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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科60巻8号

2006年08月発行

文献概要

今月の臨床 婦人科がんを見逃さないために 婦人科がん早期診断の要点・問題点

1. 子宮頸部悪性腺腫を見逃さないために

著者: 梅咲直彦1 田中哲二1 田中和東1

所属機関: 1和歌山県立医科大学産婦人科

ページ範囲:P.1064 - P.1067

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はじめに

 Adenoma malignumはextremely well differentiated adenocarcinoma, minimal deviation adenocarcinomaとも呼ばれ,子宮頸部の高分化型腺腫の一亜型である.組織的には構造異型を伴う頸管腺が子宮頸部の深部まで浸潤像を示すものの,構成している細胞の異型性がきわめて乏しく,その結果細胞診などで異常を示すことが少なく診断に苦慮することが多い疾患である.また,子宮頸部腺癌の3%程度の発症頻度で,稀な疾患である.

 その予後は加来1)の文献的考察では2年の無病生存率が31%に過ぎず,通常の子宮頸部腺癌に比較し不良と報告している.一方,Hiraiら2)は5年無病生存率は83%と報告し,従来予後不良とされてきたのは早期発見が困難なためで,早期例では予後は良好と報告しており,予後成績に関しては一致した見解が得られていない.

 治療法としては広汎性子宮全摘術が行われる.また,臨床的特徴としてはPeutz─Jeghers syndrome(PJS)が約10%合併することが報告されている.

 本稿では,子宮頸部悪性腺腫を見逃さないための診断法について記述する.

参考文献

1)加来恒壽 : 症例から学ぶ婦人科腫瘍学1)子宮頸部病変Adenoma malignum悪性腺腫.日産婦誌57 : N─171─N─174,2005
2)Hirai Y, Takeshima N, Haga A, et al : A clinicocytopatholologic study of adenoma malignum of the cervix. Gynecol Oncol 70 : 219─23, 1998
3)梶谷耕二,市村友季,本田謙一,他 : 当科における子宮頸部悪性腺腫症例の検討.産婦進歩56 : 132─134,2004
4)Nanbu Y, Fujii S, Konishi I, et al : Immunohistochemical localization of CA 125, carcinoembryonic antigen and CA 19─9 in normal and neoplastic glandular cells of the uterine cervix. Cancer 62 : 2580─2588, 1988
5)石井恵子,岩原彩子,唐沢秀樹,他 : 異型のない黄色粘液細胞の出現が発見のきっかけとなった子宮頸部悪性腺腫の2例.日臨細39 : 99─103,2000
6)Umesaki N, Nakai Y, Honda K, et al : Power Doppler findings of adenoma malignum of uterine cervix. Gynecol Obstet Invest 45 : 213─216,1998
7)立岩 尚,小島淳美,山口 聡,他 : 子宮頸部悪性腺腫が疑われた18症例のMRI画像解析.産婦進歩56 : 119─121,2004
8)草刈孝史,万代昌紀,刈谷方俊,他 : 子宮頸部悪性腺腫の病態に関与する因子とその臨床診断への応用に対する検討.産婦進歩56 : 144─146,2004
9)榊原敦子,永野忠義,鈴木 瞭,他 : 悪性腺腫の鑑別診断と治療.産婦進歩56 : 122─124,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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