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連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・37
無症候性母体からの垂直感染が原因と考えられた新生児サルモネラ菌血症の1例
著者: 原田直哉1 延原一郎1 春田典子1 長岡明子1 鈴木博2 川口千晴2 石川智朗2
所属機関: 1市立奈良病院産婦人科 2市立奈良病院小児科
ページ範囲:P.1369 - P.1373
文献購入ページに移動症 例 : 日齢1,女児
家族歴 : 特記すべきことなし.
母体の妊娠・分娩歴 : 母親は26歳の初産婦.既往歴に特記すべきことなし.妊娠28週6日の健診時に,B群溶血性レンサ球菌(GBS)の有無をスクリーニングするために腟周辺の培養検査を行っていたが,細菌や真菌などすべて陰性であり,妊娠経過にも特記すべきことはなかった.40週6日に自然に陣痛が初来し,適時破水ののち,約2時間で2,886 gの患児をApgar score 9点(1分値)で経腟分娩した.なお,分娩直前までの全妊娠期間を通じて,母体は下痢などの胃腸障害を認めず,発熱などの感染徴候も認めていなかった.
現病歴 : 出生34時間後に,呼吸障害を伴わないものの,突然,38.6℃までの発熱をきたしたため小児科に入院となった.
入院時の現症および検査所見 : 体重2,772 g,呼吸数60回/分,心拍数148回/分.活気なく皮膚色不良で重症感染症が疑われたため,直ちに各種細菌培養を採取した.採血結果および胸腹部X線写真を表1,図1に示す.数時間後には一部粘膜様のものも付着する粘液状の下痢便も認めた(図2).
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