臨床婦人科産科60巻5号

2006年05月発行

今月の臨床 早産─予防と対策

前期破水への対応

著者： 中井祐一郎¹ 山枡誠一¹ 橘大介¹ 西原里香¹ 岩永直子² 西尾順子² 今中基晴³ 石河修¹

所属機関： ¹大阪市立大学大学院医学研究科生殖発達医学大講座 ²泉大津市立病院産婦人科 ³大阪市立大学医学部看護学科

ページ範囲：P.766 - P.769

はじめに

　前期破水の管理は，その発症時期によって大きく分けられる．正期産期，もしくはそれに準じることができる35～36週以降とそれ以前の早期産期とでは，当然考え方も取り扱いも変わるのは明らかである．本稿では後者，すなわちpreterm premature rupture of membrane（pPROM）に限定して議論を進めることとする．

　pPROMの問題点は，生理的妊娠のあるべき姿である正期産期における経腟分娩というゴールへ至る過程に対する障害として発生する諸問題，すなわち子宮収縮によって発生する早期産，卵膜の破綻から進行する母児への細菌感染の影響，胎動に必要な空間の保持や臍帯への生理的緩衝に重要な羊水量の減少の影響が挙げられる．また，早期産によって発生する長期的問題としての児の発達に関する問題^1）や医療経済的視点^2）も忘れてはならない．

参考文献

1） 小林美智子 : 虐待発生の背景．周産期医学32 : 687─691, 2002

2） 茨　　聡，池ノ上克 : 在胎週数別にみた低出生体重児の医療費分析─妊娠中毒症から生まれた児との比較．産婦世界51 : 305─309, 1999

3） 中井祐一郎，今中基晴，荻田幸雄 : 産婦人科診療における再評価─破水検査におけるBTBの評価．産婦実際42 : 1375─1377, 1993

4） 徳島新聞．2005年9月14日号（http : ／／www.topics.or.jp／News／news2005091406.html）

5） 増山　寿，井下秀司，平松祐司 : 異常妊娠・合併症妊娠の管理─preterm PROM治療法の選択．産婦実際52 : 1841─1848, 2003

6） Mercer B, Miodovnik M, Thurnau G, et al : Antibiotic therapy for reduction of infant morbidity after preterm premature rupture of the membranes : A randomized control trial. JAMA 278 : 989─995, 1997

7） 松田義雄，中野仁雄，河野哲志，他 : 前期破水に対するampicillin予防投与の有効性に関する検討多施設共同によるprospective randomized study．日産婦誌53 : 743─750, 2001

8） Weiner CP, Renk K, Klugman M : The therapeutic efficiency and cost─effectiveness of aggressive tocolysis for premature labor associated with premature rupture of membranes. Am J obstet Gynecol 159 : 216─222, 1988

9） Christensen KK, Ingemarsson I, Leideman T, et al : Effect of ritodrine on labor after premature rupture of membranes. Obstet Gynecol 55 : 187─190, 1980

10） Harding JE, Pang J, Knight DB, et al : Do antenatal corticosteroids help in the setting of preterm rupture of membranes？Am J Obstet Gynecol 184 : 131─139, 2001

11） 斉藤　滋，佐々木泰，酒井正利，他 : 妊娠32週以前の前期破水に対する管理指針17年間の変遷と新生児予後．産婦世界55 : 9─15，2003

12） Mine M, Nishio J, Nakai Y, et al : Effects of umbilical arterial resistance on its arterial blood flow velocity waveforms. Acta Obstet Gynecol Scand 80 : 307─310, 2001