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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科59巻6号

2005年06月発行

文献概要

今月の臨床 安全な産科手術・処置をめざして 分娩後の手術・処置における安全対策

弛緩出血の処置と対応

著者: 児玉由紀1 鮫島浩1

所属機関: 1宮崎大学医学部周産期センター

ページ範囲:P.881 - P.885

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はじめに

 これまで一般的には分娩後500 ml以上の出血がある場合を産褥出血とすると定義されてきた.しかし,正常の母体出血量は,経腟分娩では500~600 ml,帝王切開分娩では800~1,000 mlと考えられている.弛緩出血は,産科出血の原因の1つである.

 1974年から1978年に至る2,067例の母体死亡調査1)(米国)によると,331例が産褥出血であったと報告された.この331例のなかで114例(34%)が弛緩出血によるものであった.わが国でも,1991~1992年に妊産婦死亡の横断的研究が行われ2),出血による死亡例が219例中86例(39%)であり最も多かった.医療施設で出血性ショックにより死亡した74例のなかでは,弛緩出血が11例(15%)を占めた.

 弛緩出血は産科出血の原因の1つである.多くの場合,弛緩出血は分娩の前に予測し得る(表1).巨大児,多胎児,羊水過多など過伸展した子宮は分娩後に子宮弛緩を起こしやすい.双胎の分娩の際には平均1,000 mlもしくはそれ以上の出血がある.また子宮弛緩を起こす吸入麻酔薬が使用されたときにも弛緩出血は起こり得る.

 オキシトシンによる分娩誘発・促進でも弛緩出血に注意する.Fuchsら3)は7回以上の多産婦約5,800人を対象に検討し,2.7%に弛緩出血があり,一般妊産婦の4倍であると報告した.また,Babinskiら4)は,弛緩出血の頻度は経産回数の少ない産婦では0.3%に対し,4回以上の経産婦では1.9%であったと報告している.

 前回分娩時に弛緩出血の既往がある場合もリスク因子である.

参考文献

1) Kaunitz AM, Hughes JM, Grimes DA, et al : Causes of maternal mortality in the United States. Obstet Gynecol 65 : 605─612, 1985
2) Nagaya K, Fetters FD, Ishikawa M, et al : Causes of maternal mortality in Japan. JAMA 283 : 2661─2667, 2000
3) Fuchs K, Peretz B─A, Marcovici R, et al : The “grand multipara”─Is it a problem?A review of 5785 cases. Int J Gynecol Obstet 23 : 321, 1985
4) Babinski A, Kerenyi T, Torok O, et al : Perinatal outcome in grand and great─grand multiparity : Effects of parity on obstetric risk factors. Am J Obstet Gynecol 181 : 669, 1999
5) Elbourne DR, Prendiville WJ, Carroli G, et al : Prophylactic use of oxytocin in the third stage of labour. Cochrane Database Syst Rev 4 : CD001808, 2001
6) Hauth JC : Postpartum Hemorrhage. In : Current Therapy in Obstetrics and Gynecology 5th ed(Quilligan EJ, Zuspan FP, eds).pp317─320, WB Saunders, 2000
7) Perinatal Medicine 2005, Obstetrical Catastrophe, Feb. 14, 2005より

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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