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今月の臨床 妊産婦の薬物療法―あなたの処方は間違っていませんか
妊産褥婦の禁忌薬
著者: 荒田尚子1 久保隆彦1
所属機関: 1国立成育医療センター周産期診療部母性内科
ページ範囲:P.1220 - P.1227
文献購入ページに移動妊娠中や授乳中の薬物療法における安全性については厳密な臨床研究を行うことは倫理上不可能であることから,使用経験に基づく疫学研究に頼るしかない.したがって,発売後間もない薬剤や使用頻度の低い薬剤については情報に乏しいために妊産婦および授乳中は禁忌薬となることも多い.妊娠中や授乳中の薬物量は慎重になるべきであるが,薬物服用を恐れて母体の全身状態が悪化するようであれば,かえって児への悪影響が懸念される.したがって,薬物の危険性と有益性を検討したうえで,本当に必要な薬剤を必要最小限使用することが大切となる.
一方,妊娠と知らずに薬物を服用してしまった場合,先天奇形が生じる可能性が高いという誤解から,不必要な中絶手術が行われるという事実もある.先天奇形の発生率は全分娩のうち約3%前後であるが,奇形全体のうち薬物が原因とされる奇形は1%以下とわずかであり,妊娠中禁忌薬の多くは催奇形性が明確ではないことから,「禁忌薬」を処方して妊娠が判明した場合でも,安易に人工中絶を勧めてはならない.
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