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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科61巻4号

2007年04月発行

今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション

ここが聞きたい105例の対処と処方 IV 感染症

【付属器炎】80.子宮付属器炎が疑われる患者です.まだ,起炎菌は同定されていません.

著者: 竹本周二1 牛嶋公生1

所属機関: 1久留米大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.590 - P.591

文献概要

1 診療の概説

 卵巣と卵管を総称して子宮付属器と呼び,この子宮付属器に起こる炎症を子宮付属器炎と呼ぶ.主訴としては下腹部痛,性交痛,帯下などが多く,下腹部の違和感程度の軽症例から,激しい下腹部痛を繰り返すような重症例まで,その重症度はさまざまである.一般に,腟内に侵入した病原体が子宮頸管から上行性に子宮内膜に移行し,その後付属器に至ることにより付属器炎が発症する 1).人工妊娠中絶術,産褥,流産,早産,子宮卵管造影,リング挿入後の子宮内感染などの上行性感染や,虫垂炎や結核性腹膜炎からの波及による下行性感染なども原因となりうる.起炎菌としては,腟内の常在菌やSTDの起炎菌が多く,単独感染もしくは混合感染として検出される 2).治療は起炎菌に対する有効な抗生剤の投与が原則となる.ただし起炎菌の同定には日数を要することが多く,また起炎菌が判明しないこともあるため,現実的には理学所見にしたがって治療を先行する.

 薬剤は,まず一般細菌を対象として,抗菌スペクトルの広い薬剤で,子宮内感染,付属器炎に適応を有する薬剤を選択する.通常,徒歩で来院してくる軽症例では,抗生剤の経口投与のみで軽快することが多い.この場合,軽快しても必ず再診させて,臨床所見と起炎菌を確認することは重要である.なぜなら,クラミジア,淋菌などでは選択する薬剤が異なり,それを放置することにより,慢性の付属器炎や卵管性不妊を生じる可能性があるからである.

参考文献

1) 河野一郎 : 婦人科感染症,日本産科婦人科学会(編) : 産婦人科研修の必修知識2004.pp469-479,日本産科婦人科学会,2004
2) 玉舎輝彦 : 産婦人科領域における感染症とその対策.産婦人科治療90 : 477-484, 2005
3) Centers for Disease Control and Prevention : 2002 guidelines for treatment of sexually transmitted diseases. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 51 : 52-57, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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