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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科61巻4号

2007年04月発行

文献概要

今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション ここが聞きたい105例の対処と処方 V 腫瘍

【卵巣腫瘍】85.左卵巣に6~7cm径の嚢胞性腫瘤がある40歳代の患者です.悪性でなければ手術を受けたくないといいます.

著者: 吉崎陽1

所属機関: 1岩手医科大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.599 - P.601

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1 診療の概説

 まず大切な点は,悪性腫瘍ではないと判断するための根拠は何かということである.患者の左卵巣に認められた嚢胞性の腫瘤が画像診断上どのような所見を示しているか,外来診療で頻繁に用いられる超音波断層法により嚢腫の所見を注意深く観察し,これを正確に把握する必要がある(図1).さらに,必要であれば造影CTあるいは造影MRIを行う.壁の肥厚がある場合や乳頭状の増殖がある場合には直ちに癌を疑って専門機関への紹介を考えるべきである.

 もう1つ重要であるのは,その腫瘍が子宮内膜症性嚢胞かどうかの診断である.これは子宮内膜症性嚢胞からの癌化とそれ以外の嚢胞からの癌化の過程が異なる可能性があることがわかってきたからである.癌化の過程が異なることを説明するうえで説得力のある報告は,小林 1)による静岡県における「臨床的卵巣子宮内膜症を有した患者と有しないコントロール婦人を1985年より最長17年間追跡し卵巣癌の発生を前方視的に調査」した結果である.Non-serous typeとserous typeの卵巣癌患者が発癌する前の超音波画像診断によれば,non-serous typeでは初回の検査で67%に卵巣腫大が認められた.これに対し,serous typeでは81%に所見がなかった.このように嚢胞性の腫瘍において子宮内膜症性嚢胞とほかの嚢胞では嚢胞の出現から癌化するまでの期間が異なっている.癌の自然史が違う可能性を理解して診察し,患者と知識を共有して判断していかなければならない.

参考文献

1) 小林 浩 : 子宮内膜症から発生する卵巣腫瘍の診断と治療.産婦の実際 53 : 879-886,2004
2) Marana R, Muzii L, Catalano GF, et al : Laparoscopic excision of adnexal masses. J Am Assoc Gynecol Laparosc 11 : 162-166, 2004
3) Mettler L, Jacobs V, Brandenburg K, et al : Laparoscopic management of 641 adnexal tumors in Kiel, Germany. Am Assoc Gynecol Laparosc 8 : 74-82, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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