文献詳細
今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
I 周産期管理 【分娩・産褥管理】
文献概要
1 はじめに
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)はこれまでわが国では比較的稀であるとされていたが,生活習慣の欧米化などに伴い近年急速に増加している1~3).血栓症で臨床的に問題となるのは,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)とそれに起因する肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)である.PTEはDVTの一部(5~10%)に発症する疾患であるが,一度発症するとその症状は重篤であり致命的となるので,急速な対処が必要となる.妊娠中は以下の理由で,VTEが生じやすくなっている.すなわち,(1)血液凝固能亢進,線溶能低下,血小板活性化,プロテインS(PS)活性低下,(2)女性ホルモンの静脈平滑筋弛緩作用,(3)増大した妊娠子宮による腸骨静脈・下大静脈の圧迫,(4)帝王切開などの手術操作による総腸骨静脈領域の血管(特に内皮)障害および術後の臥床による血液うっ滞,などである.
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)はこれまでわが国では比較的稀であるとされていたが,生活習慣の欧米化などに伴い近年急速に増加している1~3).血栓症で臨床的に問題となるのは,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)とそれに起因する肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)である.PTEはDVTの一部(5~10%)に発症する疾患であるが,一度発症するとその症状は重篤であり致命的となるので,急速な対処が必要となる.妊娠中は以下の理由で,VTEが生じやすくなっている.すなわち,(1)血液凝固能亢進,線溶能低下,血小板活性化,プロテインS(PS)活性低下,(2)女性ホルモンの静脈平滑筋弛緩作用,(3)増大した妊娠子宮による腸骨静脈・下大静脈の圧迫,(4)帝王切開などの手術操作による総腸骨静脈領域の血管(特に内皮)障害および術後の臥床による血液うっ滞,などである.
参考文献
1) 小林隆夫 : 深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症(静脈血栓塞栓症).周産期の出血と血栓症(小林隆夫,水上尚典,白幡 聡編).pp276─304,金原出版,2004
2) 小林隆夫 : 産褥静脈血栓塞栓症.看護のための最新医学講座第2版.第15巻 : 産科疾患(日野原重明,井村裕夫監修).pp348─363,中山書店,2005
3) 小林隆夫 : III.肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症の予防対策.4.産婦人科領域.静脈血栓塞栓症ガイドブック(小林隆夫編).pp117─132,中外医学社,2006
4) 小林隆夫,中林正雄,石川睦男,他 : 産婦人科領域における深部静脈血栓症/肺血栓塞栓症─1991年から2000年までの調査成績.日産婦新生児血会誌 14 : 1─24,2005
5) 小林隆夫 : 産婦人科領域における静脈血栓塞栓症予防の実践.日産婦新生児血会誌16 : 14─22,2007
6) 肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン作成委員会 : 肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン.pp1─96,メディカルフロントインターナショナルリミテッド,2004
7) 小林隆夫 : 特集─専門医が実地医家に答えるQ&A.肺塞栓症におけるワルファリン療法について教えてください.血栓と循環15 : 88─90,2007
8) Schulman S, Rhedin AS, Lindmarker P, et al : A comparison of six weeks with six months of oral anticoagulant therapy after a first episode of venous thromboembolism. Duration of Anticoagulation Trial Study Group. N Engl J Med 332 : 1661─1665, 1995
9) Schulman S, Granqvist S, Holmstrom M, et al : The duration of oral anticoagulant therapy after a second episode of venous thromboembolism. The Duration of Anticoagulation Trial Study Group. N Engl J Med 336 : 393─398, 1997
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