文献詳細
今月の臨床 女性診療科外来プラクティス
IV 不妊・避妊・不育症外来
文献概要
1 不妊症における子宮因子と卵管因子とは
生殖において,子宮および卵管が重要な役割を担っていることは万人の認めるところである.発生学的にも同一のミュラー氏管由来であり1),その役割も連続的であるが,その機能を表1に要約した.まず生殖の初期の段階で,精子は腟から卵管へ移動することが必要である.その際,子宮は単なる通り道としてではなく,腟円蓋部を頸管粘液で覆い,精子を子宮頸管内へ誘導し,精子の「旅」をサポートしている.精子は,子宮内膜の子宮内液を通過後,卵管の線毛を遡上して,卵管内膜から卵管内液の種々の物質を介してサポートされ,受精能を獲得する.排卵された成熟卵は,卵管采が捕捉し,卵管膨大部で受精する.受精卵は,卵管を子宮に向かって輸送されながら卵割を繰り返す.さらに子宮は,卵管から到来した接合子(zygote)をその腔内に数日間保持したのち,最適条件に整えられた子宮内膜へ接合子を受け入れ,着床を完成させる.着床の後は,外界から胎芽/胎児(embryo/fetus)を保護し,分娩までの期間はその生育の場として機能する.以上の機能に起因する不妊症であれば,子宮性または卵管性不妊ということになる.したがって,これらの機能を総合的に評価するために,表2に列記した検査が施行される.不妊症の系統的ルーチン検査については別項で解説されているが,そのなかで表2に列記されたものが本稿の主題に関連する検査である.
また本稿は,表2の検査から明らかとなった子宮および卵管の器質的疾患の不妊症としての病因・病態,診断,治療について解説がすることが趣旨である.すなわち,例えば黄体機能不全で代表される子宮(内膜)の機能異常については,子宮性不妊というよりもむしろ内分泌異常として取り扱われることが一般的である.したがって本稿では,子宮および卵管の器質的疾患について焦点を絞り解説する.
生殖において,子宮および卵管が重要な役割を担っていることは万人の認めるところである.発生学的にも同一のミュラー氏管由来であり1),その役割も連続的であるが,その機能を表1に要約した.まず生殖の初期の段階で,精子は腟から卵管へ移動することが必要である.その際,子宮は単なる通り道としてではなく,腟円蓋部を頸管粘液で覆い,精子を子宮頸管内へ誘導し,精子の「旅」をサポートしている.精子は,子宮内膜の子宮内液を通過後,卵管の線毛を遡上して,卵管内膜から卵管内液の種々の物質を介してサポートされ,受精能を獲得する.排卵された成熟卵は,卵管采が捕捉し,卵管膨大部で受精する.受精卵は,卵管を子宮に向かって輸送されながら卵割を繰り返す.さらに子宮は,卵管から到来した接合子(zygote)をその腔内に数日間保持したのち,最適条件に整えられた子宮内膜へ接合子を受け入れ,着床を完成させる.着床の後は,外界から胎芽/胎児(embryo/fetus)を保護し,分娩までの期間はその生育の場として機能する.以上の機能に起因する不妊症であれば,子宮性または卵管性不妊ということになる.したがって,これらの機能を総合的に評価するために,表2に列記した検査が施行される.不妊症の系統的ルーチン検査については別項で解説されているが,そのなかで表2に列記されたものが本稿の主題に関連する検査である.
また本稿は,表2の検査から明らかとなった子宮および卵管の器質的疾患の不妊症としての病因・病態,診断,治療について解説がすることが趣旨である.すなわち,例えば黄体機能不全で代表される子宮(内膜)の機能異常については,子宮性不妊というよりもむしろ内分泌異常として取り扱われることが一般的である.したがって本稿では,子宮および卵管の器質的疾患について焦点を絞り解説する.
参考文献
1)The American Fertility Society : The American Fertility Society classification of adnexaladhesions, distaltubalocclusion secondary to tubal ligation, tubalpregnancies. Mullerian anomalies and intrauterine adhesions. Fertil Steri 140 : 944─955, 1988
2)新本 弘,井戸邦雄,角毅一郎,他 : カテーテルによる卵管再開通術─バルーンカテーテルを用いた経験を含んで.日本医学放射線学会雑誌51 : 143─148, 1991
3)Jarcho J : Malformation of the uerus. Am J Surg 71 : 106─110, 1946
4)Strassmann P : Die operative Vereingung eines doppelten Uterus ; nebst Bemerkungen uber die Korrektur der sogennanten Verdoppelung des Genital Knales. Zentralbl Gynak(Leipz)31 : 1322─1325, 1907
5)Jones HWJr, et al : Double uerus as an etiological factor in repeated abortion. Am J Obstet Gynecol 65 : 325─329, 1953
6)Tompkins P : Comments on the bicornuate uterus and twinning. Surg Clin North Am 42 : 1049─1054, 1962
7)牧野恒久,他 : 子宮性不妊の治療〔星 和彦(編) : 図説産婦人科VIEW.生殖内分泌・不妊 : 不妊の臨床〕.メジカルビュー社,東京,pp96─103, 1998
8)Makino T : Comment on outcome of in vitro fertilization and embryo transfer in women with congenital uterine malformation. Am J Obstet Gynecol 177 : 486─488, 1997
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