文献詳細
文献概要
今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている II 不妊治療 【ART】
5.凍結胚移植周期の管理法は?
著者: 藤野祐司1
所属機関: 1藤野婦人科クリニック
ページ範囲:P.520 - P.523
文献購入ページに移動1 はじめに
生殖医療技術の進歩とともに受精卵の凍結技術も緩慢凍結法からガラス化凍結法へと革新的に進化し,胚の凍結保存は生殖医療には欠かすことのできない必須技術となっている.ヒトでの胚凍結技術,凍結胚移植の歴史は約25年を経過しているが,当初は移植の際に残った余剰胚の凍結保存として4~8細胞期胚の凍結から始まり,卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)予防のための前核期胚の全胚凍結保存,最近では胚盤胞期胚の選択的凍結保存と進歩し,生殖補助医療成績向上の重要な手技の1つとなっている.
近年の排卵誘発法の進歩などに伴い,多数の良好胚が得られることが多くなっている.しかしながら,移植胚数の増加は多胎妊娠の増加につながることが明らかであり,日本産科婦人科学会では移植胚数を3個以下に制限するように会告を示しているが,多胎妊娠は依然として大きな周産期医療の問題として残っている.そこで“凍結融解胚の単一移植”を有効に実施することにより,多胎妊娠率を増加させずに妊娠率を向上させることが可能であると考える.
本稿では,凍結胚移植周期の管理法の一助とすべく,着床を取りまくホルモン環境と“implantation window”という概念,ならびに凍結胚移植に必要な一般的な子宮内膜調整方法を概説するとともに,われわれの凍結胚移植の成績を紹介する.
生殖医療技術の進歩とともに受精卵の凍結技術も緩慢凍結法からガラス化凍結法へと革新的に進化し,胚の凍結保存は生殖医療には欠かすことのできない必須技術となっている.ヒトでの胚凍結技術,凍結胚移植の歴史は約25年を経過しているが,当初は移植の際に残った余剰胚の凍結保存として4~8細胞期胚の凍結から始まり,卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)予防のための前核期胚の全胚凍結保存,最近では胚盤胞期胚の選択的凍結保存と進歩し,生殖補助医療成績向上の重要な手技の1つとなっている.
近年の排卵誘発法の進歩などに伴い,多数の良好胚が得られることが多くなっている.しかしながら,移植胚数の増加は多胎妊娠の増加につながることが明らかであり,日本産科婦人科学会では移植胚数を3個以下に制限するように会告を示しているが,多胎妊娠は依然として大きな周産期医療の問題として残っている.そこで“凍結融解胚の単一移植”を有効に実施することにより,多胎妊娠率を増加させずに妊娠率を向上させることが可能であると考える.
本稿では,凍結胚移植周期の管理法の一助とすべく,着床を取りまくホルモン環境と“implantation window”という概念,ならびに凍結胚移植に必要な一般的な子宮内膜調整方法を概説するとともに,われわれの凍結胚移植の成績を紹介する.
参考文献
1) 野田洋一 : 不妊治療の現状と症例に残された課題.日産婦会誌 57 : 1463─1467,2005
2) 巽 啓司 : 胚との相互作用における着床期子宮内膜の機能変化とその分子機構の解析.日産婦会誌 55 : 1047─1057,2003
3) Nikas G : Pinopodes as makers of endometrial receptivity in clinical practice. Hum Reprod 14(suppl. 2) : 99─106, 1999
4) 東口篤司,逸見博文 : 子宮内膜操作と着床率の向上.産婦治療 93 : 292─296,2006
5) 藤野祐司,山下直樹,中村嘉宏,他 : 凍結胚盤報移植の成績.日受精着床会誌 23 : 166─168,2006
6) 宮崎聡美,佐々木葵,斉藤 滋 : 着床のメカニズム.産と婦18 : 1295─1302,2003
7) Schild RL, Knobloch C, Dorn C, et al : Endometrial receptivity in an in vitro fertilization program as assessed by blood flow, endometrial thichness, endometrial volume, and uterine artery blood flow. Fertil Steril 75 : 361─366, 2001
8) van Gestel I, IJland MM, Evers JL, et al : Complex endometrial wave─patterns in IVF. Fertil Steril 88 : 612─615, 2007
9) 丸山哲夫,吉村泰典 : 新しい着床不全病態の診断.産と婦 70 : 1303─1311,2003
10) 西浦正英,木戸 晶,富樫かおり,他 : MR画像を用いた子宮蠕動の可視化.信学技報104 : 1─6,2005
掲載誌情報