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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科62巻12号

2008年12月発行

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・39

子宮筋腫分娩と診断した類内膜腺癌,小細胞癌共存子宮体癌IV期の1例

著者: 乾泰延1 國見幸太郎1 木村光宏1 平野浩紀1

所属機関: 1高知赤十字病院産婦人科

ページ範囲:P.1587 - P.1590

文献概要

症 例

 患 者 : 48歳,会社員.3経妊・2経産,身長156 cm

 主 訴 : 大量の性器出血

 既往歴 : 特記すべきことなし.

 現病歴 : 2007年11月下旬,当科にてトリコモナス腟炎の治療を受けた.子宮頸部細胞診はクラスII,超音波検査にて直径2 cmの筋腫結節が認められた(図1).2007年12月中旬,不正出血にて来院,内膜細胞診はクラスIIであった.2008年1月中旬,出張中に大量の性器出血があり救急病院を受診,腟鏡診で凝血塊を含む流血があり,内診で子宮は鵞卵大,内子宮口付近に弾性軟な腫瘤を触知し,経腟超音波にて同部に直径3 cmの腫瘤を認めた.造影CTにて子宮内腔は拡張しており,内診,超音波で認めた腫瘤内部には造影効果を認めず,腫瘤は凝血塊である可能性も否定できないとのことであった(図2).機能性出血であるのか,腫瘤からの出血であるのか判断困難であり,出張中であるので止血目的にてプレマリンの処方,鉄剤の投与を受けた.この時点でHb 7.8 g/dlと著明な貧血を認めた.

 救急病院を受診した翌日に当科外来を受診した.超音波検査にて子宮下部に直径4.1 cmの筋腫様腫瘤が認められ,子宮内膜はさほどの肥厚はなく,子宮腟部は腫大しており,子宮筋腫疑いとした(図3).取り敢えずドオルトンと鉄剤を投与し,貧血が改善すれば頸管拡張して筋腫を確認する予定とした.2008年1月下旬,再び多量の出血があり外来受診,内診にて筋腫分娩の状態となってきており,筋腫の表面からも出血があり止血剤の粉を噴霧,ガーゼで圧迫し近々経腟的に筋腫摘出予定とした.その5日後,静麻下で筋腫摘出を試みた.この時点でHbは7.1 g/dl,出血はごく少量であった.摘出時,筋腫は軟らかく変性様で,一塊として取れず,胎盤鉗子にて分割切除後に頸管内を掻爬し,頸管内にヨードホルムガーゼを充填した.以後,経過をみたが出血が収まらず,同日MAP4単位を輸血,緊急子宮全摘を行った.摘出子宮の割面をみると子宮頸部に筋腫が残存しており,子宮内膜からの出血はみられなかった(図4).

参考文献

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2) 岩佐葉子,山邊博彦 : 子宮体部に発生した小細胞癌の一例.日本病理学会会誌88 : 201,1999
3) Huntsman DG, Philip BC, Gilks CB, et al : Small─cell carcinoma of the endometrium. Am J Surg Pathol 4 : 364─375, 1994
4) Huntsman DG, Clement PB, Gilks CB : Small─cell carcinoma of endometrium. A clinicopathological study of sixteen cases. Am J Surg Pathol 18 : 364─375, 1994
5) Kumar NB : Small cell carcinoma of the endometrium in a 23─year old woman : Light microscopic and ultrastructual study. Am J Clin Pathol 81 : 98─101, 1984
6) 吉田好雄 : 神経分泌顆粒を有する未分化子宮体癌株の樹立とCDDP投与時の細胞代謝変化─Cytosensorを用いた検討.日産婦誌49 : S─292,1997
7) 軒原 浩 : ED小細胞癌に対する最新の治療戦略.日本臨床60(増刊号5) : 480─484,2002
8) 福井章正,今石裕人,熊谷晴介,他 : 子宮体部の類内膜癌と共存した小細胞型神経内分泌癌の一症例.日本婦人科腫瘍学会雑誌21 : 347─352,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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