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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科63巻11号

2009年11月発行

文献概要

症例

妊娠中に血球貪食症候群を発症したが早期診断と加療により寛解し妊娠の継続が可能であった1例

著者: 井出哲弥1 鈴木裕介1 林美佳1 三宅法子1 井庭裕美子1 井庭貴浩1 伊藤雅之1 津戸寿幸1 岩木有里1 北田文則1

所属機関: 1大阪府済生会吹田病院産婦人科

ページ範囲:P.1463 - P.1467

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 血球貧食症候群(hemophagocytic syndrome : HPS)は,高熱持続,汎血球減少,肝機能障害などの症状を呈する症候群である.今回,妊娠29週にHPSを発症した症例を経験したので報告する.

 症例は20歳代,未経妊の女性.高熱が持続するため妊娠29週1日に入院となった.汎血球減少と肝機能異常を認め,骨髄穿刺にて血球貧食像がみられたためHPSと診断した.ステロイドパルス療法とγ─グロブリン併用療法を開始したところ,臨床症状は徐々に改善した.以後,ステロイド剤漸減するも再発なく,妊娠34週4日退院した.妊娠36週3日,正常経腟分娩にて2,536gの男児をApgar score 8/9で娩出した.母児ともに経過良好である.

 妊娠中にHPSを発症することは稀である.しかしながら,HPSを念頭におくことにより迅速な診断と治療が可能となり,不要な妊娠の中断を避けることができるのではないかと考える.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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