icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科60巻3号

2006年03月発行

今月の臨床 妊婦と胎児の栄養管理

妊娠中の栄養代謝

妊婦の栄養代謝

著者: 江口勝人1

所属機関: 1岡山中央病院産婦人科

ページ範囲:P.234 - P.237

文献概要

はじめに

 280日という,比較的短期間に成長・発育を遂げる胎児を体内で養育する母体には,特有な代謝適応がみられる.つまり,胎児の発育というベクトルに向けて,各栄養素のみならずホルモン,免疫などが有機的かつ合目的な代謝相関を形成する.これらの要素のすべてが重要であることは論を俟たないが,胎児は母体のdependent parasiteであるという概念から,特に母体の栄養摂取(質と量)が基本的事項となる.

 しかるに,最近妊婦を取り巻く社会環境が急激に変化してきたことは周知のとおりである.国民の健康への関心は強まる一方で,食品の国際化(輸入食品),多様化(外国料理),簡便化(インスタント食品)などが進んで社会問題化している1).また,妊婦は金目鯛の摂取を制限するように(水銀汚染から)という,先般の厚生労働省の警告などにみられるように,環境汚染による健康被害も指摘されている.

 つまり,妊婦のみならず老人から小児まで幅広い層で食事のライフスタイルが変化して,加工食品利用の増加(外食産業),偏食,過食などから肥満,高血圧,高脂血症,糖尿病などの生活習慣病が増加しつつあり,重大な国民病となっている.食品添加物や防腐剤が母児の健康に及ぼす影響についても未解決のままである.狂牛病の問題も然りである.

 妊婦の栄養代謝の基本は今も昔もそれほど変わっていないが,本稿ではなるべく基本的な事項について述べたい.

参考文献

1)江口勝人 : 妊婦の栄養管理と中毒食.臨婦産55 : 148─151, 2001
2)須川 佶 : 妊産婦における代謝の特徴.産婦人科シリーズ,妊産婦栄養管理のすべて(須川佶編集).南江堂,pp5─13, 1979
3)江口勝人 : 胎児,新生児の栄養の発達.周産期学Symposium 10.メジカルビュー社,pp47─57, 1993
4)望月眞人 : 胎盤系ホルモンの代謝調整作用.産婦人科シリーズ,妊産婦栄養管理のすべて(須川佶編集).南江堂,pp105─125, 1979
5)望月眞人 : IUGR ; 病因と病態.周産期学Symposium 7.メジカルビュー社,pp8─11, 1989
6)福井靖典 : 母児相関よりみた胎児発育に関する研究.第22回日産婦宿題報告要旨,1977
7)江口勝人 : 小児期の栄養学的特性.胎児,新小児医学大系.第3巻B,小児栄養学II(小林 登・楠 智一・松田一郎編).中山書店,pp81─102, 1986
8)江口勝人,他 : 胎児・新生児のアミノ酸代謝に関する基礎的研究.日本新生児学会誌17 : 147─155, 1981
9)Eguchi K, et al : Developmental changes of glutamate dehydrogenase activity in rat liver mitochondria and its enhancement by branched chain amino acids. Biol Neonate 62 : 83─88, 1992
10)江口勝人 : 妊婦における水血症と血液レオロジーの臨床.産婦人科治療66 : 209─218, 1993
11)江口勝人,他 : 血液希釈障害.産婦人科の世界44 : 623─631, 1992
12)江口勝人 : 妊婦における水血症の成因.産婦人科治療66 : 1024─1030, 1993

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら