文献詳細
今月の臨床 胎児疾患の管理─胎内治療の時代を迎えて
文献概要
胎児治療の社会的認知
社会的認知や医療経済的認知なくして,新しい医療が定着・普及するはずがない.胎児輸血がLiley1)により発表されたのは1963年であり,わが国では1966年に金岡ら2)により発表された.以後40年の歳月が流れたにもかかわらず,わが国において,胎児輸血は社会的にも医療経済的に認知されていない.米国では年間500件程度行われている3).わが国では胎児輸血は未だに,医師の裁量のみによって実行される研究的,実験的医療である.しかしあまりにも歴史が古い技術なので,いまさら高度先進医療と呼ぶこともはばかれる.確かに,わが国の人口やRhD因子陰性率から考えると,RhD因子にかかわる胎児輸血の適応例は年間数例にすぎない.少なければ医療保障は容易に行えるはずであり,不規則抗体に起因する胎児貧血やパルボB─19による貧血など,ほかにも胎児輸血の適応はある(図1)4).
突破口が1つ開けた.医療機関を指定して,医療経済的に認知する高度先進医療に2種類の胎児治療が指定された.いずれも国立循環器病センターと筑波大学附属病院での承認である.1つは胎児尿路─羊水腔シャント術で平成16年12月より認められた.適応症は,Prune─Belly症候群などの胎児閉塞性尿路疾患である.2つ目は胎児胸腔─羊水腔シャントチューブ留置術で平成17年4月より認められた5).
社会的認知や医療経済的認知なくして,新しい医療が定着・普及するはずがない.胎児輸血がLiley1)により発表されたのは1963年であり,わが国では1966年に金岡ら2)により発表された.以後40年の歳月が流れたにもかかわらず,わが国において,胎児輸血は社会的にも医療経済的に認知されていない.米国では年間500件程度行われている3).わが国では胎児輸血は未だに,医師の裁量のみによって実行される研究的,実験的医療である.しかしあまりにも歴史が古い技術なので,いまさら高度先進医療と呼ぶこともはばかれる.確かに,わが国の人口やRhD因子陰性率から考えると,RhD因子にかかわる胎児輸血の適応例は年間数例にすぎない.少なければ医療保障は容易に行えるはずであり,不規則抗体に起因する胎児貧血やパルボB─19による貧血など,ほかにも胎児輸血の適応はある(図1)4).
突破口が1つ開けた.医療機関を指定して,医療経済的に認知する高度先進医療に2種類の胎児治療が指定された.いずれも国立循環器病センターと筑波大学附属病院での承認である.1つは胎児尿路─羊水腔シャント術で平成16年12月より認められた.適応症は,Prune─Belly症候群などの胎児閉塞性尿路疾患である.2つ目は胎児胸腔─羊水腔シャントチューブ留置術で平成17年4月より認められた5).
参考文献
1) Liley AW : Intrauterine transfusion of foetus in in haemolytic disease. BMJ 2 : 1107─1109, 1963
2) 金岡 毅,岡田悦子 : 羊水分析と子宮内胎児輸血.日本産科婦人科学会雑誌18 : 1013─1015, 1996
3) Schumacher B, Moise KJ : Fetal transfusion for red blood cell alloimmunization in pregnancy. Obstet Gynecol 88 : 137─150, 1996
4) Ishihara Y, Miyata S, Chiba Y, et al : Successful treatment of extremely severe fetal anemia due to Anti─Jr2 alloimmunization. Fetal Diagn Thera 2005(in press)
5) 厚生労働省ホームページ高度先進医療 http : //www.mhlw.go.jp/topics/0106/tp0601─1.html
6) 池上直己 : ベーシック医療問題.日本経済新聞社
7) 武田佳彦,神保利春 : 周産期委員会報告(わが国における胎児治療の実態調査報告).日産婦誌47 : 604─606, 1995
8) 寺尾俊彦,中野仁雄 : 周産期委員会報告.日産婦誌50 : 908─909, 1998
9) 千葉喜英 : 胎児治療の現況と問題.日本新生児学会誌 34 : 715─719, 1998
10) 寺尾俊彦,中野仁雄 : 周産期委員会報告.日産婦誌51 : 1006─1007, 1999
11) 中野仁雄 : 周産期委員会報告(平成12年度周産期登録システムのあり方検討小委員会).日産婦誌53 : 941─947, 2001
12) 千葉喜英 : 胎児診断・治療の現況と将来.日本新生児学会誌37 : 582─588, 2001
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