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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科63巻10号

2009年10月発行

文献概要

今月の臨床 妊娠高血圧症候群と関連疾患 【関連疾患の病態と管理】

9.妊娠高血圧症候群と胎児機能不全

著者: 鈴木一有1 伊東宏晃1 金山尚裕1

所属機関: 1浜松医科大学産科婦人科

ページ範囲:P.1319 - P.1323

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はじめに

 妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降に高血圧や蛋白尿を認める病態であり,重症例では母児に重篤な影響を及ぼす.多くの研究者が多岐にわたる解析を行ってきたがいまだその本態は明らかでなく診断基準によって判断される「症候群」として取り扱われている.わが国における診断基準そのものも,2005年4月から診断項目として浮腫が削除され,名称も妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群へと変更された.妊娠高血圧症候群は,高血圧に蛋白尿を伴わない妊娠高血圧と蛋白尿を伴う妊娠高血圧腎症とに主に分類され,妊娠高血圧腎症は妊娠高血圧に比べ母児予後は不良であるとされている.

 母体側から考えると,妊娠高血圧症候群は分娩後出血ならびに産科的塞栓症などとともに妊産婦死亡の主要な原因の1つとなっている.また,胎児側から考えても妊娠高血圧症候群は,子宮内胎児発育不全などと密接なかかわりがありその管理は重要である.

 胎児機能不全とはnon─reassuring fetal statusの邦訳であり,「妊娠中あるいは分娩中に胎児の状態を評価する臨床検査において“正常ではない所見”が存在し,胎児の健康に問題がある,あるいは将来問題が生じるかもしれないと判断された場合をいう」と定義されている1).以前から胎児仮死,胎児ジストレスという言葉が存在したが,現代の医学では胎児そのものの酸素飽和度,血圧,体温,尿量など種々のバイタルサインを直接正確にモニタリングすることは不可能であり,胎児の状態を正確に診断することは困難であった.このため胎児心拍数モニタリングなどあくまで子宮外からの間接的な胎児well─beingの評価結果に基づく幅広い概念として胎児機能不全が提唱され承認・決定された.

 今回は,妊娠高血圧症候群と胎児機能不全について概説したい.

参考文献

1) 岡井 崇:胎児機能不全の取り扱い指針.日本周産期・新生児医学会雑誌44:791─794,2008
2) 伊東宏晃:胎児機能不全の原因胎盤因子.臨産婦62:1531─1535,2008
3) 周産期委員会:胎児機能不全の診断基準の作成と検証に関する小委員会報告(委員長 岡井 崇).日産婦誌60:1220─1221,2008
4) 松岡 隆,長谷川潤一,市塚清健,他:胎児機能不全診断と取り扱いの指針.臨産婦62:1565─1569,2008
5) Pillai M, James D:The development of fetal heart rate patterns during normal pregnancy. Obstet Gynecol 76:812, 1990
6) 日本妊娠高血圧学会編集:妊娠高血圧症候群(PIH)管理ガイドライン2009.pp56─58,メジカルビュー社,2009
7) 鮫島 浩:胎児機能不全の病態.臨産婦62:1518─1521,2008
8) 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編集・監修診療ガイドライン産科編2008“CQ309:子宮内胎児発育遅延(IUGR)のスクリーニングは?”pp85─87,2008
9) Manning FA, Morrison I, Harman CR, et al:Fetal assessment based on fetal biophysical profile scoring:Experience in 19,221 referred high─risk pregnancies. II. An analysis of false─negative fetal deaths. Am J Obstet Gynecol 157:880─884, 1987
10) Miller DA, Rabello YA, Paul RH, et al:The modified biophysical profile:Antepartum testing in the 1990s. Am J Obstet Gynecol 174:812─817 1996
11) Zelop CM, Richardson DK, Heffner LJ:Outcomes of severely abnormal umbilical artery Doppler velocimetry in structurally normal singleton fetuses. Obstet Gynecol 87:434─438, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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