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今月の臨床 女性診療科外来プラクティス II 腫瘍外来 1. 腫瘍外来の検査
2) コルポスコピー,コルポ下狙い生検
著者: 平沢晃1 片岡史夫1 青木大輔1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部産婦人科
ページ範囲:P.369 - P.375
文献購入ページに移動コルポスコピー(腟拡大鏡診 : colposcopy)とはコルポスコープ(腟拡大鏡)を用い,子宮腟部のびらんや腟壁病変の観察を行うことである.特に,頸部病変の範囲の把握や病変の推定診断,生検部位の確定にコルポスコピーは必要不可欠な検査である.近年の子宮頸がん検診の普及と子宮頸がんの罹患年齢の若年化により,今後,二次精検を必要とする患者が増加していくことが予測され,正確なコルポスコピーとそれに基づいた組織診の重要性はますます高くなると考えられる.
コルポスコピーは1925年にHinsenlmannによって開発された.彼はさらに光源やレンズなど機器の改良を行い,1938年には酢酸加工法を考案して今日の検査法の礎を築いた.その後グリーンフィルターの使用や単眼式から双眼式への改良,さらにはコルポスコピー所見に関する研究が進められ,子宮頸部病変の早期診断法の一翼を担うに至った.
本邦では1950年ごろより安藤,増渕らによって研究が始まった.その後,栗原や平井の業績に加え,子宮がん検診の普及に伴い重要視されてきた1).1975年には第1回日本コルポスコピー研究会が発足し,その後,同研究会を母体とした組織は幾度かの発展的に改組を経たのち1998年に日本婦人科腫瘍学会になり現在に至っているが,この間,コルポスコピーの研究と普及に大きく貢献してきた.
コルポスコピー所見の捉え方に関する国際分類も変遷を経てきている.1965年にはグラーツで行われた国際子宮頸部病理・コルポスコピー学会(International Federation for Cervical Pathology and Colposcopy : IFCPC)にてcolposcopic nomenclatureが採択された.本邦においては当時の日本コルポスコピー研究会で検討され,IFCPC分類をもとに多少の見解が加えられた分類が作成され実地臨床で用いられてきた.2002年にはバルセロナで第11回IFCPCが開催され,新国際所見分類(バルセロナ分類)が採択された.そこで,日本婦人科腫瘍学会はこれに対応して新分類を作成し,そのなかでバルセロナ分類をそのまま採用せず,本邦で混乱なく受け入れ可能な分類とした.以下に,バルセロナ分類との相違点を要約する.
(1) HPV所見を採択しない.
(2) Gradingは腺開口を含めた白色上皮,モザイク,赤点斑について記載する.
(3) 白斑は異常所見に採用する.
(4) ヨード塗布試験とdeciduosisは採用しない.
(5) Atypical vesselはgradingしない.
本稿ではコルポスコピー修得を目指すための基礎的知識を中心に述べるが,特に所見の実際については「新コルポスコピースタンダードアトラス : 日本婦人科腫瘍学会2005」2)も参考にされたい.
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