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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科62巻3号

2008年03月発行

今月の臨床 不妊治療と多胎妊娠

ARTと多胎妊娠

1.体外受精における移植胚数の制限

著者: 柴原浩章12 橋本祐子12 島田和彦12 平野由紀12 鈴木達也12 高見澤聡12 鈴木光明12

所属機関: 1自治医科大学医学部産科婦人科学講座 2自治医科大学附属病院生殖医学センター

ページ範囲:P.289 - P.295

文献概要

はじめに

 体外受精・胚移植(in-vitro fertilization-embryo transfer:以下,IVF-ET)がmicrosurgeryによっても再建不能な両側卵管閉塞,あるいは人工授精を試みても妊娠が成立しない男性不妊症,抗精子抗体による免疫性不妊症,および原因不明不妊症など,in vivoにおける不妊治療が限界に達したカップルに対し適用されて以来,すでに約30年が経過した.

 その間には,受精卵の凍結保存法ならびに重症男性不妊症患者に対する卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection:以下,ICSI)などによる治療成績も安定し,これらの技術は生殖補助医療(assisted reproductive technology:以下,ART)と称される.

 最近のデータによると,本邦ではこれまでにARTによる累積出生児数は154,869人に及び,全出生児の約60人に1人はARTにより誕生するまで一般化している1).その一方で,ARTによる多胎妊娠の発生は年間3,784件にも上り,いまだ増加傾向にある1)

 このARTによる多胎妊娠の発生を予防するためには,移植胚数をより少数に制限する治療方針が有効であることは明らかであるが,妊娠率の低下を伴うことをクライアント側は懸念する.しかしながら,移植せず残した胚は凍結保存により後日また移植を再計画でき,採卵当たりの着床率は低下するわけではない点の理解を求めることで,同意を得ることは困難ではない.

 そこで本稿では,ARTによる多胎妊娠防止のための移植胚数の制限に関する現況を紹介するとともに,将来的にすべての移植周期で単一胚移植とすることが可能かについても言及する.

参考文献

1)斎藤英和,他:平成18年度倫理委員会,登録・調査小委員会報告.日産婦誌59:1717-1739,2007
2)大口昭英:双胎妊娠の特徴-単胎との比較において.妊娠合併症.双胎妊娠・分娩管理マニュアル(監:佐藤郁夫,編:松原茂樹).金原出版,東京,pp28-30,2005
3)Shibahara H, Suzuki T, Tanaka Y, et al:Establishment and application of criteria for the elective transfer of two good-quality embryos to reduce high-order multiple pregnancies. Reprod Med Biol 1:23-29, 2002
4)Suzuki T, Shibahara H, Hirano Y, et al:Randomized study comparing day 2 versus day 3 elective transfer of two good-quality embryos. Reprod Med Biol 3:99-104, 2004
5)Shibahara H, Hirano Y, Okajima T, et al:Establishment of criteria for elective single embryo transfer at day 2 or day 3 by analyzing cases with successful implantation of all embryos transferred. J Obstet Gynaecol Res 33:501-505, 2007
6)柴原浩章:ARTによる多胎妊娠発生予知と移植胚数の減少に向けて.日産婦誌59:1787-1796,2007
7)日本生殖医学会ホームページ.http://www/jsrm.or.jp/
8)石原 理,梶原 健,岡垣竜吾,他:ARTにおける移植胚数のガイドライン.産婦の実際56:1979-1985,2007
9)Blake DA, Farquhar CM, Johnson NP, et al:Cleavage stage versus blastocyst stage embryo transfer in assisted conception. Cochrane Database Syst Rev CD002118, 2007
10)Pandian Z, Bhattacharya S, Ozturk O, et al:Number of embryos for transfer following in-vitro fertilization or intra-cytoplasmic sperm injection. Cochrane Database Syst Rev CD003416, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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