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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科60巻9号

2006年09月発行

今月の臨床 PCOS─新たな視点

PCOSの診断と治療

1.診断の進め方

著者: 杉野法広1

所属機関: 1山口大学大学院医学系研究科産科婦人科学

ページ範囲:P.1172 - P.1175

文献概要

はじめに

 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は,視床下部-下垂体-卵巣系の異常だけでなく,インスリン抵抗性,耐糖能異常,高アンドロゲン血症,副腎系の異常など多彩な病態を呈する症候群である.1つの異常をトリガーとしてすべての病態が引き起こされる機序を未だ説明できない複雑な疾患群である.さらに,診断基準のうえで,欧米のPCOSと本邦のPCOSとは合致しないこともあり,疾患概念に混乱を招いてきた経緯もある.欧米と本邦で診断基準が異なるのは,頻度が高い症状や検査所見が一致しないことが大きい原因の1つである.しかし,2003年に欧米の診断基準に卵巣における多数の卵胞の嚢胞状変化が取り入れられるようになり,違いはアンドロゲン過剰状態(hyperandrogenism)だけとなっている1).この高アンドロゲン血症もインスリン抵抗性による二次的なものであると指摘する報告もある.実際PCOSの治療において,インスリン抵抗性改善薬の有効性が報告され,PCOSの病態におけるインスリン抵抗性の関与も最近ますます重要視されてきている.

 PCOSの患者が,視床下部-下垂体-卵巣系の異常,インスリン抵抗性,耐糖能異常,高アンドロゲン血症,副腎系の異常のすべての病態を呈するとは限らない.診断基準にしたがい,単にPCOSと診断するのではなく,PCOSの診断に当っては,これら多彩な病態のなかでどの病態を呈しているかを把握することが以後の治療や管理を進めていくうえで重要である.

参考文献

1)The Rotterdam ESHRE/ASRM-sponsored PCOS consensus work shop:Revised 2003 consensus on diagnostic criteria and long-term health risks related to polycystic ovary syndrome(PCOS).Hum Reprod 19:41-47, 2004
2)生殖・内分泌委員会報告:本邦婦人における多嚢胞性卵巣症候群の診断基準設定に関する小委員会(平成2年度~平成4年度)検討結果報告.日産婦 45:1359-1367, 1993
3)Eagleson CA, et al:Polycystic ovarian syndrome:evidence that flutamide restores sensitivity of the gonadotropin-releasing hormone pulse generator to inhibition by estradiol and progesterone. J Clin Endcrinol Metab 85:4047-4052, 2000
4)Vendola KA, et al:Androgens stimulate early stages of follicular growth in the primate ovary. J Clin Invest 101:2622-2629, 1998
5)Legro RS, et al:Prevalence and predictors of risk for type 2 diabetes mellitus and impaired glucose tolerance in polycystic ovary syndrome:a prospective controlled study in 254 affected women. J Clin Endocrinol Metab 84:165-169, 1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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