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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科61巻11号

2007年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 胎盤と臍帯の臨床 胎盤

1.大きさと形態の異常

著者: 川島佳 ,   室月淳 ,   岡村州博

ページ範囲:P.1331 - P.1333

はじめに

 胎盤の大きさと形態について,まず発生と解剖を述べたのち,その異常について解説する.


胎盤の発生

 胎盤は胚子の胚外組織と母体の内膜組織の共同作用により形成される.

2.腫瘍・類腫瘍と変性

著者: 佐世正勝 ,   高橋弘幸

ページ範囲:P.1335 - P.1341

はじめに

 胎盤は重要な胎児の生命維持装置でありながら,十分な注意が払われているとはいい難い臓器である.胎盤にはさまざまな病的な状態があるが,胎盤実質に腫瘤を形成する可能性のある病態を表1に示した1).胎盤腫瘤は腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患に大きく分類され,腫瘍性疾患は絨毛性疾患と非絨毛性疾患に分類される.このうち,臨床で遭遇する可能性のある疾患を中心に解説を加える.

3.前置胎盤

著者: 鈴木真

ページ範囲:P.1342 - P.1347

はじめに

 前置胎盤はさまざまな社会的な要因により非常に注目される疾患となった.この疾患は太古の昔から存在し,帝王切開術が行えるようになる前はおそらく100%,帝王切開が行えるようになってからもかなり高率で,さらに超音波検査で分娩前に診断できるようになった現在でさえも母体死亡を避けることのできない疾患であり,産科医が中・後期の出血として常位胎盤早期剥離とともに最初に頭に浮かぶ疾患である.

 前置胎盤について疫学,診断,管理に分けて記述する.

4.常位胎盤早期剥離

著者: 杉村基

ページ範囲:P.1348 - P.1353

はじめに

 常位胎盤早期剥離は,正常位置である子宮体部に付着している胎盤が妊娠中もしくは分娩経過中胎児娩出以前に子宮壁より剥離するものをいう.興味深いことに,胎盤早期剥離既往症例が再度胎盤早期剥離を起こす相対危険度は10~25といわれている.

 胎盤早期剥離の原因は不明であるとともに,そのリスク要因からも複数の機序の存在が示唆される.リスク要因としては高齢妊娠,多産,妊娠高血圧症候群,前期破水,多胎妊娠,羊水過多,喫煙,血栓傾向,胎盤早期剥離の既往,子宮筋腫合併妊娠が挙げられる1).以前は妊娠高血圧症候群に伴う胎盤早期剥離が多かったが,最近では絨毛膜羊膜炎に引き続き,切迫早産から胎盤早期剥離,もしくは胎盤早期剥離から切迫早産といった臨床型をとるものもみられる.

 病理学的には胎盤剥離は脱落膜基底層にある小動脈の破綻による出血の結果,脱落膜部への血腫が形成される.交通事故外傷といった直接的なものとともに,無フィブリノゲン血漿患者では流産とともに胎盤早期剥離が高頻度に認められることから,接着タンパク因子の欠乏も発症原因の1つとなっていると考えられる.障害の程度により胎盤機能障害から胎児機能不全,DIC,産科ショックといった2次的病態へ進展する.
特に常位胎盤早期剥離と診断した時点で,経腟分娩とするのか直ちに帝王切開とするのかは2次的病態との関連で臨床上重要な点である.また,管理治療の方針決定にその病態の理解は必須である.本稿では病態を改めて述べ,具体的治療の選択について触れる.

5.癒着胎盤―診療・手術法の6つの工夫

著者: 松原茂樹 ,   大口昭英 ,   安士正裕 ,   中田学 ,   大竹悠子 ,   桑田吉峰 ,   泉章夫 ,   鈴木光明

ページ範囲:P.1354 - P.1363

はじめに

 癒着胎盤診療の「決定版」はまだない.エビデンスも少ない.本稿では,前置癒着胎盤の診療法・手術法について記述していく.諸家の報告を記載しつつ,われわれが現在行う手術法を紹介する.この方法が最良とは限らず,今後診療法・術式を改変していく可能性もある.

 福島県立大野病院での癒着胎盤症例死亡とその後の担当医師逮捕事件以来,自治医科大学周辺の1次・2次施設は,前置胎盤症例あるいは低置胎盤症例すら,そのほぼ全例を3次施設の自治医科大学附属病院へ紹介・転送するようになった.これまで年間30例程度であった当院の前置胎盤症例は2006年には倍増して58例に,2007年上半期数から推計すると2007年症例数は3~4倍増が予想される.本稿執筆時点で定床52の産科ベッドを6例の前置胎盤症例が占めている.

 癒着胎盤は妊産婦を死亡させ得る疾患である.癒着胎盤の治療方法についてはまだ「決定版」がない.癒着胎盤の頻度が低いこと,癒着の程度にばらつきがあり癌のステージングのような客観評価(grading)が困難なこと,緊急手術になる可能性があること,施設により対処能力に相当な格差があると予想されること.以上から,癒着胎盤への最適治療法が明示できるようなRCTは組みにくい.レベルIエビデンスに基づく本疾患への治療法が呈示される可能性はほとんどない.現在は,癒着胎盤への治療法が模索され,その経験が集積されてきている段階だといえる.

 癒着胎盤の診断方法には種々の進歩がみられる.診断の柱は超音波,カラードプラ,MRIの3つで,その診断感度はかなり高い1).これについては前置胎盤の項で記載がある.なお,癒着胎盤(広義)にはaccreta,increta,percretaの3つが病理学的に区別されるが,これらは子宮摘出後に知れるわけで,術前診断できない.本稿では,癒着胎盤の最重症型であるpercreta,ことに膀胱筋層へ胎盤が入り込んだ,最も危険なタイプの癒着胎盤,なかでも「前回帝王切開の前壁前置癒着胎盤」を想定して記述していく.患者は今回カイザー児を含めて2名の,あるは少なくとも1名の健児をすでに授かっていると仮定し,子宮温存は原則考慮しない.術中出血死も危惧される最重症タイプを想定し,それへの救命手術・方策に的を絞って記述していく.最困難例(percreta膀胱浸潤)に対処できれば,より軽症例(accreta,increta)への対処は容易であるとの理屈からである.より軽症なaccretaやincretaの記載もcontextを進めるうえで混入してくるが,気にせず読み進めていただきたい.

6.PIH,FGRの胎盤

著者: 関博之

ページ範囲:P.1364 - P.1369

はじめに

 胎児発育遅延(fetal growth restriction : FGR)は多くの原因で起こり,その病態は原因により大きく異なる.FGRの原因としては大きく2つに分けられる.1つは,染色体異常や母体の薬物投与などによる先天性奇形,胎盤や臍帯の異常(chorio-angioma,chronic partial placental separationなど)などによるもので,先天的な奇形や形態異常によるものである.もう1つは,妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH)や慢性腎炎,糖尿病などの合併妊娠,さらに抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome : APS)など,その病態の本質が血管内皮障害で,その結果生じる胎児胎盤循環不全によるものである.本稿は,PIHとともにFGRについて述べていくので,本稿におけるFGRは血管内皮障害を病態の本質とするFGRを対象とすることにした.

 PIH,FGRともにその原因の詳細は不明である.しかし,血管内皮障害という共通した病態を有しているため,両疾患は胎盤の形態や病理所見,絨毛細胞や胎盤の血管内皮細胞の形態や機能の障害,さらに臨床像において,きわめて多くの類似点がある.血管内皮障害という共通した病態の存在を基本とし,それに種々の因子が関与することにより,PIHとFGRという異なった臨床像が発症すると推測される.もちろん,両者が合併する場合も多々みられる.

 これまで,PIHやFGRの胎盤の光学顕微鏡的所見や電顕的所見の特徴に関しては多くの報告がある.近年,単なる形態的な特徴だけに焦点を当てるのではなく,組織学的特徴に免疫学的あるいは生化学的手法を用いて検討し,PIHの発症原因や予知に関する多くの報告がみられるようになってきた.本稿では,胎盤の形態的な特徴ではなく,胎盤形態の変化から免疫学的あるいは生化学的手法を用いて新たに導かれた知見に焦点を当てて述べていく.

7.母児間輸血症候群

著者: 金子政時

ページ範囲:P.1370 - P.1371

概念
 通常,胎児と母体は胎盤バリアによって隔てられている.このバリアが何らかの原因で破綻し,胎児の血液が母体絨毛間腔に流入するために胎児に生じるさまざまな病態の総称が母児間輸血症候群である.厳密には,胎児血の絨毛間腔(母体血中)への出血,fetomaternal hemorrhageである.

臍帯

1.腫瘍・嚢胞

著者: 渡辺博

ページ範囲:P.1373 - P.1377

はじめに

 臍帯に発生する実質性腫瘍はきわめて稀であり,報告症例も限られている1).一方,臍帯に生じる嚢胞(真性嚢胞・偽性嚢胞)の報告,ならびにその臨床的意義や先天異常との関連に関する論文は,近年増加傾向にある.

 臍帯腫瘍,臍帯嚢胞とも胎児発育や胎児のwellbeingに何ら影響のない場合も少なくないが,その大きさや発生部位により,臍帯血流を阻害するなどして,胎児の生存を脅かすことがある.また,Wharton膠質の変性・浮腫により生じる偽性嚢胞(pseudocyst)と胎児の先天異常や染色体異常との関連が指摘されており,臍帯に発生する腫瘍性病変の意義について認識することは重要である.

2.臍帯付着部の異常

著者: 長谷川潤一 ,   岡井崇

ページ範囲:P.1378 - P.1381

はじめに

 臍帯の付着部異常には,卵膜付着,辺縁付着,前置血管が含まれる.これらの異常は,臍帯異常のなかでも胎児心拍モニタリング異常と最も密接に関連する異常で,ときに胎児死亡の原因になることもある.これらの異常はNRFSの分娩後に娩出された付属物をみることではじめて診断されることも稀ではない.しかしながら,超音波機器の発達により,ほかの胎児異常と同様に臍帯付着部異常においても分娩前の診断がしやすくなってきている.これらの異常を分娩前に診断してハイリスクとしてピックアップしておくことは,急な帝王切開を回避できるだけでなく,周産期予後の改善にもつながると考えられる.本稿では,臍帯付着部異常の超音波診断および妊娠・分娩管理について解説する.

3.捻転の異常

著者: 宇津正二

ページ範囲:P.1382 - P.1387

はじめに

 子宮内の胎児にとって唯一の生命線である臍帯には,2本の臍帯動脈と1本の臍帯静脈がウォールトンジェリーに包まれながらほどよく捻れている.これは,母体からの酸素供給や栄養・代謝などの重要な循環経路である臍帯血管を保護するために被覆,補強の目的で備わっている天与の安全機構で,胎盤から胎児の臍輪部までをしっかりつないでいる.しかし,それでもなお,ときとして胎児と子宮壁の間で挟まれて圧迫されたり,屈曲,捻転,牽引というような偶発的な力によって臍帯血流障害が発生する例がある.健常胎児にとってはほとんどの場合は一過性の血流遮断で,病的な血流障害には至らず胎児異常発生の頻度は低いが,羊水過少や前期破水,絨毛膜羊膜炎,臍帯炎,切迫早産などの子宮内の病的状態に晒されている場合には,供給系唯一のライフラインである臍帯静脈の血流障害により胎児自身の発育を妨げたり,胎児脳にダメージを残したり,胎児の生命までも脅かすこともある.本特集の他稿でも詳しく述べられているが,実際の臨床で遭遇するさまざまな臍帯異常を表1に示した.

 これらの臍帯異常がすべて胎児異常に直結するわけではないが,本稿では子宮内胎児発育遅延(FGR)からしばしば子宮内胎児死亡(IUFD)にまで至る病的な臍帯過捻転の症例を臍帯異常の典型例と考え,その病態と診断,治療や予防対策などについて述べる.

4.下垂・脱と巻絡

著者: 砂川空広 ,   菊池昭彦

ページ範囲:P.1389 - P.1393

はじめに

 臍帯は,妊娠・分娩を通じて母児をつなぐ生命線である.羊膜腔内の羊水中に浮遊してfree loopを形成し,これが胎児と胎盤の間に位置することにより,周囲から圧迫されにくい環境を形成している.ところが,臍帯自体の異常ないしは周囲の環境により,胎児胎盤循環不全が発生して母児の予後に悪影響を及ぼすことがある.分娩中のみならず妊娠中のnon-reassuring fetal status(NRFS)の原因においても臍帯異常が占める割合は高い.

 本稿では,臍帯下垂・脱出,臍帯巻絡について,その管理法を中心に概説する.

5.血流の異常

著者: 山口裕子 ,   佐藤昌司

ページ範囲:P.1395 - P.1399

はじめに

 超音波ドプラ法の臨床応用に伴い,ヒト胎児においても血管内を流れる血流速度分布を非侵襲的に,かつ実時間的に観察することが可能となっている.本法は現在,臍帯血管のみならず,胎児中大脳動脈,下行大動脈,下大静脈などを対象血管とした胎児諸臓器の血行動態を観察する方法として利用され,子宮内発育遅延(IUGR)胎児における胎盤血管抵抗の上昇,あるいは低酸素状態に対する胎児血行動態の変化や再分配機構を評価する手段として用いられている.本稿では,特に臍帯血流の評価法とその異常について概説する.

連載 産婦人科MRI 何を考えるか?・5

類皮嚢腫の破裂

著者: 山岡利成

ページ範囲:P.1327 - P.1329

 昨日より腹痛が持続し,改善が認められないため,来院した36歳の女性.この2枚の画像で,腹痛の原因が特定できるであろうか.

病院めぐり

市立伊東市民病院

著者: 小林理章

ページ範囲:P.1402 - P.1402

 伊東市は伊豆半島の東岸に位置し相模湾を臨み,伊豆の名は「湯出づ」に由来するといわれるごとく温泉が多く,東京から至近の便利な立地環境でもあり,早春の桜,新鮮な魚介類,柑橘類,ホタル,マリンスポーツ,ゴルフなど季節それぞれに美しく,楽しいリゾート観光地です.

 さて,当院は平成13年に国立伊東温泉病院が伊東市に移管され新たに開院いたしました.管理運営は,社団法人地域医療振興協会(自治医科大学の卒業生が中心となり,地域医療の振興を目的として設立した公益法人)が行ういわゆる公設民営の病院で,臨床研修指定病院でもあります.一般病床数は250床で,内科,小児科,放射線科,外科,整形外科,脳神経外科,眼科,耳鼻咽喉科,麻酔科,リハビリテーション科を擁し,常勤医31名,研修医7名で伊東市を中心に伊豆東海岸地域を医療圏(人口約9万人)とし,24時間365日体制の2.5次救急医療体制をも提供し,「地域住民に信頼されるため思いやりの心を持ち,良質の医療を提供します」を理念に掲げ地域中核病院として日夜努力しています.

富士市立中央病院

著者: 窪田尚弘

ページ範囲:P.1403 - P.1403

 富士市は静岡県の中東部,駿河湾の奥まったところ,富士山を一望できる位置にあります.東海道新幹線は「こだま」のみの停車ですが,東京駅から1時間10数分の首都圏から比較的近距離にあり交通の便は比較的良好で,富士山の湧水を元に製紙工場の町として発展し,現在の人口は約24万人です.当院は昭和24年3月に町立富士病院(診療科目5科,99床)として開設され,昭和59年8月に富士市高島町に新築移転し,ベッド数596床,診療科目22科の静岡県の岳南地域の基幹病院として機能しています.各種の指定医療機関・学会認定施設になっており,産婦人科関係では地域周産期医療センター,日本産婦人科学会認定医制度卒後研修指導施設の認定施設です.病院開設時より,全科,東京慈恵会医科大学からの医師の派遣でしたが,昨今の勤務医不足のため,山梨医科大学,浜松医科大学などの協力を受けています.平成8年7月よりトータルオーダリングシステムの運用を開始,平成10年10月に病院医療機能評価機構より認定を受け,平成19年にはDPC準備病院に名乗りを上げ,今後は電子カルテの導入,地域がん診療拠点病院の指定を受けるべく全病院で取り組んでいます.病院全体の目標として,臨床研修医が研修したい病院となること,大学の垣根を取り払い研修後も勤務できるような病院が考えられています.

もうひとつのインドネシア―セックスワーカーを通してみたリプロダクティブヘルス・7

ドゥクンdukunによる人工妊娠中絶

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.1406 - P.1407

禁じられた人工妊娠中絶

 人工妊娠中絶が法律で禁じられているインドネシアでは,妊娠がわかったときにひそかに自ら手を下すことを考える女性は少なくない.

 自ら手を下すことが難しいとなれば,続いてドゥクンdukunのもとを訪ねることも多い.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・27

帝王切開翌日に発症した産褥性心筋症の1例

著者: 滝澤基 ,   星和彦

ページ範囲:P.1409 - P.1412

症例

 患者:42歳,主婦.0経妊・0経産,身長140cm

 主訴:帝王切開翌日の呼吸苦

 既往歴:特記すべきことなし.

 現病歴:妊娠30週1日,低置胎盤,妊娠高血圧症候群にて当院に母体搬送となった.性器出血を認め,切迫早産の診断にて塩酸リトドリンの持続投与を行った.また,腟洗浄とクロラムフェニコール腟錠の連日投与を行った.グッドマンマルチウス撮影にてCPDと診断し,分娩は選択的帝王切開とした.術前の胸部X線および心電図検査にて問題は認められなかった.

 妊娠37週1日に脊椎麻酔下に選択的帝王切開を施行した.手術時間は45分,術中出血1,470ml,術中補液2,850ml,自己血200mlの輸血を施行した.術後の全身状態は良好で,尿の流出も良好であり,心不全の徴候などは認めなかった.新生児は3,252 gの男児にて,出生後の経過は良好であった.母体は帝王切開当日の経過は良好であったが,翌日の産褥1日に突然の呼吸苦が出現した.SpO2が89%まで低下し,酸素60%投与下でもSpO2が90%台前半までしか上昇しなかった.表情が苦悶様であり,坐位でうつぶせのみしか体位が取れず,チアノーゼが出現した.胸部X線にて末梢血管陰影の増強を認めた(図1).

原著

集束超音波治療(FUS)による子宮筋腫の症状改善度についての検討

著者: 福西秀信 ,   舟木馨 ,   藤本加奈子 ,   久保美貴 ,   水谷しのぶ ,   川上ちひろ

ページ範囲:P.1413 - P.1417

 新しい筋腫の治療法としての集束超音波治療法(FUS)は,腹壁外より多数の超音波エネルギーを筋腫組織内に集束させ,その部分を60~90度の高温にして筋腫だけを焼灼する方法である.患者は超音波治療装置の上に腹臥位で横たわりMRI装置のなかで治療を受けるが,その際,治療位置と焼灼部の温度上昇はMRIでリアルタイムに観察することができる.焼灼された筋腫は壊死に陥り,筋腫結節の縮小が促される.この治療を受けた65名を対象に子宮筋腫の症状を問診票(自覚症状重症度スコア:SSS-8,SSS-12)から検討してみた.その結果,治療後3か月目には自覚症状に有意の改善がみられ,この改善は12か月にわたって維持されていた.また6か月後の時点で患者の75%にSSSが10ポイント以上改善していた.治療後6か月での筋腫の縮小率の大きいものほど症状の改善度も高い傾向がみられた(r=0.42,p=0.015).

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編集後記

著者: 岡井崇

ページ範囲:P.1424 - P.1424

AOFOG

 今年はAOFOG(アジアオセアニア産婦人科連合)発足の50周年に当たり,その記念大会が今東京の京王プラザホテルで行われています.私も,機関誌であるJOGRの編集長として,会期中に持たれたいくつかのビジネスミーティングに出席してきました.最初は英語で話すことのストレスに加え,議事の進行のあまりもの遅さに苛立ちを募らせていたのですが,回を重ねるにつれ,この連合の存在意義への認識が深まっていきました.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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