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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科61巻4号

2007年04月発行

今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション

ここが聞きたい105例の対処と処方 II 内分泌

【高脂血症】50.家族性高コレステロール血症家系の妊婦です.妊娠初期は問題なかったのですが,妊娠28週の検査で高脂血症と診断されました.

著者: 高橋一広1 高田恵子1 倉智博久1

所属機関: 1山形大学医学部産科婦人科学

ページ範囲:P.513 - P.515

文献概要

1 診療の概説

 家族性高コレステロール血症は,高コレステロール血症,高低比重リポ蛋白コレステロール(LDL)血症,腱黄色腫,早発性冠動脈硬化症を特徴とする疾患である.この疾患はLDL受容体の遺伝的異常により血中LDLの細胞への取り込みが低下した結果,LDLが高値を示すものである.遺伝形式は常染色体優生遺伝であり,対立遺伝子の片方が異常であるヘテロ接合体,両方の遺伝子が異常であるホモ接合体に分類される.家族性高コレステロール血症のヘテロ接合体は500人に1人の頻度で認められ,血中コレステロール値は260~500 mg/dlであることが多い.一方,ホモ接合体は100万人に1人の頻度で認められ,血中コレステロール値は500~1,000 mg/dlを示すことが多い 1).遺伝的な素因を背景に発症する家族性の高脂血症は,家族性高コレステロール血症のほかに,家族性複合性高脂血症や家族性III型高脂血症がある.それぞれの診断基準を表1に示す.

 妊娠中はエストロゲンの増加に伴い血清脂質は増加し,非妊時に比べて総コレステロールは50%,トリグリセリドは150~300%増加する.妊娠28~32週の総コレステロールの基準値は249±40 mg/dl,トリグリセリドの基準値は219±81 mg/dlと報告されている 2).血清脂質の増加は心血管系疾患のリスク因子であるが,Framingham studyによると,妊娠回数と心血管系疾患の発生には相関がみられないと報告されている 3)

参考文献

1) 田中 明,藍 真澄 : 高脂血症の定義,原因,頻度.日本臨牀59 : 653-660,2001
2) 天野 完 : 消化器系(消化管,肝・胆・膵).武谷雄二,他(編): 新女性医学体系2.妊娠・分娩・産褥の生理と異常.pp125-132,中山書店,2001
3) Gordon T, Kannel WB, Castelli WP, et al : Lipoproteins, cardiovascular disease, and death. The Framingham study. Arch Intern Med 141 : 1128-1131, 1981
4) Mabuchi H, Miyamoto S, Ueda K, et al : Causes of death in patients with familial hypercholesterolemia. Atherosclerosis 61 : 1-6, 1986
5) 安田勝彦,神崎秀陽,中嶋達也 : 脂質代謝.武谷雄二,他(編) : 新女性医学体系2.妊娠・分娩・産褥の生理と異常.pp44-61,中山書店,2001
6) Cashin-Hemphill L, Noone M, Abbott JF, et al : Low-density lipoprotein apheresis therapy during pregnancy. Am J Cardiol 86 : 1160, 2000
7) 若槻明彦,篠原康一,渡辺員支 : 内分泌(高脂血症).臨婦産57 : 501-503,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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