icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科61巻5号

2007年05月発行

文献概要

今月の臨床 母体救急 母体救急―対応の実際

4.肺水腫・ARDSへの対応

著者: 酒井啓治1

所属機関: 1杏林大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.727 - P.729

文献購入ページに移動
はじめに

 妊娠中は1回換気量,分時換気量が約40%増加するため,動脈血酸素分圧は軽度上昇し,炭酸ガス分圧は軽度低下する.このため,妊娠中は気道閉塞や低換気により急速に呼吸不全となりやすい状態である.妊娠中~後期・産褥期において最も頻度の高い肺機能不全は肺水腫であるが,悪化すると母体死亡を引き起こす重篤な疾患である.肺水腫は肺毛細管圧の上昇から肺の間質,肺胞腔内に体液が貯留するもので,周産期における肺水腫の原因には妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH),切迫早産に対する子宮収縮抑制剤やステロイドの投与,多胎妊娠,大量出血などがある.また,妊娠・産褥期の最も重篤な肺機能不全は成人呼吸窮迫症候群(adult respiratory distress syndrome : ARDS)である.その病態は肺毛細血管内皮細胞の透過性亢進によるもので,敗血症などに合併することが多く,予後不良な疾患群である.

 これらの肺機能不全は不可逆的になる前に診断し早期より集中治療室で管理し,適切な治療を開始しなければならない.

参考文献

1) Sibai BM, Mabie BC, et al : Pulmonary edema in severe preeclampsia-eclampsia ; Analysis of thirty-seven concecutive cases. Am J Obstet Gynecol 156 : 1174-1179, 1987
2) Sibai BM, Mabie BC : Hemodynamics of preeclampsia. Clinics in Perinatol 18 : 727-747, 1991
3) 長尾 憲 : 日本の母体死亡-妊産婦死亡症例集.妊産婦死亡検討委員会(編).三宝社,東京,1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?