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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科61巻4号

2007年04月発行

文献概要

今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション ここが聞きたい105例の対処と処方 V 腫瘍

【癌治療の副作用】95.放射線治療中の子宮癌の患者です.何度も下痢がみられます.

著者: 倉垣千恵1 榎本隆之1

所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学産科婦人科

ページ範囲:P.623 - P.625

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1 診療の概説

 放射線治療に伴う障害は,治療開始とともに始まり治療中から終了後3~6か月以内にみられる早期障害と,半年以上経過して生じる晩発障害とに分類される 1, 2).子宮頸癌をはじめとする婦人科癌に対する放射線治療では骨盤内臓器への影響は避けがたく,消化管障害もその副作用の1つとして現れる.放射線治療の下部消化管への早期障害は照射線量が20~30 Gyに達すると生じるとされ 3),放射線治療により生じる炎症と腸管の蠕動運動の亢進により,下部消化管における吸収障害が顕在化する4).通常,水溶性下痢は治療開始後2~3週間で出現し 1, 4),治療終了後1週間~10日で回復する 4).放射線の影響を受ける消化管部位により症状は異なり,小腸への障害では水様性の下痢が,直腸へ影響が及ぶ場合は粘液便・血便がみられる 4)

 下痢症状は放射線治療全体からみた場合,婦人科の子宮頸癌治療患者に最も多くみられるものであり,1/5の患者に早期および晩発の下痢症状がみられ,その約半数に加療が必要であったとの報告がある 4).放射線照射が消化管に与える影響に関して,総照射線量のみならず,1回の分割線量および照射される腸管の体積によって,消化管障害の程度が規定されることが報告されている 5).子宮頸癌1,456症例における検討では,総照射線量が60 Gyを超える場合,50 Gy照射の場合と比較して小腸におけるGrade3の障害発生率が有意に上昇することが報告されている 6).また,従来高率に消化管障害を招いていた大動脈リンパ節への照射については,照射線量を50 Gyまでに抑えることが副作用軽減のために勧められており 3),さらに腹膜外より傍大動脈のリンパ節郭清を行い腹腔内の術後癒着を避けることによって,腸管の閉塞なども含めた放射線治療における消化管障害が軽減されるとの報告がある 7)

参考文献

1) Hoskins WJ, Perez CA, Young RC:Biologic and physical aspects of radiation oncology. Principles and Practice of Gynecologic Oncology. Lippincott Williams&Wilkins, Philadelphia, pp386-387, 2000
2) 中野政雄,米山博男:放射線療法に伴う障害発生とその治療.癌の臨床(編):癌・放射線療法.IV,放射線療法の臨床総論.篠原出版新社,pp282-297,1987
3) Berek JS:Gynecologic Oncology, Novak's Gynecology. Lippincott Williams&Wilkins, Philadelphia, pp1221-1224, 2002
4) Disaia PJ, Creasman WT:Radiaton therapy. Complications of disease and therapy. Clinical Gynecologic Oncology. Mosby, St. Louis, pp492-494, 2002
5) Letschert JGJ:The prevention of radiation-induced small bowel complications. Eur J Cancer 31A : 1361-1365, 1995
6) Perez CA, Grigsby PW, Lockett MA, et al : Radiation therapy morbidity in carcinoma of the uterine cervix : dosimetric and clinical correlation. Int J Radiat Oncol Biol Phys 44 : 855-866, 1999
7) Weiser EB, Bundy BN, Hoskins WJ, et al : Extraperitoneal versus transperitoneal selective paraaortic lymphadenectomy in the pretreatment surgical staging of advanced cervical carcinoma(a Gynecologic Oncology Group Study). Gynecol Oncol 33 : 283-289, 1989
8) Bye A, Trope C, Loge JH, et al : Health-related quality of life and occurrence of intestinal side effects after pelvic radiotherapy. Acta Oncologica. 39 : 173-180, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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