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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科61巻4号

2007年04月発行

今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション

ここが聞きたい105例の対処と処方 VI そのほか

【性器脱】105.性器脱を認める患者です.手術は絶対に受けたくないといいます.

著者: 古山将康1 錢鴻武1

所属機関: 1田附興風会医学研究所北野病院産婦人科女性骨盤外科センター

ページ範囲:P.656 - P.659

文献概要

1 診療の概説

 性器脱は骨盤底臓器(膀胱,尿道,子宮,小腸,直腸)が腟口から脱出する状態であり,患者は腟内への臓器の下垂感をおぼえ,腫瘤を触知したり,脱出した腫瘤を視認して来院することが多い.脱出する臓器によって尿道過可動(尿道脱),膀胱脱,子宮脱,小腸脱,直腸脱,会陰体損傷がみられる(図1).その症状は多彩で,下垂に伴う骨盤内臓器の牽引による骨盤内の鈍痛,疝痛や性交障害などを訴える.膀胱脱,特に尿道膀胱移行部の下垂や尿道の支持欠損は尿道の過可動をきたし,腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁をきたす.膀胱脱が進行すると,逆に尿道の過度な屈曲によって排尿困難が主となり,尿失禁は軽減することが多い.残尿が出現し,膀胱炎を繰り返す.排尿困難は増悪すると尿閉をきたす.直腸脱,会陰体損傷は排便困難を呈し,便秘,残便感を訴え,肛門括約筋の障害は便失禁をきたす.

 骨盤底臓器はそれぞれ独立して支持されているのではなく,互いに解剖学的に関連し合って維持されている.腟の軸は下1/3と上2/3は傾きが異なっており,尿道と腟管下部1/3は立位で垂直に近い軸であり,腟管上部2/3と直腸はほぼ水平の傾きをなす.また,尿道,腟管下部1/3,直腸下部は挙筋裂孔を貫き,肛門挙筋の緊張によって恥骨の方向に強く閉鎖される.上部腟管,子宮頸部は仙骨子宮靱帯・基靱帯系によって仙骨の方向に強く牽引されている.腟管上部2/3は恥骨頸部筋膜,直腸腟筋膜が裏打ちし,恥骨から坐骨棘にのびる内骨盤筋膜腱弓に付着して,骨盤側壁に支持される.腟管下部1/3の部分の支持で,肛門挙筋群筋膜,尿道,会陰体に癒合して強度を保つ.これにより,直腸,腟は骨盤底筋とほぼ平行に保たれ,腹腔内圧を腟管,直腸,骨盤底筋で受け止めて,臓器の脱出を防止する.

参考文献

1) Barber MD, Laambers AR, Visco AG, et al : Effect of patient position on clinical evaluation of pelvic organ prolapse. Obstet Gynecol 96 : 18-22, 2000
2) The TVM Group : Conceptual advances in, the, surgical management of genital prolapse. J Gynecol Obstet Biol Reprod 33 : 577-587, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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