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今月の臨床 不妊診療─現在の課題と将来展望
卵子提供,代理懐胎(IVFサロガシー)の実態と展望
著者: 石原理1 梶原健1 出口顯2
所属機関: 1埼玉医科大学産婦人科 2島根大学文化人類学
ページ範囲:P.1496 - P.1501
文献購入ページに移動日本産科婦人科学会は,その見解(会告)で体外受精などの生殖医療を夫婦間に限定しており,わが国においては第三者に由来する配偶子(卵子または精子)や胚,あるいはIVFサロガシーなど第三者の関与する生殖医療の施行をすべて排除している.1983年にこの会告のオリジナルが発表されてからすでに四半世紀が経過したが,この間実質的な変更はされていない.このため,現時点で,特に配偶子提供について完全に禁止されている状況は,国際的な比較をするとかなり異例にみえる.
しかし一方,ほとんどの先進国において,第三者の関与する生殖医療などに関連する法律,あるいは(および)親子関係を規定する法律の整備がすでに完了しているという現実がある.つまり,これらの法律による定義づけや規制のまったく存在しないわが国は,現在のところ米国と並んできわめて例外的な国となっていることも忘れてはならない(ただし,米国は州レベルでの法規制がある).厚生科学審議会生殖補助医療部会は,2003年に匿名の第三者からの提供に限って,提供配偶子を認めるという報告書を提出しているが,法制化の目処は2007年7月現在ない.いずれにしても,現実に存在する第三者の関与する生殖により産まれた子供たちの法的地位は,親子の規定を定めた『親子法』のない日本においては,かなり不安定といわざるを得ない.
海外における卵子提供の状況について,筆者は以前にも詳細に報告した1).そこで本稿では,海外における第三者のかかわる生殖医療についてその後の変化を報告し,さらに現状に至る経緯を明らかにして,日本における第三者のかかわる生殖医療についての今後の動向を展望することを試みる.
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