸展した子宮は分娩後に子宮弛緩を起こしやすい.双胎の分娩の際には平均1,000 mlもしくはそれ以上の出血がある.また子宮弛緩を起こす吸入麻酔薬が使用されたときにも弛緩出血は起こり得る.

 オキシトシンによる分娩誘発・促進でも弛緩出血に注意する.Fuchsら3)は7回以上の多産婦約5,800人を対象に検討し,2.7%に弛緩出血があり,一般妊産婦の4倍であると報告した.また,Babinskiら4)は,弛緩出血の頻度は経産回数の少ない産婦では0.3%に対し,4回以上の経産婦では1.9%であったと報告している.

 前回分娩時に弛緩出血の既往がある場合もリスク因子である.

子宮破裂の処置と対応

著者: 椋棒正昌

ページ範囲:P.887 - P.889

はじめに

 子宮破裂は全分娩の1,000~3,000例に1例の頻度で発生する稀な産科救急疾患である1, 2).多くは分娩時に突発的に起こり,急速に出血性ショックに陥り,母児に重大な影響を及ぼす.そのために,迅速な診断と適切な治療が要求される.

 近年,帝王切開率の上昇に伴い,帝王切開後の瘢痕子宮の存在は,子宮破裂のリスクを持つ次回の妊娠・分娩管理の大きな問題点となっている.本稿では,分娩後に発生する子宮破裂の処置と対応を中心に,子宮破裂の安全対策について述べる.

連載 カラーグラフ・知っていると役立つ婦人科病理・70

What is your diagnosis ?

著者: 清水道生 ,   小川史洋 ,   清水禎彦

ページ範囲:P.821 - P.823

症例 : 60歳,女性

 下腹部痛があり来院.超音波検査にて子宮筋腫が疑われ,手術が施行された.摘出された子宮体部に出血・壊死を伴う境界やや不明瞭な病変(直径8 cm)を認めた.Fig1, 2はその病変の代表的な組織像(HE染色)である.

 1.病理診断は何か.

 2.鑑別すべき疾患は何か.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・1

前回帝切後に経腟分娩(VBAC)し,癒着胎盤のために子宮内反症をきたしショック状態になった1例

著者: 深石孝夫 ,   松井啓人 ,   鏡一成 ,   清水和子 ,   高木剛 ,   田村友宏

ページ範囲:P.893 - P.897

症 例

 患 者 : 30歳代後半

 既往歴 : 2年前に腎盂腎炎

 妊娠歴 : 1経産(帝王切開)

 経 過 : 今回の妊娠経過中,特に異常を認めなかった.妊娠40週2日,陣発にて入院した.GBS陽性のためPIPC点滴,前回帝切のためヴィーンFにて血管確保し経過を観察した.その後,無事,経腟分娩となり,3,140 gの女児を娩出した.アプガースコアは9─10─10であった.児を娩出後,胎盤が娩出しなかったので,10~20分経過後に臍帯牽引,Crede圧出法,Brant─Andrews法など各種の胎盤娩出法を施行したが娩出できなかった.その後,突然,疼痛を訴えショック症状となった.血管確保をもう1本追加し,カコージンなど昇圧薬を使用しショックの治療を行った.

初診時の所見

 状況として子宮内反症を疑ったが,超音波断層法,内診にて子宮内反症の所見はとれなかった.しかし状況は子宮内反症を疑い,ショック対策を施行し手術を決定した.このとき疼痛が強かったので胎盤を環納し,内反症の整復はできなかった.

婦人科超音波診断アップグレード・14

Sonohysterographyについて

著者: 佐藤賢一郎 ,   水内英充

ページ範囲:P.899 - P.910

1 はじめに

 Sonohysterographyは,子宮内に液体を注入して形成されるフリースペースをコントラストとして利用しながら経腟超音波による子宮内の観察を行う方法であり,卵管の疎通性の評価に使用されることもある.子宮内に液体を注入して観察するアイデアは1981年のScanselli1)の報告がはじめてと思われる.1984年にRichmanら2)は卵管疎通性の評価について報告し,1986年にはRandolphら3)によって経腹超音波を使用した子宮内病変の観察が報告された.経腟超音波を使用した方法は,1987年にDeichertら4)によってはじめて報告されたが,子宮卵管造影に準じた手技と造影剤を使用していた.生理食塩水(以下,生食)を使用した方法は1992年にBonilla─Musolesら5)によって報告されたが,子宮卵管造影に準じた手技によっており,患者の忍容性や観察に問題があったと推察される6)

 現在,広く使われているカテーテルを使用し,生食を注入しながら経腟超音波で観察する方法は1993年にFukudaら6),Parsons and Lense7)によって報告された.なお,sonohysterographyの用語は1993年にParsons and Lense7)が報告したものであるが,そのほかhysterosonography, transvaginal sonography,fluid contrast augmentation,saline infusion sonohysterography,saline infusion sonographyなどとも呼称されている.

 近年,子宮内病変の検出,診断における有用性が報告されており,低侵襲で特別な設備を要せず,外来で簡便に施行でき,コスト的にも廉価(使用するカテーテルにもよるが)なため,手技さえ習得すれば日常診療における有用な診断法である.

OBSTETRIC NEWS

満期前破水の管理2004年

著者: 武久徹

ページ範囲:P.912 - P.913

満期前破水[preterm PROM(pPROM)]の管理のうえで,抗生物質投与(ACOG Committee Opinion No.279, 2002/Cochrane Library, Issue 3. Oxford, Update Software, 2000)と副腎皮質ホルモン(AJOG 160 : 890, 1989/AJOG 173 : 246, 1995/AJOG 173 : 322, 1995)の有効性は複数の証拠で支持されているが,子宮収縮抑制剤投与は妊娠週数の延長を支持する一定の証拠がなく,新生児転帰の改善を支持する証拠がなく,著明な母体副作用があるため比較的禁忌である(ACOG Practice Bulletin. No.1, 1998/AJOG 157 : 388, 1987/NEJM 341 : 660, 1999).本稿では最近行われた調査を紹介し,pPROMの管理を考察する.

 1. 米国産婦人科学会(ACOG)の見解

 a)抗生物質

 妊娠週数を延長し,周産期転帰を改善する可能性があるので,使用の際はすでに報告されているプロトコールにしたがう.

病院めぐり

山田赤十字病院

著者: 能勢義正

ページ範囲:P.914 - P.914

山田赤十字病院は,風光明媚で,気候も人の気質も穏やかな三重県の南勢地域にあり,今年の秋には伊勢市に合併して,住所は伊勢市御薗町高向810になる予定です.年間数十万人もの参拝者を迎える伊勢神宮のおひざ元に位置しています.山田の名称は,現在の伊勢市が当時,宇治山田町と呼ばれていたことによるものと思われます.歴史は全国91の赤十字支部病院のなかでは最も古く,明治37年2月に設立され,平成16年には創立100周年を迎えています.

 現在,ベッド数は621床で,21の診療科があり,三重県の中南勢地域における基幹病院としての役割を果たしています.地元では「山田日赤」とか「日赤」と呼ばれて地域住民に親しまれ,また頼りにされる存在となっています.救命救急センターの機能を有しており,地域医療支援病院に承認されています.もちろん臨床研修指定病院であり,日本医療機能評価機構認定病院となっています.また,老人保健施設「虹の苑」を併設しています.

愛知県厚生連 加茂病院

著者: 河合智子

ページ範囲:P.915 - P.915

当院は正式名称を愛知県立厚生農業組合連合会加茂病院といい,その名のごとくJA母体です.愛知県には,JA母体の病院は9病院あります.開設は昭和22年であり,昭和38年に総合病院となりました.病床数は約600床あり,14の診療科を有しています.所在地は人口34万人の豊田市の中心にあり,西三河の約50万の人々の健康維持のために機能しています.豊田市には市民病院がなく,その役割も担っています.平成16年には日本医療機能評価機構から認定を受けています.

 現在,当科スタッフは,当院にて研修を行い産婦人科医となった若手3名と田中隆行部長の計4名が常勤医として勤務しています.また,約12名の研修医もスーパーローテートしています.平成16年度の分娩数は150件と少なめですが,全身麻酔下の手術件数は220件,悪性腫瘍は子宮頸癌9例,子宮体部癌9例,子宮肉腫2例,卵巣癌8例でした.

もうひとつの国境なき医師団・11

骨盤腹膜炎から覗いた救急医療

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.916 - P.917

リハビリテーションセンターでの腹痛

 ある日,性産業従事者を対象としたリハビリテーションセンター内の移動診療所に,腹痛を訴える27歳の女性が訪れた.診察すると,左付属器に鵞卵大の有痛性の腫瘤を触知する.左卵巣嚢腫の診断で,専門医の受診を必要とする手紙を,施設長に宛てて書いた.腹痛を理由に逃亡することを恐れる施設の職員は,性産業従事者の訴えを聞き入れないことが多い.

 翌日,施設に電話をすると,彼女はいなかった.夜に腹痛が強くなり,職員が病院につれて行った.診察した医師は手術をすすめたものの,彼女が拒否したので帰宅させたという.施設は彼女に手を余し,責任逃れのために,退所させたとしか思えないような対応ぶりだった.

原著

手術を受ける婦人科腫瘍患者のQOL

著者: 松下年子 ,   村田比奈子 ,   松島英介 ,   坂田優 ,   宮坂尚幸 ,   麻生武志

ページ範囲:P.919 - P.925

はじめに

 近年,治療ないし医療の評価として,生存率や治癒率といった数量的指標に加え,QOL(quality of life)のように,生活や人生の質的側面を重視する立場からこれら質的特性を数量化した指標が取り入れられるようになってきている1).特に,手術を受ける婦人科腫瘍患者の場合は,一般の周術期におけるストレスに加え,女性性の観点,つまり女性としての自己イメージや性機能の変化2~11)および妊孕性温存の問題などから,精神的葛藤は高いことが予想される.わが国においては,婦人科癌をはじめとする婦人科腫瘍患者の,身体的側面のみならず心理社会的な側面をも包含するQOLの視点から,その実態を調査した報告は欧米に比べてはるかに少ない.

 そこで本研究では,手術を受ける婦人科腫瘍患者を対象に入院中および退院前後におけるQOL,さらにそれらとほかの臨床要因との関連を追跡する目的で,自記式質問紙を用いた面接調査を実施した.

臨床経験

肥満妊婦の中期中絶

著者: 出口奎示

ページ範囲:P.927 - P.930

はじめに

 妊娠中期中絶では,ときに胎盤早期剥離,頸管裂傷などによる偶発的大出血に遭遇することがある.肥満妊婦の場合は,手術に技術的困難を伴うほかに,肥満症の婦人科手術や分娩時には出血量の増加傾向が指摘されていることを考慮すると1, 2),同様の傾向がみられるのではないかと懸念される.筆者はこの問題に,「肥満妊婦の中期中絶」という新たな課題を提起し,肥満に起因する異常発生の有無を臨床的に検討した.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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