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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科60巻12号

2006年12月発行

雑誌目次

今月の臨床 ピル─エビデンスに基づいて新ガイドラインを読み解く

新ガイドラインで何がかわったのか

著者: 武谷雄二

ページ範囲:P.1437 - P.1439

はじめに

 1999年,わが国において諸外国より大幅に遅れ低用量経口避妊薬(oral contraceptives : 以下OC)が承認された.特に欧米でのOCの認可より実に40年を経ていた.この理由として性ホルモン製剤による静脈血栓症などの副作用,性道徳の乱れ,HIVに代表される性感染症の蔓延などの懸念が挙げられる.これらの反対意見が表明されている状況下でOCの承認を得るために,その承認の前提として世界に例をみないほど厳しいOC処方のガイドラインが制定された.

 しかし当初のガイドラインは,(1)OC服用者に特別に必要とされる検査以外のものが含まれていたこと,(2)必ずしもOCに関するエビデンスに立脚していない,(3)ガイドラインに盛り込まれている諸検査をすべて実施するときわめて高額な検査料を請求され,OCの使用を著しく困難にしたという問題点があった.

 OCの承認後7年経過した現在,特に日本人特有の副作用は報告されず,むしろ欧米人と比較し血栓症の頻度は格段に低いことが示された.一方,本邦においては特に若年者の人工妊娠中絶数は先進諸国のなかではひときわ高く,確実な避妊法の普及が望まれている.さらに,OCを継続して処方していく過程で定期的に女性のヘルスケアの管理が可能となり,OCを必要としながら処方に際しての厳しいチェック事項ゆえにOCを使用できず,適切なヘルスケアを受けられない女性が増加することは,リプロダクティブヘルスの観点からも由々しい問題といえる.このような背景に鑑み,わが国特有のOCガイドラインをWHOの見解を十分に考慮し,かつエビデンスに依拠したより論理的,合理的なものに改変したのが新しいガイドラインである.

服薬指導

著者: 北村邦夫

ページ範囲:P.1441 - P.1446

はじめに

 2006年2月1日,(社)日本産科婦人科学会は,1999年9月の発売以来懸案であった「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」の改訂版を発表した1).EBMを重視し,煩雑であった経口避妊薬(oral contraceptives : 以下,OC)処方前の諸検査を簡素化するだけでなく,服用法についても具体的な基準を示している.これをもってOC処方は漸く世界の仲間入りができたともいえる.

 このガイドラインに基づいたOC服薬指導の在り方に話題を絞りながら,本稿をまとめることとしたい.

ピルの副作用と新ガイドライン

1.血栓症 1)ピルと血栓症

著者: 福原理恵 ,   水沼英樹

ページ範囲:P.1448 - P.1453

はじめに

 ピルの重篤な副作用の1つとして,血栓症がある.本邦女性においてはその発症率は実際低いものの,ピルが健常女性に投与される薬剤であることを考慮すると,その安全性についてはより注意すべきであると思われる.血栓症は深部静脈血栓症(deep venous thrombosis : DVT),肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)などの静脈血栓と心筋梗塞,脳梗塞などの動脈血栓からなるが,本稿では主に静脈血栓とピルとの関連について述べる.DVTとそれに起因して起こることが多いとされるPTEを総称して,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)と呼んでいる.

 ピルは1960年に世界で初めてFDAにより承認されているが,その翌年1961年には早くもJordanらによりピル服用者での血栓症の合併症が報告されている.その後,ピル服用とVTEに関して多くの疫学的調査や臨床的に凝固学的検討がなされてきた.ピルのエストロゲン含量が多いほど,VTEのリスクも上昇することが報告1)され,その結果,FDAは1970年にエストロゲン含量を50μmg以下に抑えるよう勧告を出すに至っている.その後,ピルのエストロゲン含量は低用量化され,それに伴い,VTEの発症率は減少している.また,プロゲスチンの改良もなされ,第一世代のnoreth isteroneのグループから第二世代のnorgestrel,第三世代のdesogestrelおよびgestodeneのグループへと改良がなされたが,このプロゲスチンの違いによるVTEの発症に関しては,次項を参照されたい.

1.血栓症 2)ピルの種類と血栓症のリスク―第3世代のピルはより危険なのか

著者: 大久保智治 ,   本庄英雄

ページ範囲:P.1454 - P.1457

はじめに

 ピルは健康な女性が長期間服用することから,副作用として含有するエストロゲンとプロゲストーゲンに起因する4つの心血管疾患,すなわち静脈血栓塞栓症,心筋梗塞などの虚血性心疾患,脳卒中などの脳血管障害,高血圧症などが問題とされ,その対策としてエストロゲン含有量の低用量化,新規プロゲストーゲンの開発や投薬法の工夫が進められてきた.1970年代にはエストロゲンの用量を50 mg未満とした第二世代(低用量ピル)が開発され,プロゲストーゲンも月経周期のパターンに近い二相性および三相性投与法が行われるようになった.ついで1980年代半ばには,男性ホルモン作用の少ないプロゲストーゲン(デソゲストレル,ゲストデン,ノルゲスチメート)を用い,きわめてホルモン含有量の少ない一相性ピルが第三世代として登場している.日本でもようやく低用量ピルが認可されたが,副作用としての心血管疾患発症の危険率は,加齢および喫煙量の増加と平行して高まることが明らかになっており,35歳以上でヘビースモーカーの女性ではピルの服用を回避すべきとされている.

 本稿では,ピルによる心血管疾患発症,特に血栓症に関し,その機序,さらに世代間における血栓症に対するリスクの相違と最近の知見を述べたい.

2.動脈系疾患 ピルと心筋梗塞

著者: 西森左和 ,   林和俊 ,   深谷孝夫

ページ範囲:P.1458 - P.1461

はじめに

 これまでエストロゲンの抗動脈硬化作用を示す数多くの基礎データが報告されてきたが,近年,閉経後女性にホルモン補充療法(HRT)を行っても心筋梗塞の発症が減少しないことが明らかにされた.この背景には患者の合併症による危険因子の存在があり,ピルを処方する際にも注意が喚起される.

3.肥満

著者: 阿部亜紀子 ,   刑部光正 ,   倉智博久

ページ範囲:P.1462 - P.1465

はじめに

 日本でも低用量ピルが発売されて7年が経とうとしているが,諸外国に比べ使用率はまだまだ低い.種々の原因が考えられるが,日本人のピルに対する間違った知識がピル普及を遅らせる1つの要因になっていると考える.特にピルと体重増加に関してはさまざまな俗説が流れ,ピルを飲むと太るというイメージが多くの女性に信じられている.今回はピルと体重増加に関するコクランのレビューを総括し,ピルと体重の変化についてエビデンスにもとづいて考察する.

ピルの副効用(利点)と新ガイドライン─エビデンスに基づく解説

1.現代女性のライフスタイルとピルの効用

著者: 対馬ルリ子

ページ範囲:P.1467 - P.1473

はじめに

 ピルは,「女性が自分で簡単に使える確実な避妊法」を求め続けたマーガレット・サンガーの情熱と,キャサリン・マコーミックの資金と,研究者と,臨床試験に協力した大勢の女性たちの共同作業によって1960年に誕生した,世界では,膨大な研究によって低用量化される一方,教育やカウンセリングによって,正しい情報に基づいて女性が自分で選択するための医療体制が整備されてきた.

 わが国でも,1999年の認可・発売以降,これまで誤解や偏見が多かったピルについて,利点を積極的に情報提供し,より使用しやすい環境を提供しようとする努力が始まっている.その一端がガイドラインの改訂であろう.

 20世紀最大の科学的発明とも,世界を変えたとすらいわれる経口避妊薬(ピル=OC)が,ようやくわが国の女性のQOL(生活の質)向上にも役立てられる時代がそこまできている.

2.月経痛,過多月経

著者: 中村元一 ,   江頭活子 ,   江上りか

ページ範囲:P.1474 - P.1477

はじめに

 低用量ピルの普及が日本では異常に遅れており,その原因として,一般の人への啓蒙が進んでいない,処方に際して検査が多すぎる,その結果経済的負担が増える,ホルモン剤に対する日本人のアレルギーなどがいわれていた.しかし,平成17年12月に日本産科婦人科学会が発表した低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)では,処方前の検査に関して大幅な見直しがされ,血圧測定と,十分な問診のみで処方が可能となった.また,この改訂版ではエビデンスに基づく,さまざまな副効用(利点)についても述べられており,低用量ピルの普及に加速がつくことが期待される.

 そこで本稿では,低用量ピルの副効用(利点)のなかで月経痛と過多月経について考察する.

3.多毛,にきび

著者: 坂田正博

ページ範囲:P.1478 - P.1481

はじめに

 平成17年12月に低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)が日本産科婦人科学会編として発表された.そのなかにも,ピルの副効用(利点)として11頁に尋常性痤瘡(にきび)について,「小規模な無作為試験では,ピルの使用によって痤瘡病変が有意に軽減することが報告されている」との記載がある.また,逆にピルの副作用として,同ガイドライン9頁の表5にピルの副作用頻度として,にきびが0.1~2.9%との記載がある.本稿では,「ピル─エビデンスに基づいて新ガイドラインを読み解く」という特集のもとに,ピルの副効用(利点)の多毛,にきびの解説を行う.

 男性ホルモンであるアンドロゲンは,卵巣と副腎で産生され,その過剰産生は,多毛,にきび(尋常性痤瘡),無月経,男性化徴候を呈する.そのなかでも,多毛がアンドロゲン過剰の場合に最初に出現する症状である.

4.機能性卵巣嚢胞,良性卵巣腫瘤

著者: 綾部琢哉

ページ範囲:P.1482 - P.1485

機能性卵巣嚢胞

 1. 機能性卵巣嚢胞とは

 成熟卵胞の卵胞壁が破裂せずに卵胞が残存したものを卵胞嚢胞,嚢胞化した黄体を黄体嚢胞と呼び,新生物ではないため,機能性卵巣嚢胞と総称される.慣習上,直径30 mm以上に達したものを病的と定義している例が多いが,20 mm以上のものを検討の対象としている文献もある.

 アメリカにおいて1976年から1986年の間に,機能性卵巣嚢胞により入院を要した15歳から44歳までの女性の1年間当たりの推測値は,10万人当たり472~522人で,30歳代,40歳代の女性のほうが10歳代,20歳代の女性よりも頻度が高いという1)

5.PID

著者: 石橋智子 ,   久保田俊郎

ページ範囲:P.1487 - P.1491

はじめに

 骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こす病原体はさまざまであるが,なかでも近年は性感染症(STD)の拡大が注目されている.一方,低用量ピル(OC)は避妊のために使用されるものであり,STDの予防や治療には無効であること,コンドームを使用しないとSTDに対する予防効果がないことを,OC服用患者に十分に説明することが重要である.OC使用によりコンドーが使用されなくなり,STDの蔓延が危惧されているが,わが国においてはOCの服用を希望する場合には必ず医師を訪ねるわけであり,その際,STDの早期発見・治療が可能になるだけでなく,コンドームの使用法を学ぶ格好の機会となる.

6.月経前症候群

著者: 白土なほ子 ,   長塚正晃 ,   千葉博 ,   木村武彦 ,   岡井崇

ページ範囲:P.1492 - P.1499

はじめに

 欧米に遅れること40年,1999年に日本でも低用量ピル(low oral contraceptives:LOC)が認可された.それから6年,理想的なLOC処方の条件をかかげた旧ガイドラインが利用されていたが,このたびWHO(世界保健機関)発行の“「OC処方のための医学適応基準」2004年”に準じ,問診,血圧測定の継続や定期健診の必要性,EBM(evidence-based medicine)に基づいた検査手順,また禁忌例を見逃さないためのチェックシートなどが盛り込まれた新ガイドラインが発行された.この新ガイドラインではLOCの副効用についても詳しく述べられている.実際,LOCを処方される人のうち,避妊のために服用開始するものは2割程度で,OC開始理由の7~8割は副効用(利点)を期待してである.副効用の項目では月経困難症,子宮内膜症,卵巣癌,子宮体癌,骨粗鬆症などの項目のほかに,ほかの良性疾患という項目で月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)と心因的障害の管理についても明記されている.

 本稿では,PMSとOCについて文献的に考察するとともに,月経周辺期の症状を客観的に評価しながら行っている当院月経相談外来における現状を報告する.

ピルとがん

著者: 玉舎輝彦

ページ範囲:P.1501 - P.1505

はじめに1)

 ピル(経口避妊薬)は,1960年に米国で初めて市場に出るが,当時は避妊効果発現機構や副作用の詳細が現在ほど明らかではなく,排卵抑制を確実にし,服用中の破綻出血や無月経の出現をなくすために,性ステロイド剤(エストロゲン+黄体ホルモン剤)の含量の多いものが用いられた.その結果,2/3は悪心,嘔吐の副作用のため中断した.また副作用が明らかとなり,強力な新しい合成ステロイド剤が開発され,1964年には含量の少ないピルが作られた(中用量ピル).エストロゲンとしてメストラノールはエチニルエストラジオール(EE2)へ代謝され作用し,黄体ホルモン剤にはノルエチンドロンに代謝され作用するものもあり,これらの代謝に個人差(効果差)が生じる.また,エストロゲンや黄体ホルモン剤は血栓性塞栓症のリスクがあるため,日本では1996年以降,エストロゲンとしてEE2,黄体ホルモン剤としてプロトタイプや新規開発したものを用い,含量を減らし,1~3相性の排卵抑制や月経出現を確実にした低用量ピルが市場に出た.

 ピルは,エストロゲンは含量を相対的に多くすると子宮内膜を増殖させ月経過多にするため,用量を少なくし,黄体ホルモン剤(抗エストロゲン剤)の作用を相対的優位にするように作られている.そのため,エストロゲン作用(細胞増殖)に対しては抑制的であり,残りは黄体ホルモン剤の作用とその構造に由来するアンドロゲン作用(微量)が出現する可能性がある.そのため,エストロゲンにより増殖性の強い子宮内膜,多くの因子により細胞増殖・分化をコントロールされる乳腺や肝細胞・子宮頸部腺上皮・下垂体前葉,そのほかに子宮筋や子宮頸部扁平上皮,またピルによる排卵抑制が起こる卵巣があり,エストロゲンや黄体ホルモンのレセプター機序の存在とも関係し,ピルの癌への作用が異なる.

 ピルに使用されるステロイド剤,特にエストロゲンは癌のイニシエイターでなく,プロモーターと考えられ,あるとするなら,腫瘍効果は使用期間と関係し,用量依存性である.

 ピルは40年以上使用され,前方視的,後方視的に疫学調査が腫瘍発生との関係においてなされてきた.生殖期初期にピルを服用した高齢女性はまだいないので,調査は60歳以下の女性に限られることになる.日本でのピル服用者は少なく,避妊のためのピル服用者は対象の数%に過ぎず,十分な疫学調査が行われず,ピル使用頻度の高い諸外国の調査の総説2)を参考にせざるを得ない現状がある.

連載 産婦人科エコー 何を考えるか?・11

無脳症児の頭部像

著者: 竹内久彌

ページ範囲:P.1433 - P.1435

 妊娠14週4日の妊婦健診で施行された超音波検査で胎児頭部の形態に異常が疑われるとして精検を依頼された症例である.健診では経腹超音波が使われていたが,ここには精検時の経腟超音波の画像を示した.胎児の頭部と体幹部が冠状断像で示されている.

 頭頂部に明らかな異常嚢胞構造(矢印)がみられたため,健診担当医は水頭症の存在を考えたという.しかし,この胎児が妊娠第1三半期にあることを前提に考えれば,この時期における水頭症の発症は知られていないので,むしろ頭部の発生異常を考慮すべきである.いたずらに形態異常にだけ目をうばわれるのでなく,発生学的・解剖学的な構造の基本を読み取ることが必要である.

BSTETRIC NEWS

羊水注入法は胎便吸引症候群を予防しない

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1507 - P.1509

 分娩中の羊水注入法が臨床的に多用されてきたのは1990年前後からで,特に南カリフォルニア大学(USC)は膨大な症例数で数々の羊水注入法の利点を紹介してきた.

 現在までに発表され使われてきた羊水注入法の主な適応は,(1)分娩中に出現した臍帯圧胎児心拍数パターンの治療,(2)羊水過少症が判明している例での分娩中の予防的羊水注入法,(3)分娩中で胎便による羊水汚染(MSAF)がある際の胎便吸引症候群(MAS)予防のため,(4)特殊例として,満期前破水の分娩中の胎児心拍数悪化を予防するための羊水注入法などである.これらのなかには,有効性にいくつかの疑問が投げかけられてきた適応もある(表1).

病院めぐり

―愛知県厚生連―昭和病院

著者: 池内政弘

ページ範囲:P.1510 - P.1510

〈病院の歩み〉

 当院は昭和11年11月に開院しました.当初は内科・外科・眼科の3診療科で,蒸気暖房,配水,消火栓などの諸設備は当時の地方病院の水準を越え,病室も個室20室,共同病室男女各1室と現代の個室志向を先取りしており,総工費は4万円と記載されています.昭和23年には小児科・産婦人科・耳鼻科・歯科を加え7診療科を持つことになりました.昭和33年3月に火災発生,全館が消失しました.仮設診療所にて再建,野戦病院のごとき有様で診療に臨んだと記載されています.翌34年10月に愛知県厚生連初の鉄筋コンクリート造り,病床数199床の近代的病院として再建されました.昭和44年には11診療科に増え,総合病院の承認を受けました.その後,順次増床,平成9年6月には401床となりました.

 なお,当院は近隣の兄弟病院である愛北病院と合併し,平成20年5月に開院予定で新病院が建築進行中です.完成すると敷地面積約82,000m2,建築延べ床面積約60,000m2,病床数678床と一段とスケールアップし,高度・専門医療を提供できる地域中核病院として発展します.

大和徳洲会病院

著者: 石川哲也

ページ範囲:P.1511 - P.1511

 大和徳洲会病院は,神奈川県のほぼ中央の大和市に位置し,小田急線と相鉄線が交差している大和駅から徒歩5分のところにあり,ベッド数267床,21の診療科を有する中規模病院です.平成16年7月に日本医療機能評価機構認定病院の指定を受けました.ベッド数300床以下でありながら全国で2番目に厚生労働省・臨床研修指定病院に認可され,日本産科婦人科学会・専門医研修指定病院にも認可されています(http://www.yth.or.jp/).

 産婦人科外来には1日平均約60人の受診があり,月曜日から土曜日まで2診に分かれて常勤医3名(産婦人科専門医),非常勤医2名で交代し診療を担当しています.本年4月より患者サービス向上の一環として外来患者さんの待ち時間を短縮すべくオーダリングシステムを導入しました.

もうひとつのインドネシア―セックスワーカーを通してみたリプロダクティブヘルス・3

妊産婦死亡と身近な死

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.1512 - P.1513

身近な妊産婦死亡

 妊産婦死亡が出生10万対230のインドネシアにおいて妊産婦死亡は珍しくない.私が活動していた9か月間に知り得ただけでも,数人のセックス・ワーカーが分娩後に死亡した.

 売春地域でセックス・ワーカーのなかに妊婦をみつけることは難しいことではない.マタニティワンピースに身を包み,大きなお腹をかかえて客を引く姿にはじめは言葉を失った.しかし,間もなく見慣れた光景になり,妊婦検診を受けているか,どこで受けているかを聞き,定期検診をすすめることが自分の役割だと思えるようになった.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・16

癒着胎盤が疑われた前回帝王切開の1例

著者: 國重浩二 ,   砂原昭一 ,   清水篤 ,   佐々木茂

ページ範囲:P.1516 - P.1517

症例

 患者 : 38歳,主婦.1経妊・1経産

 既往歴 : 24歳時に帝王切開(適応 : 骨盤位)

 現病歴 : 最終月経9月9日から2日間にて妊娠成立.10月24日(妊娠6週3日)に性器出血を主訴に当科を初診した.子宮内に胎嚢を,またその胎嚢内に5.9 mmの胎児および胎児心拍を認めた.その後の妊娠経過は順調で,また前回帝王切開であったため5月31日に選択的帝王切開術を予定していたが,5月27日の最後の妊婦検診時,経腹超音波にて子宮前壁の胎盤下端が前回帝王切開創にかかっており,癒着胎盤の可能性が疑われたため,5月30日の入院日に骨盤MRI検査をすることとなった.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・17

卵巣の嚢胞性腫瘍あるいは卵管水腫と見誤った回盲部腫瘍の1例

著者: 佐々木茂 ,   名取穣治 ,   清水篤 ,   國重浩二 ,   砂原昭一

ページ範囲:P.1519 - P.1521

症例

 患者 : 17歳,学生.未経妊,初経13歳,月経周期不整

 主訴 : 内科より卵巣腫瘍疑いにて当科に紹介され受診となる.

 既往歴 : アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎,気管支喘息,腎性糖尿

 現病歴 : 最終月経は4月10日から7日間,2週間前から嘔気,心窩部痛があり5月15日に当院内科に受診した.内科で施行した腹部超音波検査にて右下腹部に長径7.2 cm大の卵巣嚢腫および少量の腹水を認めたため,翌日の5月16日に当科に紹介され受診した.

 現症 : 外診上,腹部に腫瘤を触知せず.外陰部に異常所見を認めない.直腸診で子宮は前傾前屈,大きさは正常,右付属器に鵞卵大の嚢腫状腫瘤を触知した.左付属器は触知せず.経直腸超音波検査で右卵巣は5.2×4.4 cm大の嚢胞性腫瘤像を示し,左卵巣は正常所見であった(図1).また,Douglas窩に腹水を少量認めた.右嚢胞性卵巣腫瘍の診断のもとに腫瘍マーカーを検査し,MRI検査を予約した.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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