文献詳細
文献概要
今月の臨床 胎盤と臍帯の臨床 胎盤
6.PIH,FGRの胎盤
著者: 関博之1
所属機関: 1埼玉医科大学総合医療センター
ページ範囲:P.1364 - P.1369
文献購入ページに移動はじめに
胎児発育遅延(fetal growth restriction : FGR)は多くの原因で起こり,その病態は原因により大きく異なる.FGRの原因としては大きく2つに分けられる.1つは,染色体異常や母体の薬物投与などによる先天性奇形,胎盤や臍帯の異常(chorio-angioma,chronic partial placental separationなど)などによるもので,先天的な奇形や形態異常によるものである.もう1つは,妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH)や慢性腎炎,糖尿病などの合併妊娠,さらに抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome : APS)など,その病態の本質が血管内皮障害で,その結果生じる胎児胎盤循環不全によるものである.本稿は,PIHとともにFGRについて述べていくので,本稿におけるFGRは血管内皮障害を病態の本質とするFGRを対象とすることにした.
PIH,FGRともにその原因の詳細は不明である.しかし,血管内皮障害という共通した病態を有しているため,両疾患は胎盤の形態や病理所見,絨毛細胞や胎盤の血管内皮細胞の形態や機能の障害,さらに臨床像において,きわめて多くの類似点がある.血管内皮障害という共通した病態の存在を基本とし,それに種々の因子が関与することにより,PIHとFGRという異なった臨床像が発症すると推測される.もちろん,両者が合併する場合も多々みられる.
これまで,PIHやFGRの胎盤の光学顕微鏡的所見や電顕的所見の特徴に関しては多くの報告がある.近年,単なる形態的な特徴だけに焦点を当てるのではなく,組織学的特徴に免疫学的あるいは生化学的手法を用いて検討し,PIHの発症原因や予知に関する多くの報告がみられるようになってきた.本稿では,胎盤の形態的な特徴ではなく,胎盤形態の変化から免疫学的あるいは生化学的手法を用いて新たに導かれた知見に焦点を当てて述べていく.
胎児発育遅延(fetal growth restriction : FGR)は多くの原因で起こり,その病態は原因により大きく異なる.FGRの原因としては大きく2つに分けられる.1つは,染色体異常や母体の薬物投与などによる先天性奇形,胎盤や臍帯の異常(chorio-angioma,chronic partial placental separationなど)などによるもので,先天的な奇形や形態異常によるものである.もう1つは,妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH)や慢性腎炎,糖尿病などの合併妊娠,さらに抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome : APS)など,その病態の本質が血管内皮障害で,その結果生じる胎児胎盤循環不全によるものである.本稿は,PIHとともにFGRについて述べていくので,本稿におけるFGRは血管内皮障害を病態の本質とするFGRを対象とすることにした.
PIH,FGRともにその原因の詳細は不明である.しかし,血管内皮障害という共通した病態を有しているため,両疾患は胎盤の形態や病理所見,絨毛細胞や胎盤の血管内皮細胞の形態や機能の障害,さらに臨床像において,きわめて多くの類似点がある.血管内皮障害という共通した病態の存在を基本とし,それに種々の因子が関与することにより,PIHとFGRという異なった臨床像が発症すると推測される.もちろん,両者が合併する場合も多々みられる.
これまで,PIHやFGRの胎盤の光学顕微鏡的所見や電顕的所見の特徴に関しては多くの報告がある.近年,単なる形態的な特徴だけに焦点を当てるのではなく,組織学的特徴に免疫学的あるいは生化学的手法を用いて検討し,PIHの発症原因や予知に関する多くの報告がみられるようになってきた.本稿では,胎盤の形態的な特徴ではなく,胎盤形態の変化から免疫学的あるいは生化学的手法を用いて新たに導かれた知見に焦点を当てて述べていく.
参考文献
1) 畑 俊夫,大沢洋之 : 胎盤形成障害・胎盤機能胎盤の形態的変化妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群へ(日本妊娠高血圧学会編集).pp122─123,メジカルビュー社,2005
2) Pijnenborg R : The placental bed. Hypertens. Pregnancy 15 : 7─23, 1996
3) Lewis MP, Clements M, Takeda S, et al : Partial characterisation of an immortalized trophoblast cell─line, TCL─1, which possesses a CSF─1 autocrine loop. Placenta 17 : 137─146, 1996
4) 関 博之,竹田 省,木下勝之 : 絨毛細胞と脱落膜細胞の相互作用.産婦人科の世界49 : 621─627,1997
5) 松岡菊美,竹田 省,関 博之,他 : 子宮内膜間質細胞の血管新生因子産生に及ぼすサイトカイン,monocyte,絨毛細胞の影響について.日本受精着床学会雑誌17 : 182─185,2000
6) Koelman CA, Coumans AB, Nijiman HW, et al : Correlation between oral sex and low incidence of preeclampsia : a role for soluble HLA in seminal fluid? J Reprod Immunol 46 : 155─166, 2000
7) Trupin LS, Simon LP, Eskenazi B : Change in paternity : a risk factor for preeclampsia in multiparas. Epidemiology 7 : 240─244, 1996
8) Saito S, Sakai M : Th1/Th2 balance in preeclampsia. J Reprod Immunol 59 : 161─173, 2003
9) Espinoza J, Romero R, Nien JK, et al : Identification of patients at risk for early onset and/or severe preeclampsia with the use of uterine artery Doppler velocimetry and placental growth factor.Am J Obstet Gynecol 196 : 326.e1─13, 2007
10) Stepan H, Unversucht A, Wessel N, et al : Predictive value of maternal angiogenic factors in second trimester pregnancies with abnormal uterine perfusion. Hypertension 49 : 818─824, 2007
11) Vatten LJ, Eskild A, Nilsen TI, et al : Changes in circulating level of angiogenic factors from the first to second trimester as predictors of preeclampsia. Am J Obstet Gynecol 196 : 239.e1─6, 2007
12) Lu F, Longo M, Tamayo E, et al : The effect of overexpression of sFlt─1 on blood pressure and the occurrence of other manifestations of preeclampsia in unrestrained conscious pregnant mice. Am J Obstet Gynecol 196 : 396.e1─7, 2007
掲載誌情報