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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科62巻4号

2008年04月発行

文献概要

今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている III 婦人科癌治療 【卵巣癌】

2.卵巣癌における傍大動脈リンパ節郭清の治療効果は?

著者: 斉藤豪1

所属機関: 1札幌医科大学産婦人科学講座

ページ範囲:P.619 - P.623

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1 はじめに

 卵巣癌はほかの婦人科悪性腫瘍と比較しても高い抗癌剤感受性を有し,抗癌剤の投与法・用量や手術療法についてもいち早くコンセンサスが得られ,本邦でも最も早く治療ガイドラインが刊行されている.しかし,卵巣癌手術における後腹膜リンパ節郭清,特に傍大動脈リンパ節郭清については,進行期を決定するための診断的意義はコンセンサスが得られているものの,その治療的効果については大規模試験が困難であることから,卵巣癌治療ガイドラインにも「後腹膜リンパ節郭清術が予後改善に寄与するという臨床比較試験の報告はなく,治療的効果に関しては不明である」と記載されている.

 術後合併症は多くの因子に起因して生じるものであり,傍大動脈リンパ節郭清をすることによってどのくらいの割合で合併症が生じるかについて論ずるのは難しいが,一般には,(1)手術時間の延長とそれに伴う出血量の増加,(2)術後のイレウス,(3)リンパ嚢胞およびリンパ浮腫,(4)乳び腹水などが挙げられる.加藤ら1)の報告によると,骨盤リンパ節郭清術のみの術後リンパ浮腫の頻度12.8%に対し,骨盤+傍大動脈リンパ節郭清術後の頻度は20.6%と有意に増加し,後腹膜リンパ節郭清の範囲を拡大することにより下肢リンパ浮腫の頻度は増加するとされる.ひとたびリンパ浮腫が発生すると足の可動性の障害や疼痛ばかりでなく,小さな傷でも感染を起こし蜂窩織炎などを併発することも稀ではない.したがって,必ずしも必要がないものであれば,患者の術後QOL向上のためにリンパ節郭清を省略あるいはその範囲を縮小することも今後考慮されるべき課題である.

 本稿では,ガイドラインでも「治療的効果は不明」とされている傍大動脈リンパ節郭清の「治療効果」について論ずることはきわめて困難なことであるが,「腫瘍細胞を完全に除去できる」とする立場と「リンパ節郭清はあくまで進行期決定のため」とする立場を考慮しながら,その是非を考えてみたい.

参考文献

1) 加藤友康,手島英雄,片瀬功芳,他 : 子宮悪性腫瘍に対する骨盤・傍大動脈リンパ郭清術後の下肢リンパ浮腫の発生と予防.日産婦会誌54 : 814─818, 2002
2) 日本婦人科腫瘍学会(編) : 卵巣がん治療ガイドライン2004年版.金原出版,2004
3) Sakurai S, Simizu Y, Umezawa S, et al : Validity of complete paraaortic and pelvic lymphadenectomy in apparent stage I(pT1)epithelial ovarian carcinoma. Proc Am Soc Clin Oncol 21 : 201, 2002
4) Sakuragi N, Yamada H, Oikawa M, et al : Prognostic significance of lymph node metastasis and clear cell carcinoma limited to the pelvis(pT1M0 and pT2M0).Gynecol Oncol 79 : 251─255, 2000
5) Parazzini F, Valsecchi G, Bolis G, et al : Pelvic and paraaortic lymph nodal status in advanced ovarian cancer and survival. Gynecol Oncol 74 : 7─11, 1999
6) Panici PB, Maggioni A, Hacker N, et al : Systematic aortic and pelvic lymphadenectomy versus resection of bulky nodes only in optimally debulked advanced ovarian cancer : a randomized clinical trial. J Natl Cancer Inst 97 : 560─566, 2005
7) Dowlatshahi K, Fan M, Snider HC, et al : Lymph node micrometastases from breast carcinoma : reviewing the dilemma. Cancer 80 : 1188─1197, 1997
8) Sugiyama T, Kamura T, Kigawa J, et al : Clinical characteristics of clear cell carcinoma of the ovary : a distinct histologic type with poor prognosis and resistance to platinum─based chemotherapy. Cancer 88 : 2584─2589, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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