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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科62巻3号

2008年03月発行

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・31

卵管留血(水)腫を合併した子宮内膜ポリープに子宮鏡手術を施行し,卵管炎を併発した1例

著者: 依光正枝1 清水美幸1 辰本幸子1 香川玲奈1 早田桂1 小坂由紀子1 伊藤裕徳1 石田理1 野間純1 吉田信隆1

所属機関: 1広島市立広島市民病院産婦人科

ページ範囲:P.308 - P.311

文献概要

症例

 患者:42歳,2経妊・1経産

 主訴:過長月経

 既往歴:子宮内膜症にて開腹術を受けたことがある.

 現病歴:2004年に人間ドックでポリープを指摘され前医を受診,ポリープは良性であった.以後,定期的に癌検診を受けていた.2005年6月,右卵巣腫大を認めMRIを撮影したところ左卵管留水腫が疑われた(図1,2).2006年11月頃より過長月経が出現した.内膜細胞診は異常なく,機能性出血の診断でホルモン療法を勧められていたが拒否していた.2007年6月,再度,過長月経にて受診したところ子宮内腔に内膜ポリープと思われる陰影を認めた.内膜細胞診で疑陽性であったため再度MRIを行ったところ,内膜ポリープおよび左卵管留血腫と診断された.

 治療についてセカンドオピニオンを目的に当院を紹介され,受診した.子宮ファイバースコピー(HFS)検査を施行したところ子宮底部に内膜ポリープを認めた(図3,4).卵管留血腫および内膜ポリープについて全摘もしくは子宮鏡下経頸管切除(TCR)の説明をしたところ,患者はまずはTCRを希望した.

 手術所見:手術前日にラミナリアを挿入し子宮頸管を拡張し,翌日,子宮鏡下に手術を行った.子宮内膜ポリープを除去,子宮腔内を観察し,そのほかの異常内膜のないことを確認した.両側卵管口も正常であった.抗菌薬(セフゾン(R)300mg,分3)内服を手術前日より5日間処方した.

 術後経過:手術翌日は軽度の腹満,微熱があったが全身状態はよく,術後1日目に退院した.術後の病理診断は子宮内膜ポリープで,悪性の所見は認められなかった.

参考文献

1)野口昌良:感染症と不妊.図説産婦人科 VIEW32.不妊の臨床.pp144-145,メジカルビュー社,1998
2)河上征治:卵管留膿症,卵管留水腫.武田佳彦,武谷雄二(編):今日の産婦人科治療指針.第2版.pp132-133,医学書院,1999
3)伊東紘一,平田經雄(編):卵管.超音波医学TEXT.産科婦人科超音波医学.pp145-146,医歯薬出版,2004
4)高橋敬一,佐藤孝道,他:両側卵管水腫に対する手術後,体外受精-胚移植にて妊娠した3例.臨婦産53:1099-1103,1999
5)立花眞仁,村上 節:ARTに移行する前に行うべき内視鏡検査・手術.臨婦産61:1441-1445,2007
6)Nackley AC, Muasher SJ:The significance of hydrosalpinx in vitro fertilization. Fertil Steril 69:373-384, 1998
7)Johnson NP, Mak W, Sowter MC:Surgical treatmnent for tubal disease in women due to undergo in vitro fertilization. Cochrane Library 3:CD 002125, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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