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今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション ここが聞きたい105例の対処と処方 III 不妊症
【高プロラクチン血症】60.外来検査で血中プロラクチン値は正常ですが,月経周期が不規則で少量の乳汁分泌を認める患者です.
著者: 久慈直昭1 長西美和1 吉村泰典1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
ページ範囲:P.538 - P.539
文献購入ページに移動乳汁漏出(galactorrhea)を伴う無月経や希発月経などの月経異常は高プロラクチン血症(以下,PRL血症)の一般的な症状であるが,乳汁漏出を認めても血中PRLが正常である症例も20~30%程度認められる.この大部分は,サイロトロピン分泌ホルモン(TRH)負荷テストでPRL分泌の過剰反応を示すいわゆる潜在性高PRL血症とされる.潜在性高PRL血症では不妊症,不育症,排卵障害,黄体機能不全症や乳汁漏出をみることが多いといわれており,このように診断された症例の多くがドパミン作動薬に反応して排卵周期を回復するが,その診断基準(負荷試験のcut off値)や臨床的意義についてはさまざまな意見があることも事実である.
一方,若年女性で月経異常を主訴とする場合,頻度が高い多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian symdrome : PCOS)と,高PRL血症や潜在性高PRL血症との関連を示す考え方が古くから存在する.PCOSを中枢性黄体形成ホルモン(LH)過剰分泌〔基礎値におけるLHの卵胞刺激ホルモン(FSH)に対する優位〕と定義すると,その30%程度に軽度の高PRL血症がみられること,また視床下部性のドパミンはヒトにおいては主たるPRL分泌抑制因子であり,LH分泌にも中枢性のドパミンが関与しているという報告があることが,その根拠となっている.
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