文献詳細
原著
変革につながるような出産経験尺度(TBE─scale)の開発─主体的出産経験を定義する試み─
著者: 三砂ちづる12 嶋根卓也23 野口真紀子24 竹内正人5 菅原ますみ6 福島富士子7 丹後俊郎8 榊原洋一9 小林秀資10
所属機関: 1津田塾大学学芸学部 2国立保健医療科学院疫学部 3順天堂大学医学部衛生学 4東京大学大学院国際保健計画学 5葛飾赤十字産院 6お茶の水女子大学文教育学部 7国立保健医療科学院公衆衛生看護部 8国立保健医療科学院技術評価部 9お茶の水女子大学子ども発育教育研究センター 10長寿科学振興財団
ページ範囲:P.1303 - P.1311
文献概要
「健やか親子21」が発表され1),より効果的な母子保健のありようについて議論が重ねられている.妊娠,出産については,「安全性と快適さの確保」が主要な課題であり,「妊娠出産に満足する」女性の割合が2010年には100%になることが取り組み目標の1つとなっている.しかし,「快適な出産」「満足のいくお産」とはどういうことか,国際的にもはっきり定義づけはされていない.
近年では,妊娠・出産にかかわるヘルス・サービスの質を評価する試みとして,出産に対する「満足感」が用いられ,「満足度」といった指標がよく利用されている2~8).しかし,長くお産にかかわっている助産,産科医によると,豊かな出産経験をした女性は,子育てもスムーズであり,自分自身や,子供の体のありようにもより自信を持つようになり,自律的な家族関係への働きかけがみられ,また次の妊娠,出産に対して積極的な態度をとることが多いという9).これは,出産は単に「満足,快適」のみでは測りきれない,心身双方の大きな変革のきっかけになり得ることを示していると思われる.すなわち「満足度」のみではない本質的な身体経験を測定する必要があると考えた.
本研究では,出産経験を女性が心身ともに変革するきっかけになり得るような重要なライフイベントとして捉える.そして,変革につながるような豊かな出産経験をtransforming birth experience(以下,TBEと表記する)とし,実際にどのような出産経験がTBEになり得るのか定義付けをすることを目指す.本研究では,身体に向き合うような出産経験をした女性の手記,ケア提供者との議論などをもとに,TBEを定義する尺度を作成し,その標準化を試みた.
参考文献
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