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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科62巻4号

2008年04月発行

雑誌目次

I 周産期管理 【妊娠管理】

1.帝王切開創部妊娠の取り扱いは?

著者: 柳原敏宏

ページ範囲:P.358 - P.363

1 はじめに

 帝王切開頻度の上昇に伴い,術後合併症ならびに次回妊娠時の合併症も増加している.帝王切開子宮創部に関連する合併症として,前置胎盤に癒着胎盤の合併,子宮破裂,創部への妊娠など妊産婦死亡の原因となるような症例や,月経瘻など日常生活に支障をきたす症例などがある.本稿では,そのなかでも妊娠初期から大量出血を認めたり,治療中でも突然の大出血が発生する帝王切開創部妊娠の管理法について述べる.

2.妊婦のインフルエンザ予防は?

著者: 久保隆彦 ,   山口晃史 ,   村島温子

ページ範囲:P.365 - P.369

1 はじめに

 香港を発端とした重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome : SARS),あるいはヒト感染による死者がアジアで急増している鳥インフルエンザがわが国にも持ち込まれるのではないかと危惧されている.このSARS,鳥インフルエンザとインフルエンザの症状(発熱,頭痛,関節痛,筋肉痛,咳)は酷似しており,インフルエンザとの鑑別が問題となっている.確かに,SARS,鳥インフルエンザは今後危惧すべき重篤な輸入呼吸器感染症なのだが,実際には結核,インフルエンザなどの呼吸器感染症の死亡者は桁違いに多く,結核の死亡者は全世界で毎日約5,000人,インフルエンザは毎年アメリカだけでも約3万人となっている.わが国でもインフルエンザによる死亡は高齢者に多いとはいうものの,この10年間では年間1,200人を超える年もあり,平成14年も約300人が死亡している.

 妊婦のインフルエンザ予防法については最近,議論のあるところである.いかなる感染症においても,ワクチンが最も有効でコストベネフィットな優れた対処法であることはすでに世界の常識であるにもかかわらず,従来からわが国ではワクチンへの生理的嫌悪感を持つ内科・産婦人科医師,あるいは厚生行政施行者が多数存在している.このことが,わが国で各種感染症を根絶できない最大の原因であり問題なので,この点に重点を置き略述したい.

3.臍帯卵膜付着の診断法とその精度は?

著者: 長谷川潤一 ,   松岡隆 ,   市塚清健 ,   大槻克文 ,   関沢明彦 ,   岡井崇

ページ範囲:P.370 - P.373

1 臍帯卵膜付着

 卵膜付着は臍帯・胎盤の発生異常であり,臍帯と胎盤のほかの異常を合併しやすいことから,子宮内胎児発育遅延,早産,胎児心拍モニタリング異常,低Apgar score,新生児死亡,胎盤早期剥離などとの関連が古くより報告されている.単胎妊娠での卵膜付着の出現頻度は1~2%程度で,辺縁付着は3%程度である.双胎妊娠で,それらはおのおの約10倍の頻度になり,付着異常のある児は胎児発育遅延を起こすことが多く,注意が必要である.

 卵膜付着では,ワルトン膠質に包まれないむき出しの臍帯血管が臍帯付着部位と胎盤実質との間の卵膜上を走行していることが,妊娠・分娩の異常に関連すると考えられる.ワルトン膠質は,その弾力で正常の臍帯血管を外力から守っているが,卵膜付着ではワルトン膠質が欠如するため,臍帯血管が慢性的に,あるいは子宮収縮や胎動に伴って,圧迫されやすい(図1).さらに重大なこととして,破水時に卵膜上の血管が断裂することもある.胎児機能不全(non reassuring fetal status : NRFS)を呈した分娩例の事後検索ではじめて卵膜付着が診断されることも稀ではないが,近年では超音波機器の発達により,ほかの胎児異常と同様に卵膜付着の分娩前の診断も可能となってきた.卵膜付着を分娩前に診断してハイリスクとしてピックアップしておくことは,急な帝王切開の回避だけでなく,周産期予後の改善にもつながるため,妊娠中の系統立てた超音波診断の重要性が提唱されている1~3)

4.胎胞膨隆例における頸管縫縮術の方法は?

著者: 牧野康男 ,   松田義雄 ,   太田博明

ページ範囲:P.375 - P.377

1 はじめに

 頸管無力症は,妊娠16週ごろ以降にみられる習慣流早産の原因の1つである1).既往妊娠時に受けた陳旧性頸管裂傷や,先天的な頸部組織の異常が原因と考えられている1).頸管が開大し,胎胞が膨隆した症例では,胎胞を破水させることなく頸管内に還納し,頸管縫縮術を行うことは容易ではない.胎胞を還納する方法には,骨盤高位2~4)やTrendelenburg体位5),膀胱充満法2, 3, 6),羊水穿刺による羊膜腔減圧法2, 3, 7~13),ならびに生食12, 14),ポピヨンヨード2)またはウリナスタチン15, 16)などで湿らせたガーゼや綿球,さらには風船メトロ3, 7, 12, 17)などを用いて胎胞を還納する方法などがある.

 本稿では,胎胞膨隆例に対する胎胞還納法と頸管縫縮術について述べる.

5.切迫早産例におけるステロイド投与の是否は?

著者: 三谷穣 ,   松田義雄

ページ範囲:P.378 - P.383

1 ステロイドの効果

 早産児には呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome : RDS),脳室内出血(intraventricular hemorrhage : IVH),脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia : PVL),壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis : NEC),気管支肺異形成(broncho─pulmonary dysplasia : BPD),動脈管開存(patent ductus arteriosus : PDA),未熟児網膜症(retinopathy of prematurity : ROP)などのさまざまな合併症があり,死亡や後遺症の原因となっている.新生児の予後を改善するためには,早産を減少させることが重要であるが,やむなく早産に至る例も多い.このため,早産児の合併症を減らすための治療として,妊娠中の経母体ステロイド投与が行われている.ステロイドには胎児の細胞分化を促進し,肺胞サーファクタント分泌を促すだけでなく,各種臓器を成熟させる効果があるとされている1)

 1970年代より,ステロイド投与に関する数多くの臨床研究が行われ,その有用性が報告されてきた.1995年National Institutes of Health(NIH)はこれらの研究成果をまとめ2),ステロイド投与により,RDSは有意に減少し(OR : 0.5,95% CI : 0.4~0.5),IVHも有意に減少し(OR : 0.5,95%CI : 0.3~0.9),死亡率も有意に減少(OR : 0.6,95%CI : 0.5~0.8)し,短期的な児への副作用(感染症・副腎機能低下)は増加せず,長期の観察においても,児の発達・発育に悪影響を及ぼさないと報告した.

6.パルボウイルスB19による胎児水腫の治療法は?

著者: 松田秀雄

ページ範囲:P.384 - P.391

1 パルボウイルスとは

 ヒトパルボウイルスB19(以下,PB19)はParvoviridae familyのErythrovirus genusに属するウイルスである.PB19は1975年にB型肝炎のスクリーニングの途中で発見され,その際,パネルBの19番目のサンプル血液中に存在したことから,B19と名付けられた1).人間に感染しうるErythrovirusはPB19のほかにgenotype 2(A6)とgenotype 3(V9)がきわめて稀な存在として免疫不全個体から発見され,近年報告されているが,通常パルボウイルス感染症(リンゴ病)ではPB19を原因ウイルスとしてよい.ヒトのみがPB19の宿主となるので,家畜,ペットなどを通じて感染するものではない.

 疾患としてPB19感染症が同定されたのは1981年であり,現在では,正常人においてリンゴ病・関節炎,妊婦において胎児水腫・子宮内胎児死亡,溶血素因のある免疫力の低下した個体において一過性骨髄無形成発作(transient aplastic crisis : TAC)などを引き起こすことが知られている.妊婦で感染が疑われる場合,胎児に意識が向きがちであるが,母体の症状にも注意が必要である.

7.一絨毛膜性双胎一児死亡の取り扱いは?

著者: 渡辺博

ページ範囲:P.393 - P.397

1 一絨毛膜性双胎とそのリスク

 一絨毛膜性双胎(monochorionic diamniotic twins : MD双胎,ないしはmonochorionic monoamniotic twins : MM双胎)は一卵性双胎(monozygotic twins)であり,二卵性双胎(dizygotic twins)は二絨毛膜性双胎(dichorionic diamniotic twins : DD双胎)である.このことは自明の理とされていたが,近年,生殖補助医療による妊娠で,一絨毛膜性二卵性キメラ双胎(monochorionic dyzygotic twins)の存在が報告され,一部に混乱を生じている.

 通常一卵性双胎の75%前後が一絨毛膜性であり,残りは二絨毛膜性である.双胎妊娠では早産・低出生体重児と先天異常の出生頻度が単胎妊娠に比較して高い.また両児の発育差(discordant twins),一児死亡,両児死亡,一児娩出後の妊娠継続など双胎に特有の特殊な状況に加えて,一絨毛膜性双胎では双胎間輸血症候群(twin─twin transfusion syndrome : TTTS)やacute feto─fetal hemorrhage,無心体双胎など一絨毛膜性双胎に特有の合併症をきたすことがある.さらに,一絨毛膜性双胎の1%が両児間に隔膜の存在しない一羊膜性双胎(MM双胎)であり,結合体双胎や臍帯の相互巻絡による胎児突然死のリスクが加わる.

8.妊娠高血圧症候群の降圧薬の選択は?

著者: 山崎峰夫

ページ範囲:P.398 - P.403

1 はじめに

 妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH)妊婦に対する降圧薬療法は,母体臓器障害の防止が第一の目的である.一方の胎児にとっては,加療により妊娠が継続できれば体重増・成熟というメリットがある反面,血圧降下による子宮胎盤血流量の減少が生ずれば生理機能に障害が起こるというデメリットがある.降圧治療の実施にあたっては,個々の症例における降圧治療の目的と適応を十分に評価すること,開始後も刻々と変化する母児の状態を常にモニターして適切な分娩時期を失することのないよう管理することが求められる.また,使用する降圧薬の母児に及ぼす作用についてよく理解することも重要である.

【分娩・産褥管理】

1.幸帽児帝王切開の適応は?

著者: 村越毅

ページ範囲:P.405 - P.409

1 はじめに

 幸帽児帝王切開は,小さく未熟な児(ときに発育遅延や胎盤機能不全で予備能力のきわめて少ない児)を娩出するために工夫された帝王切開術式である1~3).超低出生体重児における分娩では,児への損傷を防ぐ目的で帝王切開を選択しても厚く伸展していない子宮壁の切開が必要であり,強く収縮した子宮筋層・子宮切開創に児が補足されて娩出が困難となることを経験する.さらに,胎胞脱出や陣痛が始まっているときの分娩などでは状況に応じてさまざまな判断や工夫が必要である.これらの児への損傷を防ぐ目的で幸帽児帝王切開が提唱され1),わが国でも2, 3)広く行われている.分娩様式を経腟分娩か帝王切開にするかの判断においては施設のNICUの状況により週数体重などの基準が異なるため,注意が必要であるが,本稿では幸帽児帝王切開を安全かつ確実に施行するための適応や実際の手技上の工夫につき解説する.

2 早産における分娩方法の判断

 在胎22~36週までが早産の範囲であるため,その未熟性には大きな違いがある.22~23週の生存限界に非常に近い早産未熟児,24~28週前後の超低出生体重児(1,000 g未満),32週くらいまでの極小低出生体重児(1,500 g未満)とそれ以降のいわゆるnear termと呼ばれる34~35週で2,000 g前後の早産ではその取り扱いは異なる.幸帽児帝王切開は基本的には推定体重1,000 g未満に対して行われる.

 分娩方法(経腟分娩か,帝王切開か)の判断には,(1)在胎週数および児推定体重,(2)胎位,(3)陣痛発来前か後か,(4)児のwell─being,などを考慮し,個別に対応する.特に頭位の場合,near termで推定体重1,800 g以降であれば満期の施設分娩基準にしたがい経腟分娩が選択され,推定体重1,200 g未満で超低出生体重児の出産が疑われるときは帝王切開が選択されることが多い.また,骨盤位の場合は帝王切開を選択することが多い.しかし,24週未満の症例においては,当該施設の児生存率を考慮し決定されることが必要である.当センターにおいては,原則的に生存率50%以上を期待できるときには経腟分娩時の圧迫によるストレスを回避するために帝王切開を選択している.

 帝王切開を選択するということは(母体への侵襲があるため),児にとっての有益性が期待できなければならないため,(1)帝王切開を選択しても児の予後に寄与しないと考えられる場合や,(2)経腟分娩でも十分に安全に児にストレスをかけずに分娩が期待できる場合などは経腟分娩を選択する.例えば,推定体重が800 gの児でも陣痛が発来し,児頭が腟内に下降しているときなどは帝王切開を選択しても子宮からの児の娩出が困難であるため,経腟分娩が選択される.

2.帝王切開時の子宮筋腫核出の適応と術式の工夫は?

著者: 杉本充弘

ページ範囲:P.411 - P.415

1 はじめに

 出産年齢の高年化に伴い,子宮筋腫合併妊娠は増加傾向にある.子宮筋腫の発生部位と大きさによって妊娠・分娩・産褥に与える影響は異なる1).子宮下部の大きな筋腫で胎児の産道通過を障害する場合は,帝王切開分娩が選択され,帝王切開時の子宮筋腫核出が望ましいことがある.帝王切開時の子宮筋腫核出術の適応を考え,リスクを小さくするための工夫をすることが,質の高い産科医療につながる.

3.サイヌソイダルパターン出現症例の取り扱いは?

著者: 桂木真司 ,   池田智明 ,   池ノ上克

ページ範囲:P.417 - P.423

1 はじめに

 サイヌソイダルパターン(sinusoidal pattern)とは,胎児心拍数曲線が規則的でなめらかなサイン曲線を示すものをいう.持続時間は問わず,1分間に2~6サイクルで,振幅は平均5~15 bpmであり,大きくても35 bpm以下の波形を称するとされている1)

 一般的には表1に示す1982年にModanlouとFreeman2)が提唱した定義が使用されている.

4.深い腟壁裂傷への対処は?

著者: 熊澤一真 ,   多田克彦

ページ範囲:P.425 - P.427

1 はじめに

 腟壁裂傷とは,分娩時に胎児先進部の圧迫のために生じる裂傷を意味し,通常は会陰裂傷に合併して起こる場合が多く,血管の断裂を伴うときには大量の出血をみることがある.本稿では,腟壁裂傷が深部に及んだ場合の対処法について論じる.

5.産褥期深部静脈血栓症の予防対策は?

著者: 小林隆夫

ページ範囲:P.428 - P.433

1 はじめに

 静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)はこれまでわが国では比較的稀であるとされていたが,生活習慣の欧米化などに伴い近年急速に増加している1~3).血栓症で臨床的に問題となるのは,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)とそれに起因する肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)である.PTEはDVTの一部(5~10%)に発症する疾患であるが,一度発症するとその症状は重篤であり致命的となるので,急速な対処が必要となる.妊娠中は以下の理由で,VTEが生じやすくなっている.すなわち,(1)血液凝固能亢進,線溶能低下,血小板活性化,プロテインS(PS)活性低下,(2)女性ホルモンの静脈平滑筋弛緩作用,(3)増大した妊娠子宮による腸骨静脈・下大静脈の圧迫,(4)帝王切開などの手術操作による総腸骨静脈領域の血管(特に内皮)障害および術後の臥床による血液うっ滞,などである.

6.産褥1か月の胎盤ポリープの取り扱いは?

著者: 小野恭子 ,   菊池昭彦 ,   松原直樹

ページ範囲:P.434 - P.437

1 胎盤ポリープとは

 胎盤ポリープは,分娩後または流産後に遺残胎盤が変性,器質化によりポリープを形成したもので,病理組織学的所見はさまざまであるが,変性や出血,壊死を伴う絨毛組織の存在,フィブリン沈着による器質化,絨毛の筋層浸潤,炎症細胞の浸潤などが特徴である1).臨床的には,産褥または流産後約1か月ごろ(数週~数か月の間)に不正性器出血を繰り返し,ときに大量の性器出血を起こすことも多い1).成因として,その基礎には癒着胎盤の存在があると考えられており,胎盤用手剥離,人工妊娠中絶・流産手術などの既往,帝王切開術の既往などはリスクファクターである2~5).発生頻度は低いものの4, 5),胎盤ポリープが疑われる場合に,むやみに除去しようとすると大出血を起こす危険性があるため,取り扱いには慎重を要する疾患である.

2 診 断

 産後の大出血にて気づかれることも多いが,胎盤遺残,粘膜下筋腫,子宮内膜ポリープなどのほかの子宮内腔病変との鑑別には,超音波検査,カラードプラ,MRIなどの画像所見が不可欠である5)

II 不妊治療 【一般不妊治療】

1.不妊患者の内視鏡検査・手術の適応とタイミングは?

著者: 可世木久幸 ,   松島隆

ページ範囲:P.438 - P.443

1 基本的事項

 不妊症治療の望ましい姿を考えてみよう.不妊検査・治療開始後,妊娠分娩に至る期間が短く,さらに正期産による正常出生体重児が獲得できることであろう.この枠組みのなかに,内視鏡検査を導入するタイミングとその検査・手術の適応の検討が本論文の目的である.この場合,内視鏡検査・手術に用いる内視鏡は腹腔鏡,子宮鏡,卵管鏡とする.

 表1に不妊検査を月経周期に沿って配置した.内診,経腟超音波検査,子宮頸部・内膜細胞診などの初診時の基本検査を行ったのち,基礎体温により排卵の有無を大きく捉える.規則正しい排卵が予想される症例の場合には,卵巣機能を調べる目的でLH─RHテスト,TRHテストを月経開始初期に行い,排卵時期にE2サージ,LHサージおよび卵胞発育が適切に絡み合っているか,着床期に黄体機能が適切に働いているだろうかなどの検討が必要である.これに加え,卵管機能,子宮形態の基本情報源としての子宮卵管造影図法(hysterosalpingography : HSG)も重要な検査である.さらに,男性因子を検討する目的の精液検査とヒューナーテスト(性交後試験)がある.

2.抗リン脂質抗体陽性の不育症の治療は?

著者: 松林秀彦

ページ範囲:P.445 - P.449

1 はじめに

 2006年2月に,新しい抗リン脂質抗体症候群の「分類基準(classification criteria)」が発表された1).「分類基準」とは,一般に膠原病などの診断に用いられているクライテリアで,症候群(syndrome)であるがゆえに,あえて「診断」ではなく「分類」という単語を用いている.これは,今後の医学の進歩により随時変更が加えられていくことを意味している.抗リン脂質抗体症候群の「分類基準」には,臨床所見と検査所見が示してあり,少なくとも1項目ずつ認めれば抗リン脂質抗体症候群といえる.表1に産科的臨床所見を,表2に抗リン脂質抗体検査所見を抜粋した.ただし,臨床所見と検査所見の時期が5年以上あるいは12週未満の場合は除外され,検査所見は12週以上の間隔を空けて2回陽性であることが必要である.

 一方,今回の「分類基準」に含まれていない抗リン脂質抗体も多数存在する(表2).日本産科婦人科学会の2004年生殖内分泌委員会報告2)では,表2に示す抗リン脂質抗体を推奨する検査としている.したがって,抗リン脂質抗体陽性と抗リン脂質抗体症候群の習慣流産・不育症は異なることになる.

 本稿では,新しい抗リン脂質抗体症候群の「分類基準」の原著論文1),2004年生殖内分泌委員会報告2)と電子教科書であるUp To Date3, 4)やCochrane Database of Systematic Reviews5)を参考に,治療法の解説をする.

3.子宮奇形の手術適応とその術式は?

著者: 高桑好一 ,   能仲太郎 ,   田中憲一

ページ範囲:P.450 - P.455

1 はじめに

 従来より,不妊症あるいは不育症の原因として,子宮の形態異常いわゆる子宮奇形の関与が指摘され,形成手術が行われてきた.ただ最近になり,子宮奇形の不妊症の原因としての位置付け,また形成手術そのもの意義などについて問題が提起されている.

 そこで,最初に子宮奇形の分類,診断方法について解説し,不妊症あるいは不育症と子宮奇形との関連性,その治療法,さらに最近の取り扱いに関する意見について解説する.

4.多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の排卵誘発方法は?

著者: 荒井真衣子 ,   村上節

ページ範囲:P.457 - P.461

1 はじめに

 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は,1935年にSteinとLeventhalによる両側卵巣が多嚢胞状に腫大し,無月経(月経異常),多毛,肥満と不妊を呈した7例の報告例に始まる1).現在に至っても,欧米のPCOSの病態はいまだに完全に解明されていない.以前からは視床下部-下垂体-卵巣系,副腎系などの機能異常に起因する内分泌的悪循環であるといわれてきた.しかしながら最近ではインスリン抵抗性との関連が注目されており,PCOSを全身性の代謝異常ととらえる風潮が強まっている.本邦のPCOSの臨床症状は月経異常(92.1%),不妊(98.7%),男性化(23.2%)(多毛,にきびなど),肥満(20.2%)であり,無排卵による不妊により不妊治療の門戸をたたく患者も多い.原因や病態が完全に解明されていないことから,治療に難儀する疾患の1つである.

 欧米では以前より高アンドロゲン血症が重視されていたが,現在では月経異常や高アンドロゲン血症,卵巣の嚢胞化の3つの項目のうち,2つの症状があればPCOSとする診断基準に改変されている.一方,日本では高アンドロゲン血症を呈するPCOSは少なく,日本産婦人科学会の1993年に提唱された診断基準では高LH血症のみを取り入れていたが(表1),2007年の改訂では表2に示すように男性ホルモン値も診断基準に組み込まれた.

 したがって,わが国のPCOSはすべて従来の基準を満たすことになるものの,欧米のPCOSは必ずしもわが国の患者集団と一致しないため,今後も欧米の報告を鵜呑みにすることはできない状況が続くものと思われる.

5.子宮内膜症合併不妊における卵巣チョコレート嚢胞の取り扱いは?

著者: 出浦伊万里 ,   原田省

ページ範囲:P.463 - P.467

1 はじめに

 子宮内膜症は生殖年齢女性のおよそ10%に発生し,月経痛をはじめとする疼痛および不妊を主症状とする疾患である.近年,女性の晩婚化や少子化に伴い本症は増加傾向にあり,社会的関心も高い.子宮内膜症患者の30~50%に不妊症が合併するといわれているが,本症による不妊の発生機序はいまだ明らかではなく,チョコレート嚢胞の取り扱いを含め治療方針についてコンセンサスは得られていない.本稿では,現在までに得られている子宮内膜症合併不妊とチョコレート嚢胞に関するエビデンスを紹介し,その取り扱いについて解説する.

6.薄い子宮内膜を発育させるには?

著者: 岡田英孝 ,   小野淑子 ,   神崎秀陽

ページ範囲:P.469 - P.473

1 はじめに

 近年,体外受精胚移植法(in vitro fertilization-embryo transfer : IVF-ET)などの生殖補助医療技術(assisted reproductive technology : ART)の進歩は,多くの難治性の不妊カップルに福音をもたらしてきた.最近の日本産科婦人科学会の報告(2005年)1)によると,IVF-ETで新鮮胚を用いた成績では採卵成功率94.5%と良好であるが,移植当たりの妊娠率は30.4%にとどまっており,胚移植に対して着床障害が想定されている.着床率・妊娠率を向上させるには,着床障害に対して新たな視点からの診断・治療が望まれている.

 着床障害への治療は,3種の病態,すなわち胚因子,卵巣黄体機能因子,子宮因子の異常に対する対応である.本稿では,着床障害に対する治療として子宮因子,特に「薄い子宮内膜」に関しての病態,およびそれらへの対応策について概説する.

7.早発卵巣不全(POF)への対処は?―閉経患者の内分泌動態から考案した早発卵巣不全(POF)の排卵誘発法

著者: 田中哲二

ページ範囲:P.474 - P.481

1 はじめに

 早発卵巣不全(premature ovarian failure : POF)の原因はさまざまであるが,共通した特徴は卵胞発育不全による卵巣性第2度無月経/早発閉経を呈し,治療困難な排卵障害を示すことである.卵巣摘出や放射線照射による卵巣機能廃絶のような絶対的卵胞消失状態を除けば,卵胞が多少なりとも残存していれば排卵する可能性はゼロとはいえない.しかし,残存卵胞数がきわめて少なかったり,下垂体からの卵胞刺激にも低反応であると,通常の排卵誘発方法ではほとんど成功を期待できないのが現状である.したがって,POF合併不妊症患者の不妊症治療の第一歩は,まず排卵させることであるが,POF合併不妊症患者に対する確実な排卵誘発法はいまだに確立していない.POFは決して稀な疾患とはいえないが,不妊症治療を積極的に望む患者は一部にしか過ぎず,多数のPOF合併不妊症患者の不妊治療を試みた経験のある婦人科医がほとんどいないことも,治療法未確立の大きな理由でもある.POFの原因は多様であるが,卵巣機能不全を完全に治す原因療法は,現在のところ皆無であり,今後もその期待はできないと想像される.

 現実的に,POF患者にとって問題となるのは,早発閉経の名称から予想されるエストロゲン不足による加齢現象の促進と,ゴナドトロピン抵抗性無排卵症によるきわめて難治な不妊症の2つのみである.前者はエストロゲン禁忌患者でない限りは,対症療法としてのホルモン補充療法が完全に確立されている.問題は,ゴナドトロピン抵抗性無排卵症によるきわめて難治な排卵障害である.一部のPOF患者には自己抗体が検出されることから自己免疫疾患としての関与も考えられており,排卵誘発療法時に副腎皮質ステロイド剤を併用する方法も試みられているが,その治療成功率が特に高いというものではない.また,卵胞数が維持されているゴナドトロピン抵抗性卵巣患者の場合は,ゴナドトロピン受容体以降のシグナル伝達系に異常があると考えられるために,通常の排卵誘発方法には限界がある.受容体以降の細胞内シグナルを特異的に制御できる方法や試験管内で卵胞発育を完全に制御できる方法が確立されれば,排卵させずに発育未受精卵を獲得できる可能性が考えられる.この理論は卵胞数減少による一般的なPOF患者やpoor responder患者に対する不妊症治療への応用も期待できるが,現実的にはほとんど研究が進んでいない.

 本稿では,実際の不妊診療の現場で最も多く遭遇する,卵胞数減少による一般的なPOF患者に対する不妊症治療について,筆者の行っている対処法を紹介する.

8.配偶者間人工授精の妊娠率改善,安全性向上のための工夫は?

著者: 吉田丈児 ,   兼子智 ,   高松潔

ページ範囲:P.483 - P.487

1 はじめに

 医学的生殖介助(ART)は広義には配偶子の形成,受精,着床,妊娠維持を医学的に補助して不妊治療を行うことであるが,実際には子宮腔内人工授精(IUI),体外受精・胚移植(IVF-ET),さらには顕微授精(ICSI)に至る人工的な授精による不妊治療を指す場合が多い.腟に射精された精液は子宮頸管,子宮腔内,卵管と雌性生殖路を遡上する過程でその数を減じ,最終的に受精の場である卵管膨大部に到達するのは50匹程度と考えられている.精液所見の悪化は受精の場に到達する精子数の減少であり,ARTは2つの方向を目指している.1つは雌性生殖路における精子遡上過程をバイパスして精子を卵のより近くに送り届け,できるだけ少ない精子数で受精を可能とするものである.IUIは精子の雌性生殖路移動の過程で最も高い障壁である頸管をバイパスする.もう1つは射精精液を選別,濃縮してできるだけ多くの精子を媒精に供し,より精子数を必要とする授精法の選択を可能としようとする試みである.授精法の高度化は媒精に供する精子数を減じたが,雌性生殖路で行われる精子の質的選別,生理的変化をin vitroで代行する必要を生じた.

 本稿ではIUIの妊娠率改善,安全性向上を考察する.IUIは低コスト,低侵襲であり,現状ではIVF施行の前段階としてコースメニューとして行う場合が多い.このため,患者背景,IUIの適応などを十分考慮せずに行う例も多く,妊娠率低下の一因となっている.IUIも妊娠率を論じるに際しては,適応(患者選択),過排卵誘発法,精子調製,授精法などを考慮(標準化)する必要がある.

9.原因不明不妊への対処は?

著者: 辰巳賢一

ページ範囲:P.488 - P.491

1 はじめに

 原因不明不妊とは,通常行われる不妊検査を行った結果,不妊原因となりうる異常を認めない不妊のことをいい,その頻度は10~15%とされている1).通常の不妊検査には,排卵の有無,精液検査,hysterosalpingography(HSG),超音波検査,postcoital test(PCT)などが含まれる.腹腔鏡検査を行うと何らかの異常がみつかることが多いため,原因不明不妊は10%未満となる.

10.男性不妊に薬物療法は有効か?

著者: 吉田淳 ,   中村拓実 ,   渡邊倫子 ,   鈴木幸成 ,   岩本豪紀 ,   両角和人

ページ範囲:P.492 - P.497

1 はじめに

 男性不妊症の薬物療法の有効性を評価するためには,プラセボを使用したケースコントロールスタディが理想的である.しかし,すぐに子どもを希望している症例にプラセボを使用することは,倫理的な観点からも難しいため,randomized control test(RCT)で有効性が確認された薬物は非常に少なく,患者の希望や経験的に使用されているものが多い.男性不妊症で薬物が利きづらい理由は,精巣の精細管内ではセルトリ細胞(支持細胞)同士がタイトに結合して血液精巣関門を形成しているため,使用した薬物が精細管のなかに入りづらいためである.このように薬物療法を行うには厳しい環境にあるが,逆の観点からみると精細胞は外からの影響を受けないように守られているといえる.薬物療法の有効性を判定するためには精液検査を実施することになるが,精液検査の結果は日によって大きく変動するため,有効性を検証するのは非常に難しい.また,薬物療法の有効性を判定する指標として妊娠を指標とすると,女性側の不妊症の原因の有無,またはその程度によって妊娠の成立が大きく左右されるため,効果判定をするのが非常に難しい.

 男性不妊症の薬物療法は大きく分類すると,ホルモン療法と非ホルモン療法があるが,本稿では2006年のJournal of UrologyにKumarら1)によって書かれた総説を中心に,実際にわれわれが使用している方法について述べる.

【ART】

1.至適な卵巣刺激法とは?

著者: 田村みどり ,   石塚文平

ページ範囲:P.498 - P.501

1 はじめに

 ARTおよび無排卵症に対する調節卵巣刺激(controlled ovarian stimulation : COS)は広く行われている.当院でも,IVFの標準的なプロトコールはlong法のGnRHアゴニスト併用下のゴナドトロピン療法である.今回,特にpoor responderや35歳以上の高齢患者,卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)のリスクの高い多嚢胞性卵巣(polycystic ovary : PCO),それぞれについてのCOSのプロトコールについてできるだけ最近の文献で,randomized controlled study(RCT)や規模の大きい試験の報告を参考に調節刺激法を検討した.

2.胚盤胞移植の利点,問題点は?

著者: 高見澤聡 ,   柴原浩章 ,   鈴木光明

ページ範囲:P.502 - P.507

1 胚盤胞移植の利点と問題点(初期胚移植に比して)

 生殖補助医療(assisted reproductive technology : ART)においては長くHTF(human tubal fluid)を主体とした培養液が使用されてきたが胚盤胞到達率は低く,移植可能胚の獲得は困難であった.近年,ヒト胚において発育初期と胚盤胞形成の発育後期ではグルコースやアミノ酸代謝が異なり,発育ステージにより要求栄養素が異なることが明らかになった.そこで採卵から初期胚の発育までと,それ以降8細胞胚から胚盤胞までの発育を目的とし,その内容成分を変えそれぞれに最適化し別個に作製された培養液を,発育ステージにより切り替えて(medium change)連続使用するsequential culture mediaが開発された.1998年,Gardnerら1)は自らが開発したsequential culture mediaによる胚盤胞培養・移植により50.5%の着床率と71%の妊娠率を示しその有効性を報告した.その後,種々のsequential culture mediaが開発・市販化され,胚盤胞移植は普及した.

 現在,胚盤胞移植が初期胚移植に比して高い着床率・妊娠率をもたらすことに疑いはないが,胚盤胞到達率は初期胚と比して決して高いとはいえず,Gardnerら1)によるとゴナドトロピンに対する反応性が良好な患者を対象としても採卵当たりの胚盤胞到達率は43%であり,採卵数が少ない症例では胚盤胞が得られず移植キャンセルとなることが少なくない.2005年までのCochrane Reviewでは,いかなる条件下においても採卵後2日または3日目(day2/3)初期胚移植と採卵後5日または6日目(day5/6)胚盤胞移植を比較した場合は,症例当たりの妊娠率・生産率に差を認めなかった.最新の報告2)でもday5/6胚盤胞移植の優位性は,特定条件下(4個以上の受精卵獲得症例,初回または2回目採卵症例,卵胞数10個以上の症例,若年婦人症例,男性因子単独症例などの予後良好例でday3時に初期胚移植,胚盤胞移植をランダムに振り分け移植胚数を同数とした場合)においてのみ症例当たりの生産率が初期胚移植より良好との結果であった.胚盤胞移植では依然,症例当たりの余剰胚凍結率低下や予後良好症例以外での移植キャンセル率の増加がみられ,胚盤胞移植は選ばれた症例での単一胚移植に適応し得るものとし,day2/3初期胚移植に対する優位性については今後も検証を継続する必要があるとしている.

3.二段階胚移植法ならびに新しい胚移植法─子宮内膜刺激胚移植法(SEET)とは?

著者: 後藤栄 ,   塩谷雅英 ,   野田洋一

ページ範囲:P.509 - P.513

1 はじめに

 生殖補助医療(ART)における反復不成功例のなかに,形態良好胚を移植しているにもかかわらず妊娠に至らない着床不全症例が存在する.着床不全の原因のうち,子宮および卵管側の器質的要因として子宮粘膜下筋腫,子宮内膜ポリープ,子宮内膜症,子宮奇形,卵管水腫などが挙げられる.一方,機能的要因として性ステロイドホルモンや胚因子の刺激に対する子宮内膜の反応異常に起因する胚受容能の異常が考えられている1)

 二段階胚移植法は,胚存在下での子宮内膜分化の誘導作用を高める目的で1999年に滋賀医科大学にて考案された移植法であり2, 3),「着床周辺期の胚と子宮内膜はシグナル交換(クロストーク)をしており,胚は着床に向けて子宮内膜の局所環境を修飾している」という基礎研究の概念に基づいている4~6).二段階胚移植法ではday2に初期胚を移植し,残りの胚は培養を継続し,引き続きday5に胚盤胞を移植する.初期胚にはクロストークにより子宮内膜の胚受容能を高める働きを期待し,継続培養によって選択された胚盤胞がより高い確率で着床することを期待している.以来,特に反復ART不成功例に対する移植方法として他施設にても用いられ,良好な成績を挙げている.

 しかしながら,二段階胚移植法は少なくとも胚を2個移植するため多胎の問題を回避することはできなかった.近年,胚凍結融解技術の改善により余剰胚凍結が広く行われるに従い,多胎予防を目的として単一胚移植が推奨されるようになってきた.単一胚移植を行う場合は,初期胚移植か胚盤胞移植のいずれかを行うことになるが,これらの移植方法では二段階胚移植法のように胚と子宮内膜の相互作用を利用することができない.この問題を克服するために新たに考案した方法が子宮内膜刺激胚移植法(stimulation of endometrium─embryo transfer : SEET)7)である.

 近年,胚培養液上清には子宮内膜胚受容能促進に関与する胚由来因子が存在することが報告されている8, 9).そこで,胚培養液上清を子宮腔内に注入することにより子宮内膜が刺激を受け,胚受容に適した環境に修飾される可能性があると考え,胚盤胞移植(blastocyst transfer : BT)に先立ち,胚培養液上清を子宮腔内に注入する方法を考案し,これをSEETと命名した.SEETでは,二段階胚移植法における一段階目に移植する初期胚の代わりに胚培養液上清を子宮に注入することにより,培養液中の胚由来因子により子宮内膜の分化誘導の促進が期待でき,かつ移植胚数は胚盤胞1個に制限することが可能となり,多胎の問題を克服することができる.本稿では二段階胚移植法のこれまでの成績と新しい移植法であるSEETについて紹介したい.

4.至適な胚移植法とは?

著者: 向田哲規 ,   高橋克彦

ページ範囲:P.515 - P.519

1 はじめに

 胚移植(embryo transfer : ET)は生殖補助医療(ART)の中心であるIVFにおいて最も重要な手技の1つであるにもかかわらず,ほかのテーマと比べて系統的に考察されることがなく,いまだ十分な注意が払われていない.MEDLINEによる論文検索では1978~2005年の間に,ヒトIVFに関しては16,445の論文があるが,ETに関するものは394と全体の2.3%にすぎない.

 ETは,カテーテルを子宮内に挿入し,少量の培養液と一緒に胚を注入する簡単な手技と考えられるが,実際にはそれほど単純なものではなく,その手技が直接IVFの成績に大きく影響するのは紛れもない事実である.同一施設でもETを行う医師によって妊娠率に有意な差がみられたとの報告1, 2)もあるが,ETの手順,手技を標準化(standardize)し,その施行を徹底するとIVFの成功率はどの医師によっても変わらないとの報告3)もある.イギリスにおける80人の不妊症専門医へのアンケートでは,IVFの成績に最も影響を与える因子にETを挙げている4).このようにETは患者管理,卵巣刺激,採卵,胚培養などの各ART手技の総仕上げであり,それらの結果を決定する最も重要な手技と位置づけても過言ではない.

 この稿では,ETの手技に関係する要因について,広島HARTクリニックで行っている手技を紹介しながら考察を加える.

5.凍結胚移植周期の管理法は?

著者: 藤野祐司

ページ範囲:P.520 - P.523

1 はじめに

 生殖医療技術の進歩とともに受精卵の凍結技術も緩慢凍結法からガラス化凍結法へと革新的に進化し,胚の凍結保存は生殖医療には欠かすことのできない必須技術となっている.ヒトでの胚凍結技術,凍結胚移植の歴史は約25年を経過しているが,当初は移植の際に残った余剰胚の凍結保存として4~8細胞期胚の凍結から始まり,卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)予防のための前核期胚の全胚凍結保存,最近では胚盤胞期胚の選択的凍結保存と進歩し,生殖補助医療成績向上の重要な手技の1つとなっている.

 近年の排卵誘発法の進歩などに伴い,多数の良好胚が得られることが多くなっている.しかしながら,移植胚数の増加は多胎妊娠の増加につながることが明らかであり,日本産科婦人科学会では移植胚数を3個以下に制限するように会告を示しているが,多胎妊娠は依然として大きな周産期医療の問題として残っている.そこで“凍結融解胚の単一移植”を有効に実施することにより,多胎妊娠率を増加させずに妊娠率を向上させることが可能であると考える.

 本稿では,凍結胚移植周期の管理法の一助とすべく,着床を取りまくホルモン環境と“implantation window”という概念,ならびに凍結胚移植に必要な一般的な子宮内膜調整方法を概説するとともに,われわれの凍結胚移植の成績を紹介する.

6.未熟卵子での体外受精法とは?

著者: 福田愛作

ページ範囲:P.525 - P.531

1 はじめに

 現代の不妊治療はSteptoe&Edwardsによる体外受精胚移植法(in vitro fertilization and embryo transfer : IVF-ET)の成功により生殖補助医療(assisted reproductive technology : ART)の扉が開かれ,卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection : ICSI)がARTの普及を急速に拡大させた.これと相俟って卵巣刺激法においてもGnRHアゴニストやアンタゴニストの開発が複数の成熟卵の確実な回収を可能とし,ARTの主流は卵巣刺激による多数の成熟卵子を用いる方法が主流となった.その一方で,卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)は,GnRHアンタゴニストの使用や受精卵の全凍結によりある程度のリスクが軽減されたとはいえ,ART専門医にとって依然として最も懸念される副作用の1つである.

 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は性成熟女性の約5%という比較的高い頻度にみられる排卵障害を主とする疾患であり,その40~80%に妊孕性に問題があるといわれ,不妊治療の現場では古くからよく遭遇される疾患である.その一般不妊治療で最も懸念される副作用は高次多胎とOHSSである.また経腟超音波の普及にともない,正常周期婦人でも20~30%に多嚢胞性卵巣(PCO)を認めることが明らかとなっている.すなわち,ARTの適応患者においてもPCOSやPCOの患者が相当数含まれることとなり,卵巣刺激に当たってOHSSの危険を伴うことは避けられない.

 未熟卵体外成熟-体外受精-胚移植法(in vitro maturation, in vitro fertilization and embryo-transfer : IVM-IVF)は,無刺激もしくは少量FSH/HMGを投与した卵巣の小卵胞より未成熟卵を採取し,体外成熟卵に顕微授精を行い,得られた受精卵を子宮内に移植する方法である.IVM-IVFの臨床応用は1991年に未熟卵由来胚がドナー胚として用いられ,妊娠出産に成功したのに始まり1),1994年にPCOS患者に不妊治療の一環として初めて用いられた2)比較的新しいARTの選択肢である.その最大の利点は,卵巣刺激のためのゴナドトロピン注射をほとんどもしくはまったく必要としない点にある.そのため卵巣刺激の最も危険な副作用であるOHSS発生の危険性がないばかりではなく,注射に伴う肉体的,精神的苦痛さらには時間的制約,経済的負担軽減につながる.また,いまだ明らかとはなっていないゴナドトロピン投与による長期的影響に関する懸念もない3).画一的にすべての患者に標準的なプロトコールを当てはめるのではなく,個々の症例に適した刺激を選択するという近年のfriendly ARTの方向性と一致するものである.その一方で,IVM-IVFによる妊娠率はIVF-ETに比べ低いといわれてきたが,世界的にみてもその妊娠率は徐々に上昇してきており,PCOSに対してはARTの選択肢の1つとしての地位を確立しつつある(表1)4~7).また,正常月経周期婦人や体外受精反復不成功例に対しても応用され成果を上げている8, 9).当院では本邦初の成功以来10, 11),方法に改善を重ね,現在ではPCOSおよびPCO症例に対してIVM-IVFをARTの第一選択としている.

 本稿ではPCOS(PCO症例を含む)に対する当院でのIVM-IVFの方法を詳述するとともに最新の妊娠率を呈示する.

7.卵子の加齢への対処法は?

著者: 齊藤英和 ,   中川浩次 ,   高橋祐司

ページ範囲:P.532 - P.537

1 はじめに

 生殖医療においては,女性の年齢は妊娠を左右する大きな要因である.近年,高齢の不妊女性が増加しており,加齢を原因とする不妊に対する検査法の確立や治療法の開発の必要性がある.また,高齢になる以前に児を持つことができる社会環境を整備することが社会的な緊急課題としてクローズアップされている.本稿では,生殖医療における女性の加齢について考察し,われわれの取り組みについて述べる.

8.着床前遺伝子診断(PGD)の適応は?

著者: 末岡浩

ページ範囲:P.538 - P.543

1 はじめに

 生殖医学は本来遺伝形質を後世に継代するための医学手段であり,体外受精の発展を中心として飛躍的な進展を遂げている.同時に遺伝医療はその情報の解析によって生殖医療と密接に関連している.その融合技術として,着床前遺伝子診断(preimplantation genetic diagnosis : PGD)の概念が発生した1).さらに,PCR(polymerase chain reaction)法やFISH(fluorescence in situ hybridization)法などを用いて遺伝学的情報の診断を単一細胞から得ることができるようになったことが必要条件となって発展に至っている.

 その一方で,技術的な発展とは別に倫理面での議論が表在化し,新たに社会に公開した意見交換を経て,さまざまな意見のなかから本邦でのあるべき実施の形が議論され,実施に至った経緯がある.したがって,適応を論ずる場合に技術面のみならず,倫理面における対象も重要な論点である.遺伝医療として特徴も含め,実施に至るまでの多様な要素に配慮する必要がある.

III 婦人科癌治療 【子宮頸癌】

1.子宮頸癌における円錐切除の限界は?

著者: 中西透

ページ範囲:P.545 - P.549

1 はじめに

 近年の診断・治療技術の進歩や子宮癌検診の普及に伴い,子宮頸癌の多くが初期で診断されるようになった.日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の子宮頸癌患者年報によると,2003~2005年の45.2%がFIGO 0期(上皮内癌),10.4%がIa期(微小浸潤癌)で診断されている.これら初期癌は生命予後が非常に良好であることから,子宮頸癌全体の治療成績も比較的良好である.

 以前これら初期癌に対する治療は子宮全摘術が一般的で,子宮頸部円錐切除術は縮小治療であるため根治性が劣ると考えられ,その適用は子宮体部・妊孕能温存目的のみに限定されていた.しかし,比較的低侵襲であることや,手術機器の改良により安全かつ簡便に施行できるようになったことなどから,子宮頸部上皮内癌~微小浸潤癌に対する手術治療として,また子宮頸部異型上皮に対する予防的治療として,近年は年齢など適応を限定せず広く行われるようになった.

 ここから本題に入るのだが,本特集の趣旨を考えると初期子宮頸癌に対する子宮頸部円錐切除術の適応について述べるべきである.しかし,近年はエビデンスによる治療の標準化の時代にあり,わが国でも子宮頸癌についてガイドラインが作成されるなど1),統一した治療が望まれるようになった.このような事情もあり,今回はガイドラインに基づく標準治療とそれについての考察,子宮頸癌に対する円錐切除術の当院での経験について,概説する.

2.子宮頸癌における術前化学療法の適応は?

著者: 熊谷晴介 ,   杉山徹

ページ範囲:P.550 - P.559

1 はじめに

 局所進行子宮頸癌に対する術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy : NAC)は,(1)腫瘍縮小に伴う手術完遂度および適応症例の増加,(2)潜在・微小転移巣の制御,(3)縮小手術の可能性,などを目的として種々の臨床研究が行われてきた.近年,有効な抗癌剤の導入により卵巣癌に準じた奏効率が得られ,メタアナリシスでも一部に有用性が報告されている.しかしながら,NAC導入後約20年が経過した現時点で,NAC後の手術の根治性と機能温存,術後治療などの重要な臨床事項は依然不明であり,標準的治療には至っていない.今後,早急に解決すべき課題は以下の4点であろう.(1)対象,(2)推奨レジメン,適切なサイクル数,(3)同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy : CCRT)との比較試験,(4)組織型別効果(腺癌)の研究.

 これまでは小規模な第2相試験やランダム化比較試験(randomized controlled trial : RCT)が多く,対象やレジメンも異なることより,十分なエビデンスが確立できない.特に欧米からの研究・報告が些少なことが大きな原因の1つと考えられる.これは局所進行症例に対する治療方針に関して,手術療法が中心の本邦と,放射線治療が中心の欧米との歴史的な治療スタンスの相違に加え,近年の欧米でのCCRTの標準化が大きく影響している.これらを踏まえ,本稿では子宮頸癌に対するNACに関して,その現状と今後の展望を中心に概説する.

3.子宮頸癌における放射線化学療法の有用性は?

著者: 高仲強 ,   京哲

ページ範囲:P.560 - P.565

1 はじめに

 子宮頸癌に対する放射線化学療法は,1999年に米国National Cancer Institute(NCI)が5つの無作為比較試験の成績をふまえ,子宮頸癌に対するシスプラチン(CDDP)を用いた同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy : CCRT)の有用性を緊急アナウンス1)したことから,CCRTが子宮頸癌に対する標準治療としてにわかにクローズアップされ,現在では高いエビデンスを有する治療としてCDDPをbaseとしたCCRT(CDDP based CCRT)が米国のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインやPDQ(R)(Physician Data Query(R))で子宮頸癌に対する標準治療として推奨されている.

 本邦においても子宮頸癌に対する放射線化学療法としてCCRTの適用が広まっている.しかし,本邦では標準治療としてのCCRTはいまだ存在せず,各施設独自の治療法で行われているのが現状と考えられる.今回われわれは,金沢大学産婦人科と放射線治療科における子宮頸癌に対する放射線化学療法としてのCCRTを紹介し,子宮頸癌における放射線化学療法の有用性を考察する.

4.子宮頸癌における術後放射線照射のエビデンスは?

著者: 浅川勇雄 ,   長谷川正俊

ページ範囲:P.566 - P.571

1 はじめに

 わが国では一般的に,FIGOII期以下の切除可能な子宮頸癌に対しては手術療法が主として行われている1).術後照射は骨盤内再発の予防ならびに治療成績の向上を目的として,予後不良因子を有する症例に対して行われてきた.そのため,遡及的な報告が多く,前向きな臨床試験は少ない.したがって,術後照射の有用性については明確なエビデンスは今のところないというのが現状である2)

5.HPVワクチンによる子宮頸癌予防戦略は?

著者: 吉川裕之

ページ範囲:P.572 - P.575

1 はじめに

 性器に感染するヒトパピローマウイルス(human papillomavirus : HPV)は,子宮頸癌の発生に深く関与している.40程度の型が知られる性器HPVのなかで,特定の約15の型(16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,69,73,82型など)が,子宮頸癌関連HPV(これをhigh-risk typesともいう)として知られ,最も高頻度に検出されるのはHPV16であり,次いでHPV18である1).子宮頸癌の原因とはならないHPVはlow-risk typesと呼ばれ,尖圭コンジローマや若年性喉頭乳頭種の原因であるHPV6,11型が代表的である.

 HPV感染は最も頻度の高い性感染(sexually transmitted infections : STI)で,20歳前後の女性のコホート研究では3~5年で40~60%にHPV感染が起こる2).HPV感染からみると,子宮頸部のHPV感染のうち癌にまで至るものはごく一部であり,むしろ例外的なイベントといえる.HPV癌蛋白であるE6/E7の機能とHPV感染細胞に対する細胞免疫が重要な鍵を握っている.HPV感染は子宮頸癌発生の必要条件であっても十分条件とはいえないが,その感染を予防することで,子宮頸癌発生の制圧が期待できる.

6.子宮頸癌における頸部摘出術の適応と問題点は?

著者: 福地剛

ページ範囲:P.577 - P.581

1 はじめに

 いくつかの施設から報告されているように,あるいは実際の臨床で実感されるように,若年子宮頸癌患者が増加し,妊孕能温存治療を検討することが増えてきた.先ごろ発刊された「子宮頸癌治療ガイドライン」にもあるように,臨床進行期Ia1期までの微小浸潤扁平上皮癌症例に対する円錐切除術の適応に関しては広くコンセンサスが得られているが,それ以上の病変に対しては根治的な治療が行われており,また子宮頸部初期腺癌に関しては現在のところ,ごく限定された症例のみが温存の対象と考えられている1).したがって,現状では臨床進行期Ia2期以上の扁平上皮癌と0期を除く初期腺癌に関してはリンパ節郭清を含めた根治的な子宮摘出手術が標準治療として行われ,この場合,通常の妊孕能は喪失することになる.

 Radical trachelectomy(広汎性子宮頸部摘出術)は根治治療の対象となる臨床進行期Ia2あるいはIb1期の浸潤子宮頸癌症例に対する妊孕能温存術式として開発され,最近日本においても報告が散見されるようになってきた.先の「ガイドライン」おいて本術式はIa2期に対するオプションとして記載されるにとどまったが,実際には複数の施設で広く適応されつつある.本稿においては,術式の歴史,適応,治療成績を概説し,さらに問題点についても触れたい.

【子宮体癌】

1.子宮体癌におけるホルモン治療の限界は?

著者: 三橋暁 ,   海野洋一 ,   生水真紀夫

ページ範囲:P.583 - P.589

1 はじめに

 脂肪の過剰摂取など食事の欧米化・晩婚化・出産回数の低下などライフスタイルの変化に伴い,本邦における子宮体癌発生頻度は年々増加している.日産婦婦人科腫瘍委員会の子宮体癌I~IV期の登録数は,1994年の2,115例から2005年の4,267例に増加している.また40歳未満の症例の占める割合も,それぞれ5.2%(109例)から7%(298例)と上昇しており,妊孕性温存が必要な年齢での子宮体癌数が増加傾向にある1)

 子宮体癌は,エストロゲン依存性のtype1と,非依存性のtype2とに分けることができる.Type1は,組織学的にG1・G2の類内膜腺癌で子宮内膜増殖症の共存を認めるものであり,体癌全体の80%を占める.近年このtype1が増加しており,早期に診断され,予後の良好な例が多い.一方,type2は,組織学的に漿液性腺癌・明細胞性腺癌・G3の類内膜腺癌などであり,高齢者に多く,一般に予後が悪い.

 子宮体癌の多くがホルモン依存性であることから,従来プロゲスチンを用いたホルモン療法が再発・進行時の補助治療として行われてきた.欧米では,プロゲスチン療法が性ステロイドホルモンレセプター陽性再発子宮体癌の治療の中心となっている.さらにプロゲスチン療法は,若年者に対して子宮温存を目的とする治療に応用されている.

 プロゲスチン以外に,GnRHアナログ,アロマターゼ阻害剤,選択的エストロゲン受容体作用調節薬(selective estrogen receptor modulator : SERM)なども,再発症例に試みられてきているが,その効果は満足できるものではない.本稿では,ホルモン療法をその治療目標別に,(1)進行・再発子宮体癌に対するホルモン治療と,(2)若年性体癌に対する妊孕性温存療法とに分けて,おのおのの治療法の限界を中心に解説する.

2.子宮体癌における手術術式は?

著者: 塩沢丹里 ,   小西郁生

ページ範囲:P.590 - P.593

1 はじめに

 子宮体癌は近年わが国で著明な増加傾向を示している.子宮頸癌の多くはI期癌であり,手術を中心とした治療法で比較的良好な治療成績が得られている癌種である.しかしながら,一口に手術療法といっても広汎子宮全摘術や傍大動脈リンパ節郭清術なども含む多岐にわたる術式が施行されてきている.この理由として,手術療法の適応とその根拠に関して確かな文献的証拠が乏しいうえに,わが国と比較して放射線の効果を高く評価する傾向のある欧米との考え方の違いもあり,各施設がある程度試行錯誤的に対応してきた面があると考えられる.こういった状況に対応するために,2006年に日本婦人科腫瘍学会より子宮体癌治療ガイドラインが出版された.本稿のテーマである体癌の手術術式に関しては,多くの議論を経てガイドラインとして見解が示されており,またその背景や問題点についても詳述されている.しかしながら,これらの見解が十分な学問的論拠にもとづいて確立されているものではなく,今なお多くの議論の余地を残していることはガイドライン自体に記載されている通りである.

 本稿では,体癌の手術における問題点に関し,ガイドラインの記載内容を了解事項とし,ガイドラインで引用されている論文が2005年までであるので,主にその後の新しい文献を中心に紹介する.

3.子宮体癌腹腔細胞診陽性は予後因子か?

著者: 中山裕樹 ,   小野瀬亮 ,   加藤久盛

ページ範囲:P.594 - P.597

1 はじめに

 1988年,国際産科婦人科連合(Federation International de Gynecologie et Obstetrique : FIGO)が子宮体癌の進行期分類を改訂し1),腹腔洗浄細胞診が陽性の場合は手術進行期IIIa期に分類されることとなった.子宮体癌の大部分はI期であるため,III期は「進行癌」と認識されることが多く,ほとんどの施設で術後補助療法を追加しているのが現状であろう.

 一方,III期体癌のなかでは,腹腔洗浄細胞診陽性のみの例は,比較的予後がよいことが知られており,III期体癌のなかでも別扱いすべきであるという意見もある.2006年に発行された日本婦人科腫瘍学会編「子宮体癌治療ガイドライン」2)でも,CQ12「腹腔細胞診陽性は独立した予後不良因子か?」という1項を設けており,さらに術後再発リスク分類で腹腔洗浄細胞診陽性は高リスクではなく,中リスクに分類されている.

 このように腹腔洗浄細胞診陽性については,理解と取り扱いについて変遷があり,必ずしも合意が得られているわけではないので,本稿で整理してみたい.

4.子宮体癌におけるリンパ節郭清の適応と範囲は?

著者: 清水敬生

ページ範囲:P.598 - P.603

1 はじめに

 米国NCCN(The National Comprehensive Cancer Network)guideline(2007年)は,臨床進行期I期のすべての子宮体癌(体癌)に対して,「単純子宮全摘+両側付属器切除(両付切)+骨盤~傍大動脈リンパ節郭清+腹腔内細胞診」という術式を推奨している.日本の子宮体癌治療ガイドライン(2006年版)では,術前診断で類内膜腺癌G1相当かつIA期相当の症例に対しては「単純子宮全摘+両付切+腹腔内細胞診」を,G2,IB期相当は「単純子宮全摘+両付切+骨盤リンパ節郭清+腹腔内細胞診」,その他のすべての子宮体癌には「単純子宮全摘+両付切+骨盤~傍大動脈リンパ節郭清+腹腔内細胞診」を推奨している.文献上,臨床進行期I期において,comprehensive surgeryを施行すると,子宮外臓器への転移率は,卵巣 : 5~15%,腹水 : 6~10%,骨盤リンパ節 : 9.3~15%,傍大動脈リンパ節 : 5.5~16%,虫垂 : 4~5%,大網 : 5~8%と報告されている(表1).ちなみに,大網切除が必須とされている卵巣癌apparent stageIでの大網転移率は約7%である.

 子宮外に転移を認めた臨床進行期I期症例の5年生存率は腹水,骨盤リンパ節陽性例で60~70%,付属器,傍大動脈リンパ節転移例では35~70%程度まで低下する.また,術前I期と診断された症例の10~20%以上は手術進行期(FIGO)II期以上であり,予後も不良である1).これらの事実から,従来行われていた,あるいは今なお行われている「単純子宮全摘+両付切」では,診断,治療の両面において不十分であることに議論の余地はない.最近になってやっと,後腹膜リンパ節郭清および大網切除の妥当性が認識されつつある.

 本稿では,臨床進行期I期における後腹膜リンパ節郭清の必要性について,現状と筆者の考えを概説する.

5.子宮体癌における術後補助療法は?

著者: 山川洋光 ,   今野良

ページ範囲:P.604 - P.611

1 はじめに

 子宮体癌に対する治療の第一選択は手術療法である.標準術式として,子宮全摘,両側付属器摘出,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清/生検,腹腔洗浄細胞診などが行われる.子宮体癌の術後補助療法は個々の症例の再発リスク評価に基づいて,再発制御と生存率改善を目的に決定される1)

 子宮体癌の治療戦略は,欧米と本邦において若干の違いがある.本邦では術前に可能な限り詳細に臨床進行期を決定し,それにより手術療法の個別化をはかるとともに,後腹膜リンパ節郭清を積極的に行う傾向がある.そのため術後補助療法は,放射線よりも化学療法を選ぶ傾向にある.また,腟壁を十分に切除するので,欧米ではしばしば行われる腔内照射を施行することは少ない.一方,欧米では初回治療は単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術を行い,その摘出標本の病理組織学的検討から再発リスクを評価し,リスク別に術後補助療法を選択している.リンパ節郭清に関しては生検にとどめたり,省略することもある.また,腟壁の再発を防止するために腔内照射が行われている.これには従来は放射線療法が主治療に行われていたという背景がある.

 術後補助療法のrandomized controlled trial(RCT)は多くは欧米からの報告であることから,報告される術後治療指針は本邦の現状とは乖離していることも多い.

 本稿では,子宮体癌の術後補助療法の現況,および当科で行っている術後補助療法の実際について述べる.

【卵巣癌】

1.卵巣癌における妊孕性温存療法の限界は?―上皮性卵巣癌に対する妊孕性温存手術

著者: 樋口壽宏 ,   堀内由佳 ,   岡本尊子

ページ範囲:P.612 - P.617

1 はじめに

 近年の集学的治療の導入および新たな化学療法レジメンの開発により,悪性腫瘍治療の成績は一定の改善を認めている.実際欧米での統計では,主要な悪性腫瘍患者の5年生存率は1975~1977年の50%から1996~2002年の66%へと有意に改善している.特に15歳以下の小児患者では同時期の予後比較で5年生存期間が58%から79%へと改善が著明であり,大多数の小児患者が悪性腫瘍を克服できる時代になっていることを示している.また,女性悪性腫瘍患者の5~6%は40歳以下で発症しており,その頻度は健常人約50人に1人の割合になる1).この結果は,妊娠・出産を終える前に悪性腫瘍に罹患する女性が少なくないことを示している.

 悪性腫瘍の治療戦略は,従来の根治性向上を目指した拡大手術から,乳癌における温存手術と術後放射線療法の組み合わせに代表される,EBMに基づいた機能温存術式や内視鏡手術による手術の低侵襲化の導入へとその概念は大きく変遷しつつある.ここで特に婦人科領域では,手術侵襲に加えて,臓器温存による妊孕性保持が他領域にはない機能温存の特徴として挙げられる.婦人科領域の代表的な悪性疾患である子宮頸癌,子宮体癌および卵巣癌に目を向けてみると,子宮頸癌に対しては子宮体部を温存する広汎性子宮頸部摘出術が,子宮体癌に対しては初期病変に対する黄体ホルモン療法が妊孕性温存治療として知られている.一方卵巣に関しては,化学療法が奏効する胚細胞腫瘍に関しては妊孕性温存手術と化学療法の組み合わせが定着している2).しかしながら,上皮性卵巣癌に目を向けると,手術による腫瘍摘出の完遂度が予後改善に不可欠であるとするmaximum cytoreductionの概念が妊孕性温存と相反していること,卵巣癌に対する根治を目的とした標準術式自体が欧米と本邦ではいまだ相違があることから,若年症例に対する妊孕性温存手術の適応およびその術式に関して一定の見解に至っていないのが現状である.しかしながら,卵巣癌は最近の画像診断をもってしても術前の病変進行の正確な評価は時に困難であり,開腹時に予想より病変が進行しており,妊孕性温存の適応につき苦慮することが少なくない.

 そこで本稿では,上皮性卵巣癌に対する妊孕性温存手術の適応とその適用の実際について,概説したい.

2.卵巣癌における傍大動脈リンパ節郭清の治療効果は?

著者: 斉藤豪

ページ範囲:P.619 - P.623

1 はじめに

 卵巣癌はほかの婦人科悪性腫瘍と比較しても高い抗癌剤感受性を有し,抗癌剤の投与法・用量や手術療法についてもいち早くコンセンサスが得られ,本邦でも最も早く治療ガイドラインが刊行されている.しかし,卵巣癌手術における後腹膜リンパ節郭清,特に傍大動脈リンパ節郭清については,進行期を決定するための診断的意義はコンセンサスが得られているものの,その治療的効果については大規模試験が困難であることから,卵巣癌治療ガイドラインにも「後腹膜リンパ節郭清術が予後改善に寄与するという臨床比較試験の報告はなく,治療的効果に関しては不明である」と記載されている.

 術後合併症は多くの因子に起因して生じるものであり,傍大動脈リンパ節郭清をすることによってどのくらいの割合で合併症が生じるかについて論ずるのは難しいが,一般には,(1)手術時間の延長とそれに伴う出血量の増加,(2)術後のイレウス,(3)リンパ嚢胞およびリンパ浮腫,(4)乳び腹水などが挙げられる.加藤ら1)の報告によると,骨盤リンパ節郭清術のみの術後リンパ浮腫の頻度12.8%に対し,骨盤+傍大動脈リンパ節郭清術後の頻度は20.6%と有意に増加し,後腹膜リンパ節郭清の範囲を拡大することにより下肢リンパ浮腫の頻度は増加するとされる.ひとたびリンパ浮腫が発生すると足の可動性の障害や疼痛ばかりでなく,小さな傷でも感染を起こし蜂窩織炎などを併発することも稀ではない.したがって,必ずしも必要がないものであれば,患者の術後QOL向上のためにリンパ節郭清を省略あるいはその範囲を縮小することも今後考慮されるべき課題である.

 本稿では,ガイドラインでも「治療的効果は不明」とされている傍大動脈リンパ節郭清の「治療効果」について論ずることはきわめて困難なことであるが,「腫瘍細胞を完全に除去できる」とする立場と「リンパ節郭清はあくまで進行期決定のため」とする立場を考慮しながら,その是非を考えてみたい.

3.卵巣癌におけるセカンドラインの化学療法は?

著者: 田部宏 ,   高倉聡 ,   落合和徳

ページ範囲:P.624 - P.629

1 はじめに

 再発・再燃卵巣癌の治療に当たっては,初回手術の術式,病理組織診断,初回化学療法のレジメンを確認することが重要である.消化器癌や乳癌など他臓器癌が重複している可能性や,初回化学療法に標準治療が行われていなかったり,標準的レジメンでも投与量が十分でない症例もある.特に最近再発・再燃時にセカンドオピニオンを希望し,治療施設を変更する症例も多くなっているため,前医からの詳細な報告書や初回手術検体のプレパラートを借用,検討することも必要となる.

 そのうえで今回,卵巣癌に対する再発,再燃の診断法や治療法の選択,セカンドライン化学療法について述べる.2007年11月に卵巣癌治療ガイドライン第2版1)も出版されており,合わせて参考とされたい.

4.卵巣癌における二次的な腫瘍摘出の適応は?

著者: 大田俊一郎 ,   牛嶋公生 ,   嘉村敏治

ページ範囲:P.630 - P.635

1 はじめに

 卵巣癌の標準治療は,初回開腹術(primary debulking surgery : PDS)にて卵巣癌であることの確定診断,臨床進行期の決定,病理組織診断,可及的最大限の腫瘍減量術を行い,術後に化学療法を行う手術先行治療である.しかし,卵巣癌の症例の約半数が臨床進行期III期以上であり,PDSでのoptimal surgery(残存腫瘍径10 mm未満)の達成率は40%1, 2)にすぎないのも現実である.そのため,近年ではPDSを行わずに数コースの術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy : NAC)で腫瘍の縮小や全身状態(performance status : PS)の改善をはかった後に,腫瘍摘出術(interval debulking surgery : IDS)を行い,optimal surgeryを目指す化学療法先行治療も注目されており,標準治療とのランダム化試験3)が欧州と日本で進行中である.一方,卵巣癌の臨床進行期III期以上の症例では,初回治療が奏効し臨床的寛解に至っても,その半数以上に再発を認める4)ために,QOLの改善や生存期間の延長を目的として,二次的な腫瘍摘出術を行うこともある.

 2007年に改訂された卵巣がん治療ガイドライン5)の上皮性卵巣腫瘍の手術療法に関する分類では,interval debulking(cytoreductive)surgery(IDS, ICS : IDS),secondary debulking(cytoreductive)surgery(SDS, SCS : SDS),second look operation(SLOあるいはSLO/SDS)のいずれもが初回化学療法中,あるいは初回化学療法後に行われる二次的な腫瘍摘出術に該当すると思われる(表1).しかし,卵巣癌は浸潤形式が主として腹膜播種であり,症例によりさまざまな腫瘍の分布をとるため,二次的な腫瘍摘出術を行った場合でも腹腔内所見によっては開腹術の目的を果たせないことがある.

 本稿では,二次的な腫瘍摘出術としてIDSとSDSについて,文献的レビューとともに臨床的な意義を考察する.

5.卵巣癌治療後の定期検診の方法は?

著者: 長谷川清志 ,   南元人 ,   宇田川康博

ページ範囲:P.636 - P.641

1 定期検診の間隔は?

 初回治療により臨床的寛解が得られた症例に対する適切な定期検診の間隔に関してのエビデンスはない.NIH Consensus Statementでは,2年までは3~4か月ごと,2年以降は検診間隔を適宜あけてもよいとしている1).また,NCCN(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインでは,2年までは2~4か月ごと,2年以降5年までは6か月ごと,5年以降は毎年としている2).一方,「卵巣がん治療ガイドライン2007年版」では,一例として1年までは1~2か月ごと,1年以降2年までは2~3か月ごと,2年以降3年までは3~4か月ごと,3年以降5年までは4~6か月ごと,5年以降は6~12か月ごとと比較的慎重な対応を呈示している3).以上の検診間隔はあくまでも1つの目安であり,実際には初回治療時のFIGOステージ,optimal surgeryが可能であったか否か,あるいは組織型や分化度の相違により個別化されてもよいかもしれない.

 Ia~IIa期のハイリスク早期癌に関する治療成績からは,再発までの期間の中央値は22~29か月とされており4~6),再発部位はGadducciら6)によると,骨盤内(54%),腹腔内(49%),後腹膜リンパ節(13%),遠隔転移(13%)と骨盤内あるいは腹腔内が多数を占めている.再発の危険因子として,FIGOサブステージ,組織型(clear cell adenocarcinoma vs others),組織分化度(G3 or G2 vs G1)などが挙げられている4~7).一方,IIb~IV期などの進行癌に関しては,腫瘍減量手術およびpaclitaxel/platinum療法により臨床的CRが得られた症例の約75%,病理学的CRが得られた症例の約50%がその後再発するとされ,PFSの中央値は17~21か月とされている8~10).再発部位は,骨盤内(48%),腹腔内(45%),後腹膜リンパ節(14%),遠隔転移(21%)と報告されている10).再発の危険因子としては,組織分化度(G3 or G2 vs G1)と初回手術時の残存腫瘍径(>2 cm or 1~2 cm vs<1 cm)などが高危険因子とされている.また,2年以降の再発は進行癌より早期癌に多いとの報告11)や,進行癌での再発は1年以内に約50%,2年以内に約80%発生するとの報告12)があるものの,早期癌と進行癌の検診間隔を区別する根拠は見当たらず,再発の危険因子を有する症例では少なくとも2年間はより厳重な定期検診が必要とも思われる.しかしながら,再発の早期発見,早期治療が予後改善につながるか否かはいまだ不明確であるのみならず,当然のことながら,医療経済効率にも配慮した判断が必要である.

6.卵巣癌における分子標的治療の展望は?

著者: 寺井義人 ,   大道正英

ページ範囲:P.643 - P.649

1 はじめに

 卵巣癌はprimary cytoreductive surgeryとadjuvant chemotherapyが基本的治療であるが,その60%を占める進行癌においては,初回治療として投与されるTC(carboplatin+paclitaxel)療法により50~60%が完全寛解に至るにもかかわらず,いまだに5年生存率が20~30%と予後が悪い癌として知られている.その理由として,当初抗癌剤に感受性を示していても次第に耐性を示す場合が多いことが考えられる.ことに,転移病巣は多くの場合に抗癌剤耐性を示す.したがって,1st lineのレジメンとして代表的なシスプラチンおよびタキソールの耐性化の分子機構の解析とその解除を可能にすることは,卵巣癌に対する新たな治療戦略を考えるに当たり重要な課題である.

 癌の増殖・浸潤・転移は種々の機構からなるが,いずれにもシグナル伝達関連因子の関与が知られ,また抗癌剤の感受性はアポトーシスシグナルと生存シグナルのバランスにより決定されるといわれている.生存シグナルとしては,増殖因子の基本的なシグナル伝達経路を構成するmitogen-activated protein(MAP)kinaseファミリーの1つであるextracellular signal-regulated kinase(ERK)経路と,癌化学療法の標的となることが示唆されているPI-3 kinase-Akt経路が知られている.また,アポトーシスシグナルのBcl-2 associated death protein(BAD)は,そのセリン136残基がAktにより,セリン112残基はERK経路によりリン酸化されること,すなわちERKとAkt経路が合流してBADのアポトーシスシグナルとしての機能を抑制し,生存シグナルとして作用することが報告されている.近年,Aktの基質で転写因子でもあるNFκBは生存シグナルとして作用するのみならず,浸潤・血管新生にも関与することが明らかになった.そこで,われわれは,生存シグナルであるERK,Akt,BAD,NFκBを標的分子として着目し,それらがシスプラチンなどの白金製剤およびタキソールなどのタキサン製剤に対する耐性化に関与しているのか否かを検討し,それらの阻害剤を用いた分子標的治療の可能性について検討した.

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編集後記

著者: 倉智博久

ページ範囲:P.656 - P.656

 先日の,北京オリンピック予選の“星野ジャパン”の戦いぶりに感動した方々も多かったのではないかと思います.とくに,最終戦の台湾戦,1点リードされていた場面で,2つのスクイズを成功させて大量得点に結びつけた場面は,まさに,私を含めてスポーツファンの気持ちを「しびれさせた」のではないでしょうか.この星野ジャパンは,実力のある若い選手で主に構成されていることも,今年の期待につながるものがあるように感じます.しかし,一方,今回の予選で活躍した新井らも,今年の成績いかんでは,本選の選手としては選ばれない可能性もあるわけですから厳しいものです.ともあれ,オリンピック出場が決まったあとの,星野監督を中心とした盛り上がりは立派なもので,チームワークの良さと,監督を中心とした全員のまとまりの重要性を感じさせられました.

 今一人,監督あるいは指導者として立派だと感じさせられるのはサッカー日本代表のオシム監督でした.彼は,ボスニア紛争を体験し,欧州を渡り歩いた体験に基づく視点が,社会的な発言についても重みを与えていると思われます.残念ながら脳梗塞で倒れ,志半ばで岡田監督にバトンタッチせざるを得ない情況となってしまいましたが,オシムさんの最近の驚異的な回復力には驚かされます.オシムさんの1日も早い現場復帰を祈るとともに,岡田監督の前回に劣らない名采配を期待したいものです.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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