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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科60巻5号

2006年05月発行

文献概要

今月の臨床 早産─予防と対策

早産児の予後と問題点

著者: 埴田卓志1 松田直1 渡辺達也1 岡村州博1

所属機関: 1東北大学病院周産母子センター

ページ範囲:P.780 - P.783

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はじめに

 人工肺サーファクタントや高頻度人工換気を始めとする新生児集中治療の進歩により早産児の救命率が近年著しく向上したにもかかわらず,その予後に大きな影響を与えている脳室周囲白質軟化(periventricular leukomalacia : 以下,PVL)や慢性肺疾患(chronic lung disease : 以下,CLD)に対する予防戦略はいまだ確立したとはいいがたい.むしろ,成育限界に近い早産児の救命率上昇に伴ってPVLやCLDの発症率は増加傾向にあると考えられ,こうした合併症の管理はこれからの周産期医療を展望するうえで大きな課題となっている1, 2)

 一方,早産の主たる原因である絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis : 以下,CAM)が胎児に全身性炎症反応(fetal inflammatory response syndrome : 以下,FIRS)を引き起こし,これが出生後の早産児に合併するPVLやCLDの発症や重症化と密接に関連していることが知られている3).そのため,近年ではCAMを伴った切迫早産に対して児の予後を改善するために最適な娩出のタイミングを判断すべきであるという考え方が主流となってきている4).しかし,実際には娩出前にCAMやFIRSの進行度を正確に把握する方法が確立していないため,どのタイミングで娩出することが児の予後改善につながるのか,その判断に苦慮することも稀ではない.

 本稿では,このような問題に対してわれわれの施設で実施した臨床研究のデータを呈示し,CAMやFIRSと関連する新生児期の合併症の予防について論じたい.

参考文献

1) Volpe JJ : Cerebral white matter injury of the premature infant─More common than you think. Pediatr 112 : 176─180, 2003
2) Stahlman MT : Prevention of BPD. In : Bland RD, Coalson JJ(eds): Chronic Lung Disease in Early Infancy. New York, Marcel Dekker, pp367─376, 2000
3) Gomez R, Romero R, Ghezzi F, et al : The fetal inflammatory syndrome. Am J Obstet Gynecol 179 : 194─202, 1998
4) 平野秀人 : 絨毛膜羊膜炎における娩出のタイミング.周産期学シンポジウム22 : 31─38, 2004
5) Yoon BH, Romero R, Kim CJ, et al : Amniotic fluid interleukin─6 : a sensitive test for antenatal diagnosis of acute inflammatory lesions of preterm placenta and prediction of perinatal morbidity. Am J Obstet Gynecol 172 : 960─970, 1995
6) 斉藤昌利,松田 直,菅原準一,他 : ヒツジ胎仔において子宮内炎症が胎生期の脳室周囲白質軟化に与える影響の解析.日本周産期・新生児医学会雑誌41 : 300(抄録),2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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