icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科62巻8号

2008年08月発行

文献概要

今月の臨床 エキスパートに学ぶ―漢方療法実践講座 【漢方医学の基礎知識】

4.これだけは知っておきたい産婦人科漢方処方

著者: 髙松潔1

所属機関: 1東京歯科大学市川総合病院産婦人科

ページ範囲:P.1053 - P.1059

文献購入ページに移動
はじめに

 漢方療法は天然三界,つまり動物,植物,鉱物から得られる天然薬物である生薬を組み合わせた方剤を用いるが,中国では頻用されている生薬だけで300種以上,一説には8,000種ともいわれており,日本薬局方や日本薬局方外生薬規格には約200種類が収載されている.これらの組み合わせは無限ともいえるが,臨床上,多くの処方の氾濫を避け,保険医療上利用できる方剤を明らかにする目的で,厚生省より昭和47年から49年にわたって,漢方製剤に関する基本的取扱い方針と,一般用医薬品として承認される漢方210処方に関する成分・用法・容量・効能効果など具体的な基準が公表された1).以来,これが日本の漢方の規準となっており,210処方のうち,現在,148種類の漢方製剤(147種類がエキス剤を中心とする内服薬,1種類が外用の軟膏)と煎じ薬用生薬159種類が薬価基準に収載されている.

 このなかでどの方剤を使用するのかは,難しい問題である.周知のとおり,漢方医学における診断は「証」によって表わされるが,証自体が西洋医学的には理解しがたいものであると同時に,その証に対してどの方剤を処方するのかということにも諸家の意見がある.また,よくいえばテーラーメイド,さじ加減が可能であることが漢方療法の魅力であり,多くの処方の使い分けを知っていてそれらを使い分けることこそ漢方療法の醍醐味ともいえる.しかし,これらは西洋医学を主とするもの,特に初心者には困難であることには異論がなく,多くの入門書と呼ばれるものには「まず,いくつかの基本となる方剤を使い,それから応用を考えましょう」とある.では,基本の方剤,つまり本稿のタイトルである「これだけは知っておきたい産婦人科漢方処方」とは何なのか?これもまた難しい問題であるが,本稿ではこれを産婦人科において頻用されており,外来に常備すべき代表的漢方処方とは何かと考え,それらについて概説する.

参考文献

1) 日薬連漢方専門委員会 : 一般漢方処方の手引き.厚生省薬務局監修,薬業時報社,東京,1975
2) 青山廉平 : 疾患と漢方9.産婦人科.入門漢方医学(日本東洋医学会学術教育委員会,編),pp211─213,南江堂,東京,2002
3) 漢方薬使用実態調査2007. Nikkei Medical 2007. 10別冊付録pp41─47,2007
4) 株式会社ツムラ : 医療用漢方製剤,2007
5) 村田高明 : 産婦人科で頻用される漢方処方.産婦人科治療78 : 514─520, 1999
6) 福島峰子,針生秀樹 : 産婦人科開業医と漢方.産婦人科治療78 : 521─524, 1999
7) 上野光一 : 薬物動態の性差に応じた薬物療法の最適化.平成17年厚生労働科学研究費補助金 子供家庭総合研究事業分担研究報告書.http://www.nahw.org/Local/Lib/H17_report/2_04.htm
8) 石野尚吾 : 漢方診療外来から.女性の漢方.日本評論社,東京,2001
9) 谿 忠人 : 現代医療と漢方薬.医薬ジャーナル社,東京,1991
10) 日本医師会編 : 漢方治療のABC.五島雄一郎,高久史麿,松田邦夫編,医学書院,東京,1992
11) 石野尚吾 : 産婦人科開業と漢方.産婦人科治療75 : 511─514, 1997
12) 日本東洋医学会学術教育委員会編 : 入門漢方医学.南江堂,東京,2002
13) 花輪壽彦 : 産婦人科疾患と漢方.漢方診療のレッスン増補版.pp223─235,金原出版,東京,2003
14) 後山尚久 : 漢方医学による産婦人科疾患の捉え方.TSUMURA Medical Today産婦人科領域と漢方医学.http://medical.radionikkei.jp/tsumura/final/040811/index.html
15) 木下優子,矢久保修嗣(監修) : 性差と医療別冊女性のための漢方処方ガイド.じほう,東京,2005
16) 八重樫稔 : 女性診療における漢方のABC.産婦人科治療92(suppl) : 541─545,2006
17) 松田邦夫,稲木一元 : 産婦人科領域疾患総論.漢方治療のファーストステップ.pp110─111,南山堂,東京,1998
18) 木下優子 : 流れのある漢方治療.産婦人科漢方研究のあゆみ24 : 1─4,2007
19) 髙松 潔 : 更年期障害に対する漢方療法への期待─漢方療法とEBM.産婦人科漢方研究のあゆみ25 : 6─14,2008
20) 日本東洋医学会EBM委員会 : 漢方治療におけるエビデンスレポート.日本東洋医学会雑誌56(EBM別冊号),2005
21) 日本東洋医学会EBM特別委員会エビデンス・レポート・タスク・フォース : 漢方治療エビデンスレポート第2版─RCTを主にして─.中間報告2007. http://www.jsom.or.jp/html/ebm_er/allreport.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?