文献詳細
今月の臨床 妊娠中の偶発症候─産科医のプライマリケア
症候への産科プライマリケア
3. 咳嗽・喀痰
著者: 髙木耕一郎1 佐藤真之介1 真井英臣1 倉田章子1 村岡光恵1
所属機関: 1東京女子医科大学東医療センター産婦人科
ページ範囲:P.1273 - P.1275
文献概要
咳は気道の副交感神経が分布している部分に刺激が加わった場合に起こる.咳を生ずる刺激を受けやすい部分には,気管分岐部,喉頭など,呼吸に伴う気流による刺激を受けやすい部分とされている.気道以外にも髄膜,鼓膜,外耳道の疾患でも副交感神経刺激により咳を伴うことがある.妊娠が呼吸器系に及ぼす影響には,妊娠子宮による横隔膜の挙上,胸郭横径の増大,動脈血二酸化炭素分圧の低下などが挙げられるが,肺活量,呼吸数などにはほとんど変化がないとされている.咳・喀痰との関連で重要なことは,妊娠により正常妊婦でも呼吸困難を訴えることであろう.程度の軽いものも含めると,呼吸困難の訴えは7割にも及ぶといわれている.その原因は妊娠に伴うプロゲステロンの増加が呼吸中枢を刺激するためと考えられている.咳・喀痰の随伴症状として,呼吸困難の有無は重要であるが,生理的な呼吸困難である可能性を念頭に置いておく必要がある.
参考文献
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