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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科61巻4号

2007年04月発行

今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション

ここが聞きたい105例の対処と処方 I 周産期

【胃炎(妊娠中)】15.胃のもたれ,嘔気を訴えている妊婦です.

著者: 喜多伸幸1 高橋健太郎1 野田洋一1

所属機関: 1滋賀医科大学産婦人科

ページ範囲:P.387 - P.389

文献概要

1 診療の概説

 胃のもたれや嘔気は,一般的に上腹部の消化器疾患の徴候としての頻度が高く,臨床上重要な症状であるが,妊娠悪阻や増大した妊娠子宮の圧迫などの生理現象により生ずることもある.また,妊娠や消化器疾患以外の病態にも起因し,適切な検査,診断,治療が行われなかった場合,非常に重篤な事態を招くこともある.そのため,症状の発現時期,程度,持続期間など細心の注意を払い対応する必要がある.さらに,妊婦がこのように原因が多岐にわたる症状を訴えている場合,非妊時と比較し行い得る検査にも制限があり,日常診療の場ではその選択に苦慮する場面にしばしば遭遇する.

 嘔吐は胃のもたれや嘔気,胸やけがさらに進行した病態と考えられるが,そのメカニズムは以下のように考えられている.すなわち,嘔吐中枢が興奮して起きる遠心性神経刺激は迷走神経,交感神経を経て各臓器に伝達される.この嘔吐中枢刺激経路には,脳圧亢進を介し主に物理的要因により嘔吐中枢を刺激する経路(脳腫瘍,頭蓋内出血など),視覚・聴覚・嗅覚により大脳皮質を介する経路,薬剤や体内代謝産物などの化学受容体を介する経路(糖尿病性ケトアシドーシス,尿毒症,妊娠悪阻,甲状腺疾患など),さらに各臓器疾患の求心性神経を介する経路(腹膜刺激,狭心症,心筋梗塞など)の4つに大別される 1)

参考文献

1) 城 卓志,伊藤 誠 : 悪心,嘔吐,胸やけ主訴からみた女性内科.産婦治療82 : 193-197,2001
2) 小山茂樹 : 胸やけ 内科コモンプロブレム.medicina 41 : 650-653,2004
3) Briggs GG, Freeman RK, Yaffe SJ : Drugs in Pregnancy and Lactation. Lansoprazole. pp899-901, Omeprazole. pp1204-1209,rabeprazole. pp1398-1399, Lippincott Williams Wilkins, 2005
4) 磯崎太一,竹下俊行 : 重症妊娠悪阻(Wernicke脳症含む).周産期医学36 : 185-187,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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