文献詳細
連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・31
卵管留血(水)腫を合併した子宮内膜ポリープに子宮鏡手術を施行し,卵管炎を併発した1例
著者: 依光正枝1 清水美幸1 辰本幸子1 香川玲奈1 早田桂1 小坂由紀子1 伊藤裕徳1 石田理1 野間純1 吉田信隆1
所属機関: 1広島市立広島市民病院産婦人科
ページ範囲:P.308 - P.311
文献概要
患者:42歳,2経妊・1経産
主訴:過長月経
既往歴:子宮内膜症にて開腹術を受けたことがある.
現病歴:2004年に人間ドックでポリープを指摘され前医を受診,ポリープは良性であった.以後,定期的に癌検診を受けていた.2005年6月,右卵巣腫大を認めMRIを撮影したところ左卵管留水腫が疑われた(図1,2).2006年11月頃より過長月経が出現した.内膜細胞診は異常なく,機能性出血の診断でホルモン療法を勧められていたが拒否していた.2007年6月,再度,過長月経にて受診したところ子宮内腔に内膜ポリープと思われる陰影を認めた.内膜細胞診で疑陽性であったため再度MRIを行ったところ,内膜ポリープおよび左卵管留血腫と診断された.
治療についてセカンドオピニオンを目的に当院を紹介され,受診した.子宮ファイバースコピー(HFS)検査を施行したところ子宮底部に内膜ポリープを認めた(図3,4).卵管留血腫および内膜ポリープについて全摘もしくは子宮鏡下経頸管切除(TCR)の説明をしたところ,患者はまずはTCRを希望した.
手術所見:手術前日にラミナリアを挿入し子宮頸管を拡張し,翌日,子宮鏡下に手術を行った.子宮内膜ポリープを除去,子宮腔内を観察し,そのほかの異常内膜のないことを確認した.両側卵管口も正常であった.抗菌薬(セフゾン(R)300mg,分3)内服を手術前日より5日間処方した.
術後経過:手術翌日は軽度の腹満,微熱があったが全身状態はよく,術後1日目に退院した.術後の病理診断は子宮内膜ポリープで,悪性の所見は認められなかった.
参考文献
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