文献詳細
今月の臨床 不妊治療と多胎妊娠
ARTと多胎妊娠
1.体外受精における移植胚数の制限
著者: 柴原浩章12 橋本祐子12 島田和彦12 平野由紀12 鈴木達也12 高見澤聡12 鈴木光明12
所属機関: 1自治医科大学医学部産科婦人科学講座 2自治医科大学附属病院生殖医学センター
ページ範囲:P.289 - P.295
文献概要
体外受精・胚移植(
その間には,受精卵の凍結保存法ならびに重症男性不妊症患者に対する卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection:以下,ICSI)などによる治療成績も安定し,これらの技術は生殖補助医療(assisted reproductive technology:以下,ART)と称される.
最近のデータによると,本邦ではこれまでにARTによる累積出生児数は154,869人に及び,全出生児の約60人に1人はARTにより誕生するまで一般化している1).その一方で,ARTによる多胎妊娠の発生は年間3,784件にも上り,いまだ増加傾向にある1).
このARTによる多胎妊娠の発生を予防するためには,移植胚数をより少数に制限する治療方針が有効であることは明らかであるが,妊娠率の低下を伴うことをクライアント側は懸念する.しかしながら,移植せず残した胚は凍結保存により後日また移植を再計画でき,採卵当たりの着床率は低下するわけではない点の理解を求めることで,同意を得ることは困難ではない.
そこで本稿では,ARTによる多胎妊娠防止のための移植胚数の制限に関する現況を紹介するとともに,将来的にすべての移植周期で単一胚移植とすることが可能かについても言及する.
参考文献
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