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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科60巻12号

2006年12月発行

今月の臨床 ピル─エビデンスに基づいて新ガイドラインを読み解く

新ガイドラインで何がかわったのか

著者: 武谷雄二1

所属機関: 1東京大学医学部産婦人科学教室

ページ範囲:P.1437 - P.1439

文献概要

はじめに

 1999年,わが国において諸外国より大幅に遅れ低用量経口避妊薬(oral contraceptives : 以下OC)が承認された.特に欧米でのOCの認可より実に40年を経ていた.この理由として性ホルモン製剤による静脈血栓症などの副作用,性道徳の乱れ,HIVに代表される性感染症の蔓延などの懸念が挙げられる.これらの反対意見が表明されている状況下でOCの承認を得るために,その承認の前提として世界に例をみないほど厳しいOC処方のガイドラインが制定された.

 しかし当初のガイドラインは,(1)OC服用者に特別に必要とされる検査以外のものが含まれていたこと,(2)必ずしもOCに関するエビデンスに立脚していない,(3)ガイドラインに盛り込まれている諸検査をすべて実施するときわめて高額な検査料を請求され,OCの使用を著しく困難にしたという問題点があった.

 OCの承認後7年経過した現在,特に日本人特有の副作用は報告されず,むしろ欧米人と比較し血栓症の頻度は格段に低いことが示された.一方,本邦においては特に若年者の人工妊娠中絶数は先進諸国のなかではひときわ高く,確実な避妊法の普及が望まれている.さらに,OCを継続して処方していく過程で定期的に女性のヘルスケアの管理が可能となり,OCを必要としながら処方に際しての厳しいチェック事項ゆえにOCを使用できず,適切なヘルスケアを受けられない女性が増加することは,リプロダクティブヘルスの観点からも由々しい問題といえる.このような背景に鑑み,わが国特有のOCガイドラインをWHOの見解を十分に考慮し,かつエビデンスに依拠したより論理的,合理的なものに改変したのが新しいガイドラインである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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