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文献概要
今月の臨床 妊娠のリスク評価
妊娠リスクスコアリング
著者: 久保隆彦1 加藤有美1 川上香織1 種元智洋1
所属機関: 1国立成育医療センター周産期診療部産科
ページ範囲:P.948 - P.953
文献購入ページに移動最近のマスコミ,一般の妊婦インターネットサイトをみれば妊娠,分娩は生理現象であり,安全であるかのような印象を受ける.毎年妊産婦死亡は50~80人と先進国のなかでも最高の成績であるにもかかわらず,妊産婦死亡があることが理不尽であるかのような不満もある.本当に妊娠,分娩は安全なのだろうか.戦前の知恵ある女性家長はお嫁さんが妊娠すると,「お産をなめたらいかん.棺おけに片足突っ込んでいるようなもの」と注意を喚起したものであるが,いつのころからか「分娩の安全神話」なる根拠のない言葉が誕生した.
ユニセフが発表した2000年の全世界(開発途上国だけではなく日米の先進国も含んだ)の妊産婦死亡率は10万出生に400人であり,10年間で300に下げることがWHOの悲願である.この400(250人に1人)という数が妊娠・分娩の持つ本当の意味でのリスクといえる.わが国で換算すると,年間約4,000人の妊婦が生命の危険にさらされ,現在の日本の優れた周産期医療によりわずか約50人の妊産婦死亡にまで救命しているのである.
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